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低学年からできる!主体的な学び手が育つ算数授業

●はじめに

 低学年担任は基礎・基本を確実に身に付けさせたいという思いから、授業規律や学習態度に厳しくなってしまう。「子どもを信じて任せよう」と意気込んでも、気付けば細かい指摘ばかりを繰り返すようになる。かくいう私も、年度当初から離席する子が多く、一斉指導重視で指摘ばかりしながら授業を進めていしまっていた。次第に授業に対して後ろ向きな子が増えていった。しかし、低学年こそ主体的な学び手になれる。そう信じて疑わなかった私は、子どもの事実と真っ正面から向き合い、主体的な学び手が育つ授業を模索していった。

●問題の所在

 授業に後ろ向きになってしまった問題点を整理すると、以下の三つに集約された。一つ目は、教師の話が長く、逐一指示を聞かないと活動できない「退屈さ」。二つ目は、同じことを同じようにやらなければいけない「自由度の低さ」。三つ目は、規律を守ることでしか認めてもられえない「承認欲求の満たされなさ」。これら三つの問題点を早急に解決することが私の至上命題だった。

●主体的な学び手が育つ算数授業

 まず一つ目の問題点「退屈さ」の解決にあたった。話を聞いている時間は極めて受け身である。活動の度に手を止めて指示を聞くことは、子どもの退屈感を生んでいた。そこで、教師の話す時間をできる限り削減しようと考えた。ただし、低学年の子に対して、説明不足の状況がよくないことは明らかだ。その状況には陥らないよう、算数授業の学習過程をルーティン化した。そうすることで、教師の説明を省き、指示がなくても子ども自ら動き出せるようにした。子どもの事実を基に試行錯誤して、以下の学習過程ルーティンを見出した。

1 既習内容を確認する
2 問題を書き写す(自分のめあてをもつ)
3 自分で考える⇄立ち歩いてペア交流する
4 全体で共有する
5 適用問題を解く(振り返る)

学習過程ルーティン

 既習内容の確認は、大型TVを活用して前時のノートを紹介した。子どもの考えを取り上げることで、教えずして大事なポイントを共有できた。さらに、友達の考えは夢中になって聞き、その日の学習で使ってみようという意欲を生んでいた。次の授業では真似した子のノートを紹介すると、真似をした子もされた子もいい気持ちになり、学びの好循環が生まれた。

 二つ目の問題点「自由度の低さ」の解決に向けて、どのように考えるか(考え方)を選択できるようにした。これは、自分のめあてをもつことと言える。1学期間、全員でやり方を揃えて学習を進めることに不適応を起こす子が多かった。自分のやり方で考えたいという思いを訴える子が何人もいた。そこで、考え方は既習内容を基本にして、ブロック・絵・図、式、言葉から選ぶよう指導した。考え方を自ら選択できるようにするだけで、面白いほど子供たちは前向きに取り組むようになった。

 一つ以上考えが書けた子や分からず立ち止まってしまった子は、自由に立ち歩いてペア交流する仕組みにした。これにより、離席してしまう子たちが合法的に立ち歩けるようになった。そうすると少しずつ学習に関係のある立ち歩きへと変わっていった。交流を通して、考えを修正したり付け加えたりする子も現れた。自力解決と他者との交流がシームレスになったことで、学習形態も自分で選択できる状況をつくり出すことができた

 考え方に自由度があるため、ペア交流や全体共有は、互いの関心事になる。同じことを同じようにやっていれば生まれない表現の多様さが生まれるようになる。多様さが生まれると、共通点には心からの共感、相違点には納得の声があがる。やがて、対話は共感や納得を生み、学びを広げ深める大事な学びだと子どもたちが認識するようになっていった(学年末の質問紙調査では、全員が対話活動に肯定的な回答をした)。こうして、学習方法と学習形態を選択できるようにしたことで、同じことを同じようにやらなければいけない「自由度の低さ」を解決していった

 三つ目の問題点「承認欲求の満たされなさ」の解決に向けて、評価の仕方を見える化した。一つの考え方で答えを導き出せたらレベル1、二つ以上の考え方で答えを導き出せたらレベル2、さらに自分なりの工夫を加えてくる子がいるので、そういった場合はレベル3としてクラスで紹介した。このように、ルーブリック形式で評価の仕方を可視化し、多様な考え方や自ら学習を進める力を価値付けることで、「承認欲求の満たされなさ」を解消していった

 子ども同士の交流でも互いの考えを認め合う姿が見られるようになった。ここで大事なのは、個別のフィードバックを徹底的にやることだ。評価の良し悪しに関わらず、フィードバックは学びに推進力を生み出す。子どもたちは、良い評価よりも確かなフィードバックを望んでいる。確かなフィードバックだからこそ、良い評価が返ってきたときに心から成長を喜べる。

●まとめ・今後の展望

 以上のように、子どもの事実と向き合い、主体的な学び手が育つ授業へと改革していった。授業の中に潜む「退屈さ」「自由度の低さ」「承認欲求の満たされなさ」を解決していくことは、どの学級においても必要なことだと考えられる。しかし、この学習過程はあくまで私の学級の子どもたちに合ったものとして、年間を通して少しずつ確立していったものである。みなさんが目の前の子どもたちと授業を創り上げる際の参考になれば幸いである。

●実際の授業の板書

2年生「たし算とひき算」
1年生「大きいかず」


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