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 日本の隣の国、韓国朝鮮と我が国は、古来より文化交流があった。少し前には韓流ブームもあり、K-POPが好きな日本人もたくさんいる。しかしながら、最近の日韓関係は、非常に厳しい状況にあり、決して良好な関係と言える状況にない。そんな中で、次世代を担う子ども達は、お互いの国のことをどう理解しているのだろうか?
 私は小児科医で、親が長期出張で韓国から来た子どもを診察する機会があった。彼らは概して年長者や社会的地位の高い人に対する態度が丁寧である。診察の際も敬語で心を開いてくれないこと多かった。「悩み事があったら聞くから、話してみて。」と何度も働きかけ、やっと彼の気持ちを聞くことができた。
 彼は日本の学校に通っていた。そこでチング(友だち)ができないというのだ。
「日本が、韓国にひどいことをしたと、韓国では習ってきた。『そんな国に行きたくない!』と泣いたけれど、抗えず、日本に来た。実際に来てみれば、聞いていたようなことはなく嫌がらせをされたことはなかった。」
「よかった、と思い、日本になじみ始めた頃、テレビで韓国の人たちが日本の批判を語っているのがセンセーショナルに報道されることが多くなり、それ以降、僕は避けられるようになった。寂しい。」
私は、笑顔で彼に尋ねた。
「仲違いをするのは、人と人が考え方の行き違いで、話し合っても同意に至らなくて、起こることが多いのだけれど、君は、クラスの友だちとけんかしたことある?」
「掃除の時に、しゃべってばかりで掃除をしていない子がいたから注意したら、たたいてきたことがあった。」
「それでどうしたの?」
「周りの子が、『掃除をしていなかったことが悪いのに、それを注意されて暴力をふるうのはだめだよね。』とたたいた子に注意した。すると、その子は、『そうだね。ごめんね。』と謝ったので、僕は、たたかれたのは痛かったけれど、謝ってくれたから許した。」
「そうだよね。掃除はみんなで協力してしないと、できない。自分たちのためにきれいに掃除しないといけないんだ。自分たちのために困ったことがあったら話し合う。いけないことをしたらきちんと謝る。それで、絆が生まれるね。でも、さっき言った国と国の問題の話って、君が起こした問題かい?」
「違うよ。」
「だったら、これからは自分の見たこと、自分のしたことを大事にして、周りに問題が起きたら話し合ったらいいよ。君は自由だ。」
 その答えに、彼は笑顔を取り戻した。政治レベルの話は、関係ない。大切なのは人と人の絆である。彼は、韓国に帰った後も私のことを「マイフレンド」や「ベストフレンド」と言って、会いに来てくれたり、韓日子ども友好の講演会を開いてくれたりしている。

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