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紙の資料廃止は資源・費用・時間の節約以外の効果あり

 養豚の獣医師です。毎年3月に養豚農家約100人を集めて、経営・技術セミナー開催を20年以上続けています。セミナー参加者の年齢層は30歳から80歳、平均年齢60歳を超えています。
 これまで、参加者のためにPowerPointで作成した講演資料を白黒で印刷し、A4用紙20枚を100部用意していました。職場のコピー機で自動印刷・ホチキス留めが可能ですが、それでも準備を含めて2時間くらいかかります。
 コピー機を見守っている時間が無駄で、その間は他の人がコピー機を使えないことで迷惑をかけていました。さらに資料を封筒に入れ運搬するのに30分くらいかかります。
 費用としてリース契約のコピー機使用料は1枚5円です。20枚×100部×5円で1万円かかっています。紙代(1円/枚)が2000円で封筒代(60円/枚)は6000円です。ホチキス針代は約10円なので計算に入れてません。
 資源的にはA4用紙1枚は4グラムですので、1部80グラム×100部を使用し8キロです。封筒16グラム×100部で1.6キロ使用しています。用意した資料の2割は廃棄していました。ホチキス針100本は2グラムで計算に入れてません。
 3年前、考えました「セミナー参加者の半分は、ノートパソコン(ノートPC)持参だ。ノートPCはなくてもタブレットかスマートフォンはもってきている。紙の講演資料は削減できるかも」。
 PDF (Portable Document Format)ファイルに変換して事前にメールで配布することを思いつきました。PDFファイルはメールで送るのも保存するのも簡単です。またPDF変換時にカラー印刷もできます。
 不安だったのは、参加者の年齢による紙の資料への愛着と安心感です。紙の資料なら、手元にあってメモができ、自宅に持ち帰れるからです。
 紙資料配布廃止のためのステップは以下でした。
1)セミナーのお知らせメールで「紙での資料配布を止めます。事前にPDFファイルをメールで配布します」と理解お願いのアナウンスをする。
2)PowerPointで講演用のファイルを作成する。エクスポート機能で配布資料をPDFに変換しカラーにする。
3)セミナーの1週間前にメールで、参加予定者にPDFファイルを添付し、「紙媒体が良い方は、自分で印刷して会場に持参してください」とお願いする。
4)予備として参加予定者数の3割分を紙で用意する。封筒の用意はやめる。

 1年目の当日、紙媒体を希望する人は1割程度でした。残りの参加者はノートPCやタブレットを持参していました。
 2年目も同じステップを踏みましたが、4)の紙媒体の予備資料は1割に減らしました。当日に紙媒体を希望する人が5人いました。
 私は彼らを「農家」と呼んでいますが、年商1億円から200億円のビジネスを経営する経営者であり、無駄をなくすことの意義を理解している人は多いのです。
 3年目は4)の予備資料を参加予定者の5%つまり5部のみに減らしました。2人の参加者のみが紙媒体を希望しました。3年かけて、紙の講演資料の準備は参加者の2%に減りました。次回は2部のみ用意するつもりです。

このペーパーレス化で得られた資源・費用・時間への良い変化は4つです。

  • 1回8キロと紙費用2000円が98%減になった

  • コピー機使用料1万円も98%減になった

  • 資料を入れる封筒1.6キロと費用6000円はゼロになった

  • 準備の労働時間が2.5時間削減され労働生産性が上がった

上記4つ以外で得られたよい効果は以下です。

  • PDFの事前送付により、参加者が予習できるようになり、セミナー内容の理解が深まり、セミナー後の質問内容に誤解が少なくなった

  • カラーPDF資料で見やすくなった

  • 私も参加者も資料保存用スぺースが不要になった

  • 他の講演でも同様に紙資料をやめ、PDFでの事前配布を依頼主に提案できるようになった

 さらに紙資料の廃止はペーパーレス化の一環として、SDGsに貢献できるというのに気づきました。SDGsでいう「目標12:つくる責任、つかう責任」「目標15:陸の豊かさも守ろう」に関係し、廃棄物の発生防止や削減、森林資源の保護に少しだけ貢献できたようです。これを機に農業経営者がペーパーレス化やデジタル化やSDGsに関心を持つようになれば、さらに大きな成果となります。
 「紙資料が欲しい」という少数派を見捨てないことも大切だと思います。少数派はユニークな人たちであり、誰も考えつかないアイデアや質問をしてくれるかもしれないからです。
*イラストはMageでのAI生成です。

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