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手持ちのカードは弱弱だけど

世間でよく引用される人生訓として、以下の名言がある。

配られたカードで勝負するしかないのさ…..それがどういう意味であれ。

 アメリカの漫画「ピーナッツ」の一場面で、人間の少女ルーシーに言われたことに犬のスヌーピーが答えた、あまりに有名な台詞である。元の会話は以下の通り。

ルーシー:”Sometimes I wonder you can stand being just a dog …”
(時々、わたしはどうしてあなたが犬なんかでいられるのか不思議に思うわ。)
スヌーピー:”You play with the cards you’re dealt …whatever that means. ”
(配られたカードで勝負するしかないのさ…それがどういう意味であれ。)

ルーシーよ、なんとも失礼なことをよくもまあ、ずけずけと・・・(笑)

◆◆◆

元々この言葉はけっこう好きだったけれど、うつ病を発症してからは特に、その意味の深さを実感することになった。

うつになってから、次々といろんなものが両手のすき間からこぼれ落ちていくような絶望を味わった。
自分には何もないという焦燥感や劣等感にうちひしがれていたが、徐々に回復するにつれて、結局のところ今、自分の手元にあるカードを使って生きていくしかないのだということが腑に落ちた。

◆◆◆

さて、自分が現在手にしているカードとは、どんなカードだろう。
しばし考えてみて、なんとなく思いついたのはこんな感じ。

1枚目:「自分の好きなこと、やりたいことはわりと常にあって、長期にわたって飽きずに続けられる」
2枚目:「子どもの頃から体を動かすことが好き」
3枚目:無し(笑)

2枚しかないカード。しかもかなり弱めで心もとない・・・。
とはいえ、1枚目のカードがあれば、人生を自分なりに充実させていけるのではなかろうか。どれも特にそれほどお金のかかる趣味でもないので、ほそぼそと楽しんでいけそうである。

2枚目のカードもなかなか捨てたものではない。特にこれから更年期、そして老後へと向かっていく中で、運動をこつこつ続けることは、体力をつけ、生活習慣病を防ぎ、骨密度を高めていくために必須である。
とりあえずゆるゆるランニングは末永く続けると決めている。

◆◆◆

幼少期から一貫して、喉から手が出るほど欲しかったけれども、手に入らなかったカードが1枚ある。
それは「どもらずにすらすらと普通に声が出る発話能力」というカードだ。このカードが手元にないことは、我が人生に大きな影響を与えた。
「コミュ力」が重視される世の中において、流暢に話せないということは死活問題であった。

◆◆◆

とはいえ、加齢と共に吃音(きつおん)症状はだいぶ軽くなり、特にここ数年は、場面によってはほとんど吃音があると気づかれないぐらいに話せるようになっている。(場面が変わると一変するが・・・)

うつ病の諸症状が嵐のように襲いかかってくる中で、そのあまりの苦しさに、吃音なんてどうでもいい、すべてがどうでもいいと、投げやりになったことも影響したかもしれない。
それが良かったとは決して思えないけれど。

そんなわけで、現在も吃音による困りごとがないわけではないが、「どもらずにすらすらと普通に声が出る発話能力」というカードは、ひとまず手元になくてもいいかと思えるようになっている。

◆◆◆

生きていく上で欲しいカードはいろいろあれど、今のところ手持ちの2枚のカードを活用しながら、スヌーピーを見習い、現実を受け入れて粛々と生活していきたい。

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