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つらなりのほつれ 286 クジラの立ち泳ぎ
クジラの眼は、小さい。スイカほどの大きさしかない。まばたきすると眼尻がさがって水平線につながる。ちなみに昨夜は『心変わり』でよく眠れました。できるかどうか、イチかバチかやってみる。かつてどこかで成りたかった自分に、いまここで出会っているような、立ち泳ぎで、背中から地球をあおぎ見る。
詩育日誌 24.08.10 盆花③
生ぬるい水で 会いたい
花はすぐ枯れるから
死んだ海域に樒平を入れておく
金魚が消えたビニール袋の
不安が揺れるほうへ
放たれた水で 待っている
海軍かつカレー、ふたつ。
小用港ターミナルの
あやまちに着岸する
つらなりのほつれ 285 空師②
森の雨音には芯がある。それを縦糸にする。「さいごは笑って死にたい」と言いはる顔のない使者が納められた、木箱でピアノが届く。
群から離れて、ひさしい。眼のまわりだけ黒いヤギが、トタン板にわき腹を擦りつける。「かれはひとりで遊ぶのが好きだから」、あっそうか。
50㎝の高さでトタン板の波がへこむ理由。問いは、はがされる。それを横糸にする。生活がもようになるようにジャガードで編みこむ。
世界を新たに
詩育日誌 24.08.08 盆花②
次の年もその次も
だれにでもある憤りの深さで
沈黙だけはしる
やっと、会えた。
兵学校にうれしい拍手パチパチみたいな
いたみはきえた?
いまはしあわせ?
答えられないことは問わない
お先に、どうぞ。
星降るリズムで死者がオルガンを弾く
灯が消えた島で
花が枯れた空に
つらなりのほつれ 284 BLM
たたかわないと・・・生きてるかぎり、五感にしまっておいた仮想に「黒」をはき捨てる。
「 でも殺人が
うつむいた顔から
お前を覗きこんでいる 」
8分46秒に、#blacklivesmatter をつけた。いま、どういうときかわかる?「 」内のよく冷えた死者がボクを見つめかえしている。
どこの、だれだか。フルダイブで息すらできない話者が2030年代の「生きてるかぎり、」をゴミ箱から拾う
詩育日誌 24.08.06 植物園
開かない窓から
噴水が聞こえてきた
水のことあきらめろ。
あいかはらず渇いて、
といったふうなかな遣いに
鳥が鳴いた
睡蓮もざわめいた
わたしは今の僕じゃなくて、
あいだけで逢ひたい。
といったふうに近似的な
芙蓉が咲いた
犬を呼ぶ声がひびいた
あなたは昔の君じゃなくて、
だれだろう?
擦りガラスのむこう
日傘をさして待つ人
つらなりのほつれ 283 空師①
空師が、空のフタを開ける。異空間の弦を響かせる。同じことを〈自我〉に対してやり直す。
空咳が止まらない。夏風邪をひいたようだ。このひとの眼はどこにあるのでしょう?
なるほど。夏休みが降ってくる夜は、森の学校に灯がともる。オス山羊しんちゃんの、前髪に月がかくれている。
詩育日誌 24.08.04 追川
石のしたに手をいれる
魚を、手づかみ。
白銀色ではねる指のすきまから
流れてくる川が
夏休みのはしっこにとび散る
水しぶきを追いかけて
瞼のうらがわで黄ピンクの
ホタルはいつまで飛ぶのですか?
魚のエラに竹笹をとおす
その手があったか。
(注)追川「オイカワ」は岡山で「ハエ」と呼ばれている川魚のこと。色がきれいで、背は青灰色、腹は白銀色、脇には淡い黄ピンクの縞模様がはいっている。小学生のころ笹ヶ
詩育日誌 24.08.03 ペンギンの袖
魚をエサにしている
欲ばりな鳥が
水のなかで続編を生きることにした
― ボクは魚そのものになる。
海へ歩くその過程でペンギンに寄り道したら
羽が進化して
結婚式のえんび服になった
(地上とくに水辺では「個別性の密度」が高まり「求愛行為の劇場化」が急速に進む。
― 何でもできると何にもできないは同じこと?
空を飛ぶことをあきらめた
小さい潜水者の
ためらいはいつも袖からこぼれる
(注)一
つらなりのほつれ 282 泣きながら笑う②トマトの自由
トマトが背伸びした 生活の仕組みなんか、なんも見えてねえ。え、どうした? ネンショーあがりの、ふぇるでぃなん!
熟すまえに割れている
片想いの
トマトはトマトであるというだけで自由である
雨囲いで
行動がこわれても、にいにい蝉は
「確乎たる」わたしたちを
泣きながら笑う
そもそも理念は萎れるころだった。抹消でよじれて 枝葉をはしらせる、その知覚はどうなった?
詩育日誌 24.08.01 盆花①
砂浜はダンスするらしい
さくら貝を理解するまで
古い校舎に貼られた絵日記で
現象を引きずって
きみのことずっと好きだよ、なまま
なまえを点呼した
夕ぐれを抽斗にかたづけよう
とおい諸島で
ひとり暮らしをしているヤギが
そっと夏を、供える。
ことばを束ねてくれたから
つらなりのほつれ 281 泣きながら笑う①梅雨明けキューリ
オレは、逃亡を恐れない とりすましたことばの虚像へ、はんぱもんの騎馬像がセーヌの水面をギャロップする。そうか。さりげない括弧のきらめきを またすくい損ねた。死んだ金魚にきづくと、もう梅雨が明けている。
けさ摘んできた
ぬれた草が
きみの「あるときふと」で開花した、あおぞらを
心底の地平にひろげてみる
ひぐらしは
泣きながら笑う
わたしたちを鳴きやまない
つらなりのほつれ 280 たかをくくったたかが
ただの猛禽類でしかない「ぼく的には、」の外で無秩序なわいざつさを救おうとした。苦しいのだか、どうだか。ダチの首が反転する
言われたことはなんでもやる
オレの名は、ふぇるでぃなん。
おまえのかわいい犬だ
「幻想の光景を仕立てたりしない。」などと、たかをくくったたかがフクロの あの暑い日を忘れない
詩育日誌 24.07.30 進めない
なかなか進めない3本足の
傷ついたヤギが
ぶきようだから
ぶさいくだから
ますます愛おしい
たとえひとが人を殺しても罪じゃないという世界が
この現実のどっかで逡巡する として、
きょうは草をたくさん食べた
柵のちかくでむかえてくれた
おめでとさん。
考えるまえに感じる
そこでともに生きる
つらなりのほつれ 279 プールサイド
背なかあわせに「不適応な」ぬくもりを抱きあう。井戸の底からひびいてくる〈怒り〉にねじられた文体では、しびれと痛みの区別がない。つらい想いで世界をこじあけて、人称がこわされた。樹々のあいだで動かない、猛暑が、続きますね。の輪郭を、わたし「たち」の指示性に置いてみる。プールサイドの水しぶきへ、バタ足でちかづく。
つらなりのほつれ 278 トロかでろ
騎馬像の きゅうさいにむかった、パトカーのなかでさつが死んだ。元兵士のきゃすたーが副音声でかたるトロかでろ で、ボリュームがしぼられた。
コケる 苔のこと? ランナーのこと、「地衣類」って呼べよ。ビビッてやがんの、が きびしいげんじつを生きぬくため
ソバージュに咲かせた花 これより、反撃。イ・レ・にゅる。はだかの青いおじさん!