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投資の基本(3)ROE、簡単!企業分析をしてみよう!

投資を始めると必ず耳にする株価指標の1つ。ROEについて今回は説明していきます。

ROEとは

ROE(自己資本利益率)とは、企業がどれぐらい効率的にお金を稼いでいるかを見る指標です。ROEの単位は%です。そしてこの株価指標は相対的にみて効率的かどうかを見ることができますが、割安割高の判断をする指標ではありません。
しかし、伊藤レポートからROEの目安として8%が良いと提唱されています。
下記よりご覧いただけます。


計算式

ROE = 当期純利益 ÷ 自己資本 ×100

自己資本とは、株主が出資したお金などです。

これを聞いてアレルギーある人は嫌になるかもしれませんが、どういったものかは最初はあんまり気にしなくて良いです。自分で計算して出すものでもなく、ネット等に載っていますのでご安心ください。

ROEの考え方

ここでROEの算出例を出します。

(例)当期純利益1,000億円、自己資本10,000億円の時のROE
1,000億円円 ÷ 10,000億円 = 10%

ここで理解して頂きたいのは結局ROE何を意味しているの?というところです。

ROEは、最終的に手元に残った当期純利益を、投資家が出資したお金など返す必要のないお金で割っている。ということは、投資家などのお金を使ってどれだけの利益を出せたのですかということを表しています。

業種や企業のステージなどによってこのROEの基準は変動しますが、先述したとおり、8%は最低限としてほしいところです。

成長企業であれば、資金調達(返す必要のあるお金)をおこない積極的な投資を行って売上を拡大させる一方で、自己資本は小さいことが多いためROEは高くなる傾向があります。一方、成熟企業は成長企業と比較すると積極的な投資を行わないためROEは低くなる傾向があります。

ROEの使い方

では、ROEの使い方について説明していきます。下記例をご覧下さい

(例)
A 株、当期純利益1,000億円、自己資本8,000億円
B 株、当期純利益1,000億円、自己資本5,000億円

A株とB株、どちらが効率的に利益を生み出してますか?


答えは決まりましたでしょうか?



答えはB株です。

A株:1,000億円 ÷ 8,000億円 = 12.5%
B株:1,000億円 ÷ 5,000億円 = 20%

それぞれのROEは以上のようになります。

・A株:自己資本の金額の12.5%分だけ1年間で利益を上げた
8,000億円 → 年間1,000億円の利益を上げている

・B株:自己資本の金額の20%分だけ1年間で利益を上げた
5,000億円 → 年間1,000億円の利益を上げている

ということになります。

注意点

ROEは以上のように効率性を示す指標ですがいくつか注意点があります。

  1. 自己資本を小さくすればROEは大きくなってしまう

  2. 一過性の利益も反映してしまい一時的に高いROEになることがある

  3. 負債が多いとROEは高くなる傾向がある

(1)自己資本を小さくすればROEは大きくなってしまう

自社株買いなどを行うことで自己資本が小さくなり、ROEが高くなってしまいます。ROEが高くなると当期純利益が大きくなったと考えてしまいますが、利益率の改善を図るのではなく、財務的なテクニックによって高くすることが可能なのです。

(2)一過性の利益も反映してしまい一時的に高いROEになることがある

土地を売却するなどして出た利益は一時的な利益でありますが、それも当期純利益に含まれてきますので、一時的にROEが高くなることがあります。

(3)負債が多いとROEは高くなる傾向がある

バランスシート(貸借対照表)

先述の例で出したA株、B株のBS(バランスシート)です。
例では、ROEがA株が12.5%、B株が20%でしたが、バランスシートを見るとA株の方が財務上安全性が高いと言えます。

このように単純にROEだけをみて判断すると、財務状況が悪い企業も良いと判断してしまう可能性があるため注意が必要です。

以上で簡単なROEの説明は終わりになりますが、もう少し踏み込んでいきたいと思います。

デュポン分析

先程の注意事項で述べた通り、ROEの数値そのものをみて判断することは難しそうです。そこでROEを分解しどこが改善・悪化されてROEが上昇・下落したのかを分析するツールにデュポン式があります。
デュポン分析は化学会社が由来です。


デュポン分析

ROE = 売上高当期純利益 × 総資産回転率 × 財務レバレッジ

で求められ下記のようになります。

デュポン分析

売上高当期純利益(%)は、売上に対して最終的にどれだけの利益が残ったか、「利益効率」を見ています。

総資産回転率(回)は、総資産を使ってどれだけの売上高を上げたのかを表しています。

財務レバレッジ(倍)は、自己資本に対してどれだけの借金をしているのかを見ています。

この3つをだすことで、ROEの高くなった原因は何が原因なのかがわかるようになります。先程の注意で負債が多いとROEが高くなるという部分では、財務レバレッジを見ればわかるということです。

では、下記の例を使って簡単に説明します。


A株 22/3期
ROE=売上高当期純利益(%) × 総資産回転率(回) × 財務レバレッジ(倍)
(1,000億円÷5,000億円)×(5,000億円÷10,000億円)×(10,000億円÷8,000億円)
=20% × 50回 × 1.25倍 = 12.5%

A株 23/3期
ROE=売上高当期純利益(%) × 総資産回転率(回) × 財務レバレッジ(倍)
(2,000億円÷5,000億円)×(5,000億円÷10,000億円)×(10,000億円÷8,000億円)
=40% × 50回 × 1.25倍 = 25%

A株では売上高当期純利益率の改善がROEを12.5%から25%に引き上げたことがわかります。

B株 22/3期
(1,000億円÷5,000億円)×(5,000億円÷10,000億円)×(10,000億円÷5,000億円)
=20% × 50回 × 2倍 = 20%

B株 23/3期
(2,000億円÷5,000億円)×(5,000億円÷10,000億円)×(10,000億円÷4,000億円)
=20% × 50回 × 2.5倍 = 25%

B株では財務レバレッジの上昇がROEを20%から25%に引き上げました。

以上を総合的に見ていくとA株は企業努力により、売上高当期純利益率の大幅改善によるROEの上昇が起こったと考えられるが、B株は負債の増大によるROEの上昇であり、それによる売上高の増加や利益率の向上はなく、自己資本の減少も伴っていることから財務状況も悪化している。そのため、同じROE25%だがA株の方が良いと判断できます。
注意としてA株の利益の増加が特別利益などの一過性でないことが前提となりますのでその点も注意してください。


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