人生の主役は自分なんて嘘だ。
人生の主役は自分だってよくいうけど、そんなの嘘だ。わたしはわたしにしかなれないんだ。何にもなろうとしなくたっていい、わたしはわたしでいいじゃないか。
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私は今日、偶然さとねことさんの『モブ』という作品に出会った。目的なく本屋をフラフラ彷徨っていたら、真っ黒い表紙が目に入ってきた。サンプルを読んで、即購入することを決めた。
この漫画の主人公はモブだ。世界には、数人の主役と数百人のモブがいて、主役がみていない部分はぼんやりとしている。だから、主役がみていないときの主人公はぼやけている。
モブ(英:mob)とは、「群衆」「群れ」「暴徒」「十把一絡げ」などを意味する英単語である。 また、アニメや漫画では人が沢山いるシーンを「モブシーン」と呼び、群衆状態になったキャラを「モブキャラクター」と呼ぶ。(ピクシブ百科事典から引用)
漫画において、主役がみていない部分ははっきりと描かれない。しっかりと描かれる部分は、主役が見ている場所だけだ。物語の主人公もモブ側の人間で、主役に見られている時だけ姿がはっきりして、主役に見られていないとすぐシルエットがぼやけてしまう。この物語は、主役の視点でストーリーが進んでいく。
主人公は、主役ではないのに、主役の視点から物事を語っていて、主役の視点から物事を見ている。自分視点を持っていないのだ。
主人公が、今までの私と重なった。私は、人に見られなければ意味がないと思っていた。でも、誰も私のことを見てくれなくて、ずっと、ただのモブだった。勝手に主役の視点を内在化して、ぼやけた私を嫌悪していた。でも、主役に見られたからって何者になれるわけでもないし、人の目を通してしか見えない自分なんて、あまりにも脆すぎる。それに気づいていなかった。
主人公は最後、ぼんやりしていない。主役の視点ではなく、自分の視点を持ったのだと思う。私は最後のセリフが好きだ。
「わたしはなににもなれない でも でもきっと わたしはわたしになれる」
人生の主役は自分なんてよく言うけれど、それは違うんじゃないかなと思った。主役なんかじゃなくても、わたしはわたしでいい。何にもなれない自分を認めることが大事なんだ。他人がどう思おうと、わたしはわたしであり、わたし以外の何者でもない。それでいいじゃないか。
他人の目を通してしか自分をみることができなくて、誰にも見てもらえず傷ついていた頃に、この漫画に出会えていればと思った。この漫画が描かれた2016年は、まさにただのモブだったから。
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調べてみると、さとねことさんはnoteでも活動されていて、『モブ』が動画にされていた。曲と相まって、とても感動した。
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