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目にうつる全てのことはメッセージ

新卒で入社したのは化粧品会社だった。

制服に身を包み、
百貨店のカウンターに立ち
お客様をお迎えする。夢が叶ったのだ。


しかし入社後すぐに辞めた私は
引きこもりになった。



社会に出て働くという
みんなが普通にできることが私にはできなかった。

働かざるもの食うべからずという言葉があるが
だとするなら、社会に出て働くことが怖い私は
生きていても意味がない。
この世に不要な人間なのだ。



「なぜ働かない?」
「いつまであの状態なのか」
「おかしいのではないか」
「将来のことをどう考えているのか」
「バイトくらいすればいいのに」
「一日中何をしているのか」

リビングでは両親と妹が
私のことを話している声が聞こえる。
情けない。消えてしまいたい。

しにたいとは思わなかったが
こんなやつはしんだほうがいいと思いながら過ごした。


自分を奮い立たせるため
どうにか勇気づけるために
図書館へ行き、いい言葉、名言が書いている本を借りた。

心を温めてくれた言葉はすべて手書きでノートに書き写していく。

ここでたまに更新している
『強く生きる言葉』は当時書き写した言葉たちで、『強く生きる言葉』と言うのは
岡本太郎さんの名言集のタイトルだ。
今でもたまに読む。


私は若かった。
子供みたいなものだった、というか子供だった。

当時の私に「みんなそんなもんなんだよ」って言ってあげたい。

確かに新卒から一社で定年まで勤め上げるような人だっているけど、ごくわずかだ。

どんなに頭が良く高学歴な人でも
社会に出て挫折して、
それでもなんとか生きてる人はたくさんいるんだよ。

みんなそんなものなんだよ。
大丈夫。



もちろん当時はそんなふうに思えなかった。
あんなに入りたかった会社に入社したのに
すぐに辞めたのだから無理もない。

家族が私のことを話していたのだって当たり前だ。

昔から不登校気味で
将来大丈夫なのか心配されていたのに
その子が仕事を辞め働かず家にいるのだから
不安でたまらなかっただろう。



どこかに本当の気持ちを吐き出したくて
当時流行り出していたブログをはじめた。

そこには包み隠さず自分の現状をそのまま書いた。書いているうちにコメントをもらえるようになった。

いわゆるニートだったので
攻撃的なコメントばかりだろうと構えていたが
そんな言葉を向けてくる人は一人もいなかった。


図書館で借りたビタミン剤みたいな言葉と
やさしいネットの人たちとの交流が
あの頃の私を支えてくれた。



言葉をノートに書き写し、
ブログを書きながら半年間過ごして

なぜか急に世界一周したいと思った。
私はいつか世界一周をしたい。
だからそのために、働こう。

突拍子も無くそう思った。



「一寸先は光だ」と一日中呟き
自分を奮い立たせた。

お風呂の中でも呟いて、
面接の直前もずっと呟いて、
ようやく社会復帰した。



いつか私と同じような気持ちでいる人に
仕事を紹介できるような業界で働きたいなと思っていたが、今の私はそれに近い仕事をしている。

しかも同じ会社で10年以上も働いているのだからあの頃の私が知ったら驚くことだろう。



これを書いていてふと思い出したが
当時のブログに


「私も一つのところで長続きしなくて
何回転職したかわからない。
でも奇跡的に今の会社では10年以上続いてる。
○○ちゃんはまだ若い。絶対大丈夫!!」

とコメントをくれた女性がいたのだが、
もし今の私が当時の自分にコメントするなら
同じことを書くだろう。



未来の私からのメッセージを
誰かが代わりに届けてくれている。

もしかしたらそんなことが
毎日常に起こっているのかもしれないな、なんて思ったりした。



















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