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人は、こんなに変わりたいのに、なぜ変われないのか?

コーチという仕事をしていると、ああ、コーチの仕事ってつまるところ
「コミュニケーションの促進」なんだな〜
と思う事があります。

チームで何かをやり遂げたいと思ったら、
コミュニケーションゼロのチームより、
円滑にコミュニケーションをしているチームの方が、
結果を出すのが早いってことは経験上分かりますよね。

なのに、なぜかそれがうまくいかないので、私のようなコーチにお声がかかるわけです。


「人と人とのコミュニケーション」よりこっちの方が大事でしょ!と思うのが、
「自分とのコミュニケーション」。

何それ? そんなん必要なの?
と思う方も少なくないと思うので、こんな問いを投げてみたいと思います。

それは「Who am I ?」という問い。ぜひ考えてみてください!

なんで急に英語になるの?と不審に思われるかもしれないので一応説明すると、日本語で書くと「私は誰?」ってなって、なんか認知症のテストみたいになってしまうからなんです。笑


ひとまず「Who am I ?」の答えを「Self-awareness」と呼んでおきます。
一つの正解を指す言葉ではなく、自分はどんな人間なのかという永続的な問いに、自己認識や自己理解を深め続けるという止むことのない営為を指します。

ほらね、日本語にすると、なんかめんどくさい感じになっちゃうでしょ。笑
間を取ってカタカナ表記にしよう。笑 セルフアウェアネス! 


自分は何に喜びを感じるのか?という自分の本当の願いが分かってないと、内発的動機付けが生まれにくいということなんです。
健康こそが一番の価値、そういう自分の価値観に気付いていれば
「健康のためなら死んでもいい!」と強いモチベーションが生まれるんです。笑

「内発的」の対置概念になっているのが「外発的」です。
外発的動機付けだけではパフォーマンス向上には限界があるということなんです。でも内発的動機の方が偉い、なんていうつもりはありません。両方揃うことが大事ですから。
例えていうと、会社が給料を上げることで社員のやる気を引き出そうとするようなことかな。高賃金に惹かれて一生懸命働いてくれるだろうと。人参系動機付け!笑

一方の内発的動機付けは、
「自分が作った商品で、使った人の生活が豊かになって、笑顔が増えたら嬉しいなぁ」みたいな気持ちのことです。
「人々の暮らしに笑顔を増やす」みたいなパーパスを掲げる企業増えてきましたよね。
会社が存在する目的パーパスと自分の内発的動機付けを一致させていく
働くことが社会貢献につながり満足が得られる。
その上、高いお給料(外発的動機付け)がいただける。
これが社員が自分から動く会社の特徴でしょうか。


問題は、ここからなんです。
コーチである私は、個人のセルフアウェアネスを高めて、会社のパーパスと内発的動機付けを一致させていくためのコミュニケーション改善活動を提案したりするんですが、実行されないケースが時々ある。

研修は受けたけど、受けて終わりだった、というケースです。
「いい話聞けた」けどコミュニケーションは良くならず、結果売り上げ増に結びつかない。

実際、こんなことがありあました。
人の話を聴くことの重要性を、ワークを通じて感じ取っていただく。すると、
「わかった、わかった。上司として自分の判断を伝え指示をしていたけど、その前に、部下の話に耳を傾けることが大事なんだね」
と理解していただけた。
ところが、その後にこんなセリフが口をついて出てくるんです。
「でも、部下全員の話を聴いてると残業時間が増えそうだね」
暗に、働き方改革に逆行するから出来ない!って言ってるんです。

もう、お分かりかと思いますが、時間外労働の削減という会社の推し進める働き方改革は、後付けの理由です。
この方、本当は部下の話なんか聴きたくないんです。
「出来の悪い部下の分までカバーして働くできる上司!」
みたいな自己イメージが壊されるのを拒んでいるのです。


実は、コーチという人種は、こんな現象が大好物なんです。笑

出番がやってきた!と思うんです。
私が研修講師なら、役に立つ話を伝えることができて、納得してもらえたら、100点満点ですよね。ここでお仕事完了です。
でもコーチの出番は、ここからなんです。
「頭では分かるんだけど、抵抗あるんだよね」つまり、
表題の「変わりたいのに変われない」現象こそ、コーチの大好物なんです。

「コミュニケーションの促進」っていう誰も反対できなさそうな至極ごもっともなお題目が示されてるのに、
「残業が増えちゃうから無理」っていう反論が返って来た時、コーチは
「何言ってるんだ、この抵抗勢力め!」とは思わないんです。
「9回裏ツーアウト満塁で、打順が回ってきた!」と思うんです。笑

この痺れるような状況で、喜び勇んで打席に入ったコーチは何をするか?
順を追ってご説明しましょう!


