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つらなりのほつれ 285 空師②

森の雨音には芯がある。それを縦糸にする。「さいごは笑って死にたい」と言いはる顔のない使者が納められた、木箱でピアノが届く。

群から離れて、ひさしい。眼のまわりだけ黒いヤギが、トタン板にわき腹を擦りつける。「かれはひとりで遊ぶのが好きだから」、あっそうか。

50㎝の高さでトタン板の波がへこむ理由。問いは、はがされる。それを横糸にする。生活がもようになるようにジャガードで編みこむ。

世界を新たに見いだす手法があれば、いっそ、ロープで引き寄せる、みずうみにうつる青の底まで、空師がよじ昇る。


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