ガトーけんぢ

詩集『その翼から海がこぼれる』(雀社1991)『やなぎ腰のおとこ芸者』(思潮社1993…

ガトーけんぢ

詩集『その翼から海がこぼれる』(雀社1991)『やなぎ腰のおとこ芸者』(思潮社1993)『紺屋記』(思潮社2006)『タタウ』(和光出版2008 )、詩誌「どぅるかまら」。1日1詩をめざして “詩育”して、Xにそのかけらをポストしている。

最近の記事

つらなりのほつれ 286 クジラの立ち泳ぎ

クジラの眼は、小さい。スイカほどの大きさしかない。まばたきすると眼尻がさがって水平線につながる。ちなみに昨夜は『心変わり』でよく眠れました。できるかどうか、イチかバチかやってみる。かつてどこかで成りたかった自分に、いまここで出会っているような、立ち泳ぎで、背中から地球をあおぎ見る。

    • 詩育日誌 24.08.10 盆花③

      生ぬるい水で 会いたい 花はすぐ枯れるから  死んだ海域に樒平を入れておく 金魚が消えたビニール袋の 不安が揺れるほうへ 放たれた水で 待っている 海軍かつカレー、ふたつ。 小用港ターミナルの あやまちに着岸する

      • つらなりのほつれ 285 空師②

        森の雨音には芯がある。それを縦糸にする。「さいごは笑って死にたい」と言いはる顔のない使者が納められた、木箱でピアノが届く。 群から離れて、ひさしい。眼のまわりだけ黒いヤギが、トタン板にわき腹を擦りつける。「かれはひとりで遊ぶのが好きだから」、あっそうか。 50㎝の高さでトタン板の波がへこむ理由。問いは、はがされる。それを横糸にする。生活がもようになるようにジャガードで編みこむ。 世界を新たに見いだす手法があれば、いっそ、ロープで引き寄せる、みずうみにうつる青の底まで、空

        • 詩育日誌 24.08.08 盆花②

          次の年もその次も だれにでもある憤りの深さで 沈黙だけはしる やっと、会えた。 兵学校にうれしい拍手パチパチみたいな いたみはきえた? いまはしあわせ? 答えられないことは問わない お先に、どうぞ。 星降るリズムで死者がオルガンを弾く 灯が消えた島で 花が枯れた空に

        つらなりのほつれ 286 クジラの立ち泳ぎ

          つらなりのほつれ 284 BLM

          たたかわないと・・・生きてるかぎり、五感にしまっておいた仮想に「黒」をはき捨てる。 「 でも殺人が   うつむいた顔から   お前を覗きこんでいる 」 8分46秒に、#blacklivesmatter をつけた。いま、どういうときかわかる?「 」内のよく冷えた死者がボクを見つめかえしている。 どこの、だれだか。フルダイブで息すらできない話者が2030年代の「生きてるかぎり、」をゴミ箱から拾う。 (注)「 」内の原文は、 " But homicide be looki

          つらなりのほつれ 284 BLM

          詩育日誌 24.08.06 植物園

          開かない窓から 噴水が聞こえてきた 水のことあきらめろ。 あいかはらず渇いて、 といったふうなかな遣いに 鳥が鳴いた 睡蓮もざわめいた わたしは今の僕じゃなくて、 あいだけで逢ひたい。  といったふうに近似的な 芙蓉が咲いた 犬を呼ぶ声がひびいた あなたは昔の君じゃなくて、 だれだろう? 擦りガラスのむこう 日傘をさして待つ人

          詩育日誌 24.08.06 植物園

          つらなりのほつれ 283 空師①

          空師が、空のフタを開ける。異空間の弦を響かせる。同じことを〈自我〉に対してやり直す。 空咳が止まらない。夏風邪をひいたようだ。このひとの眼はどこにあるのでしょう? なるほど。夏休みが降ってくる夜は、森の学校に灯がともる。オス山羊しんちゃんの、前髪に月がかくれている。

          つらなりのほつれ 283 空師①

          詩育日誌 24.08.04 追川

          石のしたに手をいれる 魚を、手づかみ。 白銀色ではねる指のすきまから 流れてくる川が 夏休みのはしっこにとび散る 水しぶきを追いかけて 瞼のうらがわで黄ピンクの ホタルはいつまで飛ぶのですか? 魚のエラに竹笹をとおす その手があったか。 (注)追川「オイカワ」は岡山で「ハエ」と呼ばれている川魚のこと。色がきれいで、背は青灰色、腹は白銀色、脇には淡い黄ピンクの縞模様がはいっている。小学生のころ笹ヶ瀬川によく釣りに行った。兄は素手で追川をつかまえる「ハエにぎりの名人」だった。