(1)相手の肯定的意図は何か?と考える

おそらく「残業が増える!」は後付けの理由なので、
この人が「無理!」と言いたい理由、やらないことでしか守れないこの人が今受け取っている利益があるはずだと考えるんです。

そのためにまず、
「時間外労働が増えると困りますね」と相手の側に立って
「コミュニケーションの促進」を試みるんです。
そうすると、金科玉条のケチのつけようのないお題目に見えていた
「コミュニケーションの促進」が、
「出来の悪い部下に、快刀乱麻を断つように次々と指示を飛ばす有能な自分こそ理想の上司」
という彼の自己イメージを壊してしまうということが見えて来ます。
「自分が今得ている満足感を奪われるのは嫌だ」
これが、人や組織が変わりたいのに変われない理由です。


(2)相手をジャッジするのではなく、相手が感じてる事を感じてみる


ここでコーチが、
「管理職というあなたの立場を考えれば、今こそ上司像を書き換え、部下とフラットな関係を作るべきタイミングなのではないでしょうか?」
などと正論を述べると、彼はその瞬間から抵抗勢力となってコーチと戦う道を選びます。
これ、コーチが選ばせていると言った方が正確かもしれません。
なので、相手の受け取っている利益を否定するのではなく、一旦肯定して、本人と新たな利益探索の旅に出るのです。

(3)相手が得られたら嬉しい別の利益は何かを探る


相手が何を嬉しいと感じるかは、コーチが決める事ではありません。
やってしまいがちなのが、コーチの方から代替案を示してしまうことです。
特に、親子関係だとそうなりがちじゃありませんか?
「今、ゲームをするんじゃなくて、宿題終わってからやったら? ね、ね、その方がいいでしょ!」みたいに。笑
代わりのものでも納得できるのは、それが自分の発案だからなんです。
それを、人から指示されてしまっては「やらされ感」や「言いくるめられた感」を拭い去ることができないんです。子供がしぶしぶ宿題をするように。

で、本人に質問していくことになります。
よく、コーチングって質問するだけでアドバイスもなければソリューション提供もない!って言われるんですが、コーチがアドバイスをしない理由はここにあります。代案は自己発見でないと行動に結び付きにくいので、アドバイスは極力避けているんです。
ここで解決策なんて示そうもんなら、かえって相手を正しい解決策から遠ざけることになってしまうんです。

(4)セルフアウェアネスの出番


本人は、今得ている利益に満足してるんです。
部下にバンバン指示命令を下して難局をスイスイ乗り切る自分がカッコよくて仕方ないんです。
自己効力感が上がり、それが仕事のやりがいにもつながっている。
今得ているものよりさらに大きな喜びを得るにはどうしたらいいかを一緒に考えていくんですが、ここで問題になるのは、相手には考えなければならない理由がないということなんです。
現状に満足してるわけですから。

そこで、新たな自分に気づいてもらうために、
「あなたは今、管理職として何をすべきでしょうか?」
といった問いではなく
「Who am I」という問いを投げること。

「今のままではダメだ」と伝えるのではなく
「今のあなたは素晴らしいですね。この先もずっとこのままで行きますか?」
と聴くのです。
縦横無尽に部下を使い倒して成果を上げて来た。
しかし、それはあらゆる観点から見て最良なのか?ということを考えるきっかけになる問いを投げかけるのです。

例えば
「あなたは満足かもしれませんが、部下は満足していますか?」

「他の部では部員の中からエースが生まれ、2番手といいライバル関係を作ってる。競争してるのに部内のコミュニケーションもいい。何が違うんでしょう?」

「部下は自発的に動けていますか? 後継者育成という観点からみると現状をどう評価しますか?」

「あなたが社長だとしたら、今のご自分に何を期待しますか?」
みたいな。

すると、問いを投げかけているだけなのに、問われた方には気付きが生まれてくるんです。

「そうか、俺は毎日やりがい感じて仕事をして来たけれど、部員のやりがいや部員の成長といった視点は持てていなかったな」

「自分は管理職なのに、自分を最も優秀なプレーヤーと定義していたのではないか。マネージャーとしてはどうだったんだろう?」
というように。

この自己探究が新たな自己発見につながっていくのです。

(5)さらに大きな利益を得るために

今の自分はプレーヤーとしては最高だと思う。しかし、管理職としてさらに成長していくためには、人を成長させて、自立的な社員、主体的な社員を増やしていくマネジメントが必要だ。
それができるようになったら、部長ではなく取締役と言った経営層への道が見えてくるのかもしれない。

新しい自分を発見すること(セルフアウェアネス)で、いや発見することでしか、人は変われないのかもしれません。
他人は変えられない。人は自分から変わるしかない。
そう、さらに大きな利益のためなら、人は喜んで変わろうとするものです。
新たな自分に気づくことで、次元上昇が起きるのです。


時代は常に変化しています。
だとしたら、変化しない組織は時代遅れになるしかありません。

時代と共に変化するには、組織が変わらなくてはなりません。
組織が変わるためには、人が変わらなくてはなりません。
しかし他人に人は変えられない。
人が自ら変わるには、セルフアウェアネスを更新し続けていくしかないのです。
あなたの組織が、時代の変化に合わせて変化していくには、コーチが必要なのです。


追記

日曜日午後9時15分 東京ドーム
3−5のスコアで9回裏ツーアウト満塁を迎えたチームビルディングスは、バッターボックスに代打・長谷川選手を送った。

「二塁打で追いつけることは分かってましたから、最悪でも左中間にころがそうと思ってました。ホームラン? 狙ってませんよ。僕が二塁にいれば次のバッターが返してくれるだろうと信じてました。センターにフライが上がった時は一瞬焦りましたね。取られたらゲームセットだったので。スタンドに入ったのはファンの後押しのお陰だと思ってます。ありがとうございます。9回裏ツーアウト満塁。ファンの応援があれば、必ず打てると思ってます」