BCPを作成したケアマネジャー50名に聞きました
BCPの策定が落ち着いて、ホッと一息ついている管理者さんもいるのではないでしょうか。資料やガイドラインを参考にして、「とりあえずカタチは整ったから一安心です」「正直これで大丈夫なのか不安は残ってます」と、筆者の周りにいる管理者さんも同様です。
いよいよBCPに基づいた災害対策が本格始動した今、策定後の感想や課題について、ケアマネジャーさん50名にアンケートをとってみました。
Q1.「策定後の率直な感想をおきかせください」
自分が被災しても、こんな風に動けるのだろうか
地震や水害など地域で起こりうる災害を想定して業務継続の手立てを考えられた管理者さんから、こういった感想がありました。その方のBCPには、「スタッフ全員で安否確認を順番におこなう」「なるべく早く訪問して、アセスメントする」と記載されたそうです。
ところが、この対応をおこなうには、ライフラインが確保や職員が揃っていることが前提になっています。災害は想定外のことが起こります。管理者であるあなたが被災して、出勤できないことも想定しておくことが重要です。
あらためて平時の備えが重要だと思った
策定期限直前までBCPの項目が記載できず、災害時の備えが全然できていないと感じたケアマネジャーさんの感想です。とはいえ非常時の備蓄や耐震対策について、具体的な手段をとっていないことが分かり、まずは大きな書棚の固定、窓ガラスの飛散防止に取り掛かられたそうです。
他の施設のBCPを見てみたい
この感想をくださったケアマネジャーさんは、作成の段階から何度も行き詰まり「他の事業所はどう書いているのだろう」「この項目には何を書いたらいいのだろう」と悩むことが多々あったそうです。
すべて記載できたわけではないそうですが、同じ地域の事業所や同じ業種のBCPを参考にして、もっと具体的にしていきたいと感想を述べられていました。
Q2.「BCPをつくって感じた課題は?」
正直、行動も判断もスピード感が重要だと思う
「次から次へと緊急事態が起きたり、自分しかいなかったりする場面で、迷っている場合じゃないと思いました。」3人のケアマネジャーが所属する事業所の管理者さんの感想です。「とりあえずケアマネ業務を中断しないために、他のスタッフに的確な指示が出せるのか、優先業務を限定して素早くみんなを守れるか、一度シミュレーションをしないとわからない。あ、そのために訓練が必要なんですね。」
おっしゃる通りです。また災害時はBCPを探している時間もありません。研修や訓練を繰り返すことで、頭に叩き込むことが冷静な行動をとるために重要です。
「どの利用者の安否確認、避難を優先すべきか」順位が決められない
「認知症で一人暮らしの方や難病の利用者さんなど担当している方は誰一人同じではありません。また、停電になったときと河川が増水したときとでは、避難する優先順位も違ってきます。」
在籍20年のベテランケアマネジャーさんの感想ですが、災害時の優先業務や利用者の安否確認について、まだまだ不安があるそうです。
たしかに一人暮らしの認知症の人、難聴で耳が遠い人、家族と同居していても日中は一人ベッドで過ごす人、どんな人でも災害が起こるとなんらかの支援が必要になります。大切なことは、「BCP策定時に検討して終わり」ではなく、定期的に、そしてスタッフで事業所として、どう行動するのか、を検討し続けることです。
自分の施設BCPが稼働するかは、他の事業所のBCP次第だとおもった
「災害時に地域の機関やほかの事業所と連携しながら業務を継続するつもりでいるが、ほかの事業所が稼働していなかったら、自分の施設BCPは役に立たないと思った」ケアマネジャーは介護保険制度の中で、担当する利用者に色々なサービスや資源をマネジメントすることが役目です。もし災害が起こったとき、当たり前にあったサービスやつながりが突然途絶えてしまうかもしれない、ということも考えておかなければなりません。
そのためには、平時から災害訓練を関係機関合同でおこなったり、地域ケア会議でお互いのBCPをみせあったりすることが重要です。
自助と共助の備えが不足していることに気付いた
「担当している高齢者の中には、災害が起きても自分は自宅で死ぬ、という人がいます。また、住民の関係が希薄で協力し合う意識が低く、こちらがどれだけ準備をしても限界があると思った。」
地域での共助や自分で身を守る自助は、当事者が意識しないといくら周囲が働きかけても動かないのが現状です。すぐに事態が好転することは難しいかもしれませんが、防災月間や大きな災害が起こった日など節目の時に災害について一緒に考える機会を持つことも一つの方法です。また、内閣府では災害時に自ら避難することが困難な高齢者や障害者の避難行動支援を事前に取り決めておく「個別避難計画」を市町村単位で推進しています。地域によって進行に差はありますが、担当地域でどのように進められているか、確認しておくとよいでしょう。
<参考:避難行動要支援者の避難行動支援に関すること|内閣府防災情報>
一人ケアマネなので、どこまでできるのか
「私は一人ケアマネをしています。他に従業員もいないので担当している35人に対してどこまで対応できるのか、自分が被災したら業務が継続できるのか不安です。」
全国にはひとりで居宅介護支援事業所を運営しているいわゆる「一人ケアマネ」はたくさんいます。昼夜関係なく、また休みの日にも急な対応に追われることもある一人ケアマネにとって、災害時にできる対応は限られているといってもいいでしょう。
介護保険Q&Aをみても、一人ケアマネであっても一般事業所と同じ項目でBCPを作る必要があり、訓練も義務付けられていますので、同じひとりケアマネが周りにいれば、情報交換や可能であれば業務協定を交わしておくことをおすすめします。
「先日能登半島に災害支援に行ったが、今の自分のBCPでは全く役に立たないことが分かった」
今回紹介した回答者の中で、令和6年2月から3月まで能登半島へ行き、被災した要介護高齢者の避難所での生活支援をした方が何名かいました。その方々はDWAT(災害派遣福祉チーム)の一員として、被災地のケアマネジャーへのサポートとして1週間活動されています。
いただいた感想を一部紹介しておきます。
「何とか作ったBCPでしたが、今年3月に輪島市の支援に行かせていただき、何の役にも立たないかもしれないと感じ帰ってきました。」
「七尾市で活動しましたが、断水だったためデイサービスは中止していた。じゃあどうするの?というときに答えがなく、支援者が疲弊していた。」
「訪問した避難所で新型コロナのクラスターが発生したので、呆然とするしかなかった。」
皆さま貴重なご意見、ご感想をありがとうございました。
まとめ
「自分の事業所のBCPはこれで完璧だ」ということは決してないと思います。スタッフによる意見交換や災害シミュレーションを通して、精度を高めることが大切であり、その過程にある気付きや協議にこそ意義があるといっても過言ではありません。
最近では全国どこにいても台風や異常気象により生活に支障をきたすことがあります。災害には至らなくても、そういう機会の度に自分のBCPを見直したり、備蓄を確認したりするなど災害対策を見直してはいかがでしょう。
執筆者: 柴田崇晴
日本介護支援専門員協会 災害対応マニュアル編著者
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・本記事はCloudBCPブログの転載です。
https://www.cloud-bcp.com/posts/MFETRxMz
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