えんどうけいこ

短歌、ひとりごと、その他

えんどうけいこ

短歌、ひとりごと、その他

最近の記事

読書記録

 武田砂鉄さんや頭木弘樹さんといった、世の中の空気では言わないほうが無難とされているようなことを言葉にしてくれる文筆家さんの本が好きだ。 若林理央さんの『母にはなれないかもしれない 産まない女のシスターフッド』もそういう本だった。  まず冒頭に「このことを、私が書いていいのだろうか。」と書いてある。少子化対策がとられている現代だけでなく、女性は子どもを産むものであり、産めば幸せを感じられるし、状況が整っているなら産むべきだ、個人の判断であえて産まないなんてあり得ないだろう、

    • 「さくらねこ短歌コンテスト」で優秀賞をいただきました。 ありがとうございました!! https://www.doubutukikin.or.jp/sakuranekotankacontest_2023/

      • ゆきのひたんか

        雪を見てはしゃげるうちは人生に白旗を掲げなくてもいい 金継ぎの技術を学ぶことに近いカウンセリングルームの対話 のどあめでごまかしたって違和感は梅のつぼみのようにふくらむ 冷え性は治さないまま遊びたいシルクソックス重ね履きして

        • 取り扱い説明書(仮)

           こちらの記事を読んで、「自分の取り扱い説明書」を書くって面白そうと思って、とりあえずちょっとググってみたところ、いろいろなブログやテンプレートが出てきた。だけど、単に「長所を書き出しましょう」という提案だけだったり、モチベーションが上がるようなものがみつからなかった。ネット上で探したものより、先ほどの記事にあった質問がどれも少し変わっていて答えてみたいと感じたので、トリセツになっているかどうかは疑問だが考えてみた。 わたしの取り扱い説明書 「強み」 ①息を吸うように「つ

          哲学対話みたいな、ジャッジしない場を居心地いいと感じるのは、自分がいつもジャッジしている(特に自分を)からかもしれないと思った。 目の前に山があるとき、登らないといけないなんてことない。登っても登らなくても、途中まで登って下りてもいい。

          哲学対話みたいな、ジャッジしない場を居心地いいと感じるのは、自分がいつもジャッジしている(特に自分を)からかもしれないと思った。 目の前に山があるとき、登らないといけないなんてことない。登っても登らなくても、途中まで登って下りてもいい。

          たいようたんか

          太陽がきれいですねと言ってみる 好きかどうかはまだわからない イカロスの翼みたいな情熱がないから長く生きていられる 夜が明けて夢からさめて鳴らせないチェロを抱えたわたしに気づく 裏側を決して見せない太陽の強さ(言い換えるならさみしさ)

          たいようたんか

          たつどしたんか

          たわいない言葉に愛が含まれていると気づいた シャンプー台で つくり笑いしなくてもいいひとといる時間でやっと息継ぎをする ドット絵のドットくらいの意味でしかなくても生きることをやめない 心臓に両手をあてる やさしさをわたしに、きみに、すべてのひとに

          たつどしたんか

          聖なる夜に

          いくつかの数字と文字の羅列によって わたしという人間が判断された結果 ありがたいことに巨大な白い建物の中で 数字と文字を打ち込む仕事を与えられている そうして月に一回、決まった日にちに 実体のない口座とかいうものの 数字が少し増やされている この数字が減ってしまうことを 暗闇よりも幽霊よりも わたしはひどくこわがっている 暮らしと数字は切り離せずに 減っては増やし、減っては増やし 見えない敵と戦うように スクルージ、わたしにおしえてほしい 口当たりのいい童話なんかじゃなく

          11月20日読売歌壇

          たましいにやすりをかける優秀な人材として採られるために/えんどうけいこ 11月20日の読売歌壇、俵万智選で掲載されていました。ありがとうございました! 投稿は10月13日でした。

          11月20日読売歌壇

          うさぎどしたんか

          生まれつきさみしかったと思い出す冬を越したらきっと忘れる 去る者は駿足であれ さもなくば追ってよけいにきらわれてしまう ぎざぎざの葉をもっているヒイラギは傷つけたほうの痛みがわかる 独学でとろうと無理にがんばった 愛する資格・愛される資格 シルバーのリングみたいに磨いたらわたしもきっとまた輝ける

          うさぎどしたんか

          てがみたんか

          教室の端から五人経由して届くYシャツ型の手紙が 栄養が足りないだろうダイレクトメールばっかり入るポストは 行間を読んでくれたらわかるからあえて短い手紙を書くよ 泣きごとを書いた手紙は重いから切手を増やす必要がある 絵手紙のはみだしそうなヒマワリに負けないくらい好きだったんだ

          てがみたんか

          たいふうたんか

          小麦粉をこねるしかない 勢いを増す雨風に負けないように イーストの匂いはきらい 締め切った1DKは息がしづらい ヘクトパスカルって何かわからないまま数十年生きているのだ 焼きたてを冷ます頃には静まった夜中にもてあます角食パン 台風の目の中にとどまったまま仲睦まじく暮らしませんか

          たいふうたんか

          自選十首(2017年9月22日~2018年9月21日)

          音のない動画のように目の前で弔問客が焼香をする 友達がほとんどいないわたしには入る勇気のないサイゼリヤ まっすぐなキュウリが並ぶスーパーのような社会をつくる人間 先生と話をしたい一心で知ってることを質問に行く あなたより星占いを信じたい嫌われないと信じていたい 手で会話するひとたちが早朝の駅のホームで光を放つ 生まれない命の数を考える シシャモの腹を咀嚼しながら ましろなる杖を持ちたる青年を追い抜かぬまま駅までを行く もしきみに羽があったらはぎ取って飛べないよ

          自選十首(2017年9月22日~2018年9月21日)

          手紙回し/短文バトル222「紙」

           中高生の頃、授業中に手紙を回すのが流行っていた(ここで「そうそう!」と言ってくれるひとはきっと同世代だろう)。紙はノートの端っこをちぎったものだったり、どうでもいいようなことばかり書いていたが、こっそり回すというのがたまらなく楽しかった。受験対策で塾に通うことになって、初日に後ろの方の席にひとりで座っていたわたしに知らない子から「席、今度とっておいてあげるね♡」と書いた手紙が回ってきて、すごく嬉しかったことを覚えている。

          手紙回し/短文バトル222「紙」

          オススメ/短文バトル3回目「一番古い記憶」

           短文バトル、回を重ねるごとに面白さが増しているような! どれも捨てがたくて迷うけれど、二つ選んだ。ひとつめは、  ちょうど、記憶の改ざんがテーマになった短編集(辻村深月『噛みあわない会話と、ある過去について』)を読んだところで、内容がリンクしていて、こういうことあるなと思った。ラストの「そういうことにしておけば、良いのかもしれない。」に深く頷く。本当にそう、それぞれの思っていることが真実なのだから、すり合わせなくてもいいよね。  もうひとつは、  タイトルを見てまず、

          オススメ/短文バトル3回目「一番古い記憶」

          一番古い記憶/短文バトル3

           母と喧嘩し、スマホが壊れ、仕事でトラブって、とにかくひどい一週間だったので、土曜日は自分を労ろうとエステサロンへ行った。全身のマッサージが終わり、足裏をほぐしながら施術者が「もしかして小さい頃、高いところから落ちて頭を打ったことがありませんか?」と言うので驚いた。神社の長い階段から転げ落ちたことが、わたしの人生で一番古い記憶なのだ。傷が残っているわけではないし頭は触られていない。彼女は「足裏には人生の全てが表れるんですよ」と言った。

          一番古い記憶/短文バトル3