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2018年7月の記事一覧

水無田気流(2015)『「居場所」のない男、「時間」がない女』日本経済新聞出版社



ジェンダー関連の一般的な社会学の本である。女性の労働社会進出は、男性の家庭・地域社会進出と同時に進めなければならない。そうでない政策はただただ超人的な女性しか評価されない社会を生む。

題名が衝撃的だろう。でも、どこかふとした共感を覚える意味内容でもある。居場所と時間、二つの異なる貧困の形を私たちは否応なく突き付けられている。将来社会への不安を、現実のものにしてはいけない。

藤沢数希(2015)『ぼくは愛を証明しようと思う。』幻冬舎



「愛をしようぜ」、なんていうキャッチコピーが少し前に地下鉄の中にあったのを覚えている。愛とは、一人の人間がその全てをもって立ち向かう、人のする活動の内でも非常に高度な活動だと思う。

ペルソナを使い分けるこの社会において、仮面をはずし、その身のすべてをもって勝負してみたいと思わせるような、そんな幻想を抱かせることが出来るのが、「愛」の恐ろしさであり、同時に、存在理由なのではないか。