セミと偽善者

連休中、日中に散歩をしていたら
羽先がまだみどり色のセミが
熱く熱されたコンクリートの上を
よちよちと歩いていた。 

気になって見ていたが
すぐに動かなくなった。


虫が好きなわけではないし
それを助けるのは
自己満足だし
気まぐれだし
自分勝手な行為だと思いはしたが
見過ごせず
セミを移動させることにした。

直につかむのは抵抗があったので
落ちていた木の葉を近づけてみると

へばっていたセミは気づいたように
よちよちと葉の上に乗ってくれた。


まだ歩く力はあるようだ。



近くの木の枝に近づけると
弱々しく見える足の
どこにそんな力があったのか不思議になるほど
しっかりと枝につかまってくれたので
ほっとして散歩を再開した。



夕方、あのセミを見に行ったら
枝には止まってなかった。

羽を完全に乾かし
木の上の方まで
自力でのぼることができていたら
あの枝にはいないだろうと思っていたので

きっといい予感が当たったのだと安心して目線を下に落とすと、土の上でセミが転がっていた。


とまらせた枝の
ちょうど下に転がっていたので
おそらく昼間のセミだろう。

羽の下だけ中途半端にみどりで
やはりあの後、
すぐに力尽きてしまったらしい。



救えたかもなんて
一瞬でも考えた自分を恥ずかしく思ったが

土の上でアリに看取られている姿をみて
すこしだけ(自分が)救われた気持ちになった。

そんな自分を
偽善者だなと思った。



こうやって考えることも
陳腐なことだとわかっているけど

熱されたコンクリートの上で
靴底やタイヤに轢かれ
この世界から姿を消すよりは
まっとうな姿ではないのか。


いや、やはりこんなことを思うことこそ
偽善者のそれだろう。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?