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『心の休ませ方 「つらい時」をやり過ごす心理学』|心の憎しみと向き合う

常に堪えていないと涙が出てきてしまうほど落ち込んでいたとき、縋る思いで読んだ本が、加藤諦三『心の休ませ方 「つらい時」をやり過ごす心理学』だった。

加藤諦三先生の方を以前にも読んだことがあるのだが、その厳しくも優しい言葉の連なりに随分と助けられた。だから自然と、今読むなら加藤諦三先生の本がいいなと思ったのだ。

実際この本を読んで気持ちを落ち着かせることもできたし、とても多くの気づきを与えられた。うつ病の人向けに書かれたもののため、あまり自分には響かないなと思う部分も少なくなかったけれど、それでも読んで良かったと思える。

逆に自分がメインターゲットじゃなかったからこそ、「ここまで落ち込んではいないな」と冷静に考えることができて、それが今の私にはちょうどよかったのかも知れない。


さて、ここからは内容について触れていこうと思う。

まず最初に心に響いたのは、「生まれつき身体が弱い子がいるように、生まれつき心が弱い子もいる」というものだ。

言われてみれば、身体の強さが人によって違うように、心の強さだって人によって違うはず。でも、身体と違って心は目には見えないから、自分の心が強いのか弱いのか、人と比較することがとても難しい。

だからこそ、自分の心の強さを見誤って、「みんなは我慢できているのだから、自分が我慢できないのは甘えているからに違いない」と、本来の心の強さ以上に無理をしてしまって、心のバランスを崩してしまうのだろう。

心の強さは目に見えないし、人と比べにくいものだけれど、生まれ持った心の強さは人それぞれ違うということだけは、胸に留めておきたいと思った。


また、生まれ持った心の強さに加えて、後天的に身に付く愛情飢餓感も、生きることに疲れてしまう大きな原因の一つとなるのだそうだ。

「もっと自分を認めてほしい、褒めてほしい」という思いが強いにもかかわらず、みんな自分を褒めてくれない。さらに、その憎しみの感情をストレートに吐き出すことができなくて、どんどん憎しみの感情が積もっていく。

このように情緒的に未成熟な人は、人を憎むことはできても、人を愛することはできないのだという。確かに、私は人に愛を求めるばかりで、愛を与えることをしたことがないかもしれないと気づいた。

そして、心に憎しみがある人は人を愛せないだけでなく、他人に心を開くことができないために、本当の友達ができないのだそうだ。私は今まで、友人どころか家族にさえ、本当の気持ちを打ち明けられずにきた。だからもちろん「本当の友達」と呼べる人なんて一人も思い浮かばなかった。

少し前にどうしようもなく落ち込んでしまっていた時も、誰かに頼りたい気持ちはあったけれど、そんな時に頼れる人が一人もいないという状況に陥ってしまっていた。今まで頑張って人間関係を築こうとしてきたけれど、自分の心にある憎しみと向き合ってこなかったから、誰とも深い関係性を築けなかったのだ。

さらに、心に憎しみを持っている人は、憎んでいる相手から愛を求めてしまうのだそうだ。すごく歪な構図だと思う。でも、自分に置き換えて考えてみた時、周囲の人を少なからず憎んでいるということに気づいた。憎いと感じているのに、その人たちからの愛がほしいと思ってしまう自分がいる。

こんなことをしていては、人と対等な関係性を築くことなんてできない。対等な関係性を築けないということは、もちろん、本当の友達なんてできっこないのだ。


こんな現状を打破していくためには、「自分の感情を表現する」ということが鍵になるようだ。今は人に自分の感じ方や考え方などを話せていない状況だから、今まで人に話せなかった自分の感情を表現して、人に好かれる努力をする必要がある。

もし人に話すことが難しければ、誰にも見せない日記でもいいから、心のそこにたまった恨み辛みの感情をすべて吐き出すと良いとのことだ。憎らしかったことを”憎らしい”と書く。殺したいと思ったら”殺したい”と書く。倫理的によくないことだとしても、心の中のことをありのままに書いてみる。

この本を読んでから毎日日記を書き始めてみたのだけど、自分がどう思っているのか表現してみるというのは、心がスッキリとするものだと知った。逆に言えば、今まではそれだけ自分の本心に向き合っていなかったということになるかもしれない。


ここまで紹介してきた内容だけをみると、すごく厳しいことばかり書かれているようだけど、前を向かせてくれる温かい言葉もたくさん書かれている。

例えば、どうしようもなく辛い時期を乗り越えれば、前に比べて考え深く、思いやりのある人になれるとか、こういう時に寄り添ってくれる人・くれない人がわかるから、本当に大切にすべき人間関係が見えてくるとか、今をどんな風にポジティブに捉えたら良いかも気づかせてくれた。

実際、本当に辛い時期を乗り越えたことで、自分のことしか考えていなかった少し前の自分と比べると、少しは人の気持ちにも目を向けられるようになったように思う。

それに、誰も頼れる人なんていないと思っていたけど、幼なじみが親身に話を聞いてくれて、「こんなに親身になってくれる人がいたのか」と気づく良いきっかけともなった。

人間として一皮向けたという感覚がある。


今がどうしようもなく辛い人や、この記事を読んで少しでも刺さるものがあった人は、是非読んでみてほしい1冊だ。

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