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金髪のエメラルド #17 クリームソーダを飲みながら🥂


私が棲むお屋敷は、扉や壁が薄すぎてトイレの音まで聴こえてくる。6時起床。ブリブリブリブリそんな音色で目が覚める。ああ気分が悪いのである。




吾輩は爺である。
吾輩はいつも台所に居座っている癖に、私が休みで部屋で寛いでいる時に限って隣の部屋に音も立てずにやってくる。
おい、壁越しにこっちの様子を伺うなよ。。

昼過ぎて、台所が静かになったと思い下に降りてみても、いる。いつもの席に居座って、黙って爪を研いでいる。
爪を研ぎながらこちらの一挙一動を見逃さないようにしている暇な吾輩。

ああ、またひるめし抜きなのである。

腹が減って外へ飛び出し道を歩けば、私を見つけるや否や自転車を降りて後をつけてきた顔見知りの女子プロレスラーもいる。
何がしたいんだよ。ついてくるなよ。さっさと追い越せよ。

この町は過干渉すぎてしんどい。お決まりの定型文ばかりを飛び交わす町人たち。定型文を交わしながら、共通項を探りあっているうちに気が付くとターゲットの陰口に発展するのがこの町のルール。
共通項があったとしても、盛り上がれないのが私の定め。
盛り上がりに欠ける私はおのずとターゲットになってしまう。推しを周りに推す気もないし、一般的なレールから外れているから子供や孫の年齢の話もできないし。架空の子供の話でもすりゃいいのか?とにかく何が地雷になるや知れぬから余計な事は言わないに限る。


となると、何も言えなくなるのである。

言う側は万人に好かれる奴なんていないと割り切っているのかもしれない。あんたにとっての嫌なやつはお前かもしれない。お互い様ってことで悪口の言い合いしてストレス発散、言いたいことを歯に衣着せず言い合っているから、お互いを理解しあえて、喧嘩するほど仲がいいで満足してるのかもしれない。それが一番幸せなのかもしれない、永遠に共に。


なんだかんだ言われていたとしても、遠まわしに匂わせをされたとしても、こちとら知ったこっちゃねえです。というターゲットのその態度が言う側は怖いようだ。黙っていると何考えてるか分からないという理由で一番気味悪いようなのである。




気味悪いと言われても、私はどうしようもない。
どうすることもできない。
だからこんな奴になったのは何故なのか、説明させてくれないか。話せば長くなるだろう。喫茶店に行かないか。
クリームソーダを飲みながら、話を聞いてくれないか。

生い立ち、家庭環境、受けた仕打ち、親戚祖父母父母兄弟、先祖代々、縄文時代、ひいてはミジンコ誕生の日まで遡らなければならないから話せば長くなるのだが。


「クリームソーダお代わり」


つづく


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