          詩育日誌 24.08.04 追川

          詩育日誌 24.08.03 ペンギンの袖

          魚をエサにしている 欲ばりな鳥が 水のなかで続編を生きることにした ― ボクは魚そのものになる。 海へ歩くその過程でペンギンに寄り道したら 羽が進化して 結婚式のえんび服になった (地上とくに水辺では「個別性の密度」が高まり「求愛行為の劇場化」が急速に進む。 ― 何でもできると何にもできないは同じこと? 空を飛ぶことをあきらめた 小さい潜水者の ためらいはいつも袖からこぼれる (注)一九八七年、世界最小のペンギンが、ニュージーランドの二四〇〇万年前の地層から化石で

          詩育日誌 24.08.03 ペンギンの袖

          つらなりのほつれ 282 泣きながら笑う②トマトの自由

          トマトが背伸びした 生活の仕組みなんか、なんも見えてねえ。え、どうした? ネンショーあがりの、ふぇるでぃなん! 熟すまえに割れている 片想いの トマトはトマトであるというだけで自由である 雨囲いで 行動がこわれても、にいにい蝉は 「確乎たる」わたしたちを 泣きながら笑う そもそも理念は萎れるころだった。抹消でよじれて 枝葉をはしらせる、その知覚はどうなった? 

          つらなりのほつれ 282 泣きながら笑う②トマトの自由

          詩育日誌 24.08.01 盆花①

          砂浜はダンスするらしい さくら貝を理解するまで 古い校舎に貼られた絵日記で 現象を引きずって きみのことずっと好きだよ、なまま なまえを点呼した 夕ぐれを抽斗にかたづけよう とおい諸島で ひとり暮らしをしているヤギが そっと夏を、供える。 ことばを束ねてくれたから

          詩育日誌 24.08.01 盆花①

          つらなりのほつれ 281 泣きながら笑う①梅雨明けキューリ

          オレは、逃亡を恐れない とりすましたことばの虚像へ、はんぱもんの騎馬像がセーヌの水面をギャロップする。そうか。さりげない括弧のきらめきを またすくい損ねた。死んだ金魚にきづくと、もう梅雨が明けている。 けさ摘んできた ぬれた草が きみの「あるときふと」で開花した、あおぞらを 心底の地平にひろげてみる ひぐらしは 泣きながら笑う わたしたちを鳴きやまない

          つらなりのほつれ 281 泣きながら笑う①梅雨明けキューリ

          つらなりのほつれ 280 たかをくくったたかが

          ただの猛禽類でしかない「ぼく的には、」の外で無秩序なわいざつさを救おうとした。苦しいのだか、どうだか。ダチの首が反転する 言われたことはなんでもやる オレの名は、ふぇるでぃなん。 おまえのかわいい犬だ 「幻想の光景を仕立てたりしない。」などと、たかをくくったたかがフクロの あの暑い日を忘れない

          つらなりのほつれ 280 たかをくくったたかが

          詩育日誌 24.07.30 進めない

          なかなか進めない3本足の 傷ついたヤギが ぶきようだから ぶさいくだから ますます愛おしい たとえひとが人を殺しても罪じゃないという世界が この現実のどっかで逡巡する として、 きょうは草をたくさん食べた 柵のちかくでむかえてくれた おめでとさん。 考えるまえに感じる そこでともに生きる

          詩育日誌 24.07.30 進めない

          つらなりのほつれ 279 プールサイド

          背なかあわせに「不適応な」ぬくもりを抱きあう。井戸の底からひびいてくる〈怒り〉にねじられた文体では、しびれと痛みの区別がない。つらい想いで世界をこじあけて、人称がこわされた。樹々のあいだで動かない、猛暑が、続きますね。の輪郭を、わたし「たち」の指示性に置いてみる。プールサイドの水しぶきへ、バタ足でちかづく。

          つらなりのほつれ 279 プールサイド

          つらなりのほつれ 278 トロかでろ

          騎馬像の きゅうさいにむかった、パトカーのなかでさつが死んだ。元兵士のきゃすたーが副音声でかたるトロかでろ で、ボリュームがしぼられた。 コケる 苔のこと? ランナーのこと、「地衣類」って呼べよ。ビビッてやがんの、が きびしいげんじつを生きぬくため  ソバージュに咲かせた花 これより、反撃。イ・レ・にゅる。はだかの青いおじさん!

          つらなりのほつれ 278 トロかでろ