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星の出ているうちに帰っておいで*手放し*she said epi43

 いつものケンカとは違う。私はまたユウに拒絶された。
「もう離さない」って約束してくれたのに。

 状況が変わっていない中、ユウに戻ることが怖かった。また、昔の傷が疼くと感じていたから。「それでもいい。何度でもぶつけておいで」と言っていたけど、やっぱり手を離したじゃない…。

もうすぐだと思っていたのに。

 既読が付かないラインが怖くて、過去のやりとりも全部ウソのような気がしてラインはすべて削除した。ユウばかりの電話の履歴もクリアにする。貰った腕時計も目の届かないところへ閉まった。

ご飯が喉を通らなくなった。体力が落ちてるのかいつも眠い。

 また迷子になってしまった。こんな私だから状況が変わらない…。最初の2週間くらいは自分を責め続けた。

 「もうダメかもしれない。さすがに飽きられてしまったかな」

 でも、サイレントの時のような、他の誰かを求める気持ちは全くない。常に自分に矛先が向いている。再会して半年のご褒美タイムで確信した。私は、生まれてからユウだけしか好きになっていない。ユウ以外はみんな同じに見えてしまう。ユウかユウ以外しかいないってわかってから、他の誰かで寂しさを埋めたいという気にはこれっぽっちもならなかった。

 とりあえず他のことに集中しようと思い、書きかけの小説を再開させる。ユウとの軌跡を一つの物語にしたくて書き始めた小説。飽き性でいつも途中で投げ出してしまうけど、この小説は書き上げないといけない気がした。でも、いつも苦しい時期のところで止まってしまう。消しては書きを何度繰り返しただろう…。稚拙な文章で恥ずかしいとも思う。でも、それでもいいから最後までやってみよう。

 年末も近づいてきた。ケンカの前はクリスマスも一緒に過ごそうねって言っていたけど、連絡がくる気配はない。でも、私も怖くて連絡する気になれなかった。年末の最終日は私とユウが初めてつながった日。私たちはその日を二人のスタートの記念日にしていた。今年は一緒に祝えるかなと思ったけど、それも諦めに変わっていた。

 この頃、テレビや歌詞、広告、リーディングからも同じメッセージを貰っていた。

「もうすぐ終わるよ。よく頑張ったね。おめでとう」

 日を追うごとに、苦しかった気持ちが薄らいでいる気がする。
もう12月なのに、天気が良くて気持ちがいい日。外をお散歩していた時、ほんの一瞬声が聞こえた

『俺たちは、一緒になることが着地点だよ』
 
 これまでの気持ちがウソのように、一気に心が解放された。
 
 不倫を受け入れることはできないけど、幸せを感じることはできる。
私が幸せになることは、ユウの世界の人は傷つくと思っていた。迷惑でしかないと思っていたけど。それは私が考えることではないのかもしれない。

ただユウが好き。それでもユウが好きなんだ。

 ユウが言ってたっけ。
「離婚する前に、カコと一回別れる。そしてまたカコに告白するところからスタートするよ。その時は、何度振ってもいいよ(笑)また振り向かせるから。だから、俺の方のことは気にするな。カコは幸せになっていいんだよ」

 これまで、私だけが幸せになればいいという思考だったんじゃないかな。
私たちの周りには、私たちの世界に生きる沢山の人たちがいる。その人たちを、まずは私の周りの人を笑顔にしないとね。もちろん、そのためには私が笑顔でいないと始まらない。

 何度も何度も同じところをグルグルしてた。全然信じられないって自分を責めてた。だって、ユウが何でも先延ばしにするから。再会しても何も変わっていないじゃない。口だけは達者だけど、行動がないんだよね。言ってもやらないんだもの。時間のムダだと思わないの?おばあちゃんになって死んじゃうよ!
意地悪で、屁理屈。いちいち細かいし、揚げ足ばかりとってくる。頭ごなしで命令ばかり。モラハラ!って思ったことが何度あったことか。

 でも、やっぱり戻ってくる。これは執着だから手放さないとと必死だったけど、きっと違う。心から信じることが出来ない自分がいけないと思っていたけど、それも違う。

 ただユウの存在を愛してる。
そして、私をユウは愛している。

 後は、宇宙に任せよう。もがくのは、もうおしまい。
この小説が本になって、ユウに届くと良いな。

久しぶりに、胃がキリキリと痛くなって寝込んだ。冷や汗をかきながら布団に入っている中で、私は自己統合をしたと感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

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