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【児童精神科コラム】【子育てコラム】親として小児科医として思う

■しつけの質が落ちている現在


子どもを育てるのはとても大変です。子どもの気持ちを理解しながら、しつけなければいけません。子どもの気持ちを無視することなどあり得ないし、そのためには時間をかけて育てなければならないからです。

公共の場で子どもがルールを守らなかった場合、近くに親がいれば親が怒るのが当然です。しかし、最近の親は注意しません。親が注意しなければ、周りの大人が代わりに注意をするということも、昔はよく見る光景でした。ですが、最近はそれもありません。勝手に注意をすると、注意をした大人の方が注意をされてしまうからです。

そうしているうちに、子どもたちは誰にも注意されずに育っていきます。ルールを守らなくても怒られないということを知っていくので、だんだんと「ルール」に対する認識が甘くなりますし、何をするのが良く、何をするのが悪いのかの判断も出来なくなるわけです。つまり、日本の子育て力は低下したと言わざるを得ません。

■子どもの気持ちと親の都合


子どもの気持ちを聞かずに無視する。そうすればどれだけ子育ては楽になるでしょう。私が子どものときに見ていた世界と、大人になってから見る子どもの世界は変わっています。しかし、人にとって大事なのはやはり今なのだと思います。とはいえ、10年後を見据えて人生設計をしないとだめだとか言いますが……。

私は子どもの頃に、「しっかりと勉強して苦労をすれば将来に楽になるのだから」と散々親に言われて自由もなく子ども時代を過ごしていました。外食も行かなければ、旅行にも行ったこともない。机に縛り付けられてばかりの毎日です。私立大学医学部に行かせてもらった学費のことを考えれば、仕方がないかもしれません。浪人生時代にバイクが欲しくて、倉庫で時給550円で重い荷物を倉庫の中で車に積んでは降ろすバイトをしていた身ですから、子どもの頃にお金の大切さも我慢も覚えました。

運動会、授業参観や、ちょっとしたお出かけ。そういったものもありません。産婦人科の開業医をしていた父だったので、そんな時間はなかったのでしょう。助産師をしていた母には、「すぐに行くからね」「明日はお出かけ楽しみだね」と約束したにもかかわらず、ドタキャンばかり。そんなときに決まって母は私の顔も見ずに言うのです。
「これからお産があるから無理」
なんだそれ?
息子との約束を守らなった気まずさのもあるのでしょう。私はそんなとき、私よりも落ち込んで泣いている妹をなだめるか、うるさいと怒鳴りつけたこともりました。妹が泣くと、怒られるのは私です。
「お兄ちゃんだから我慢しなさい!」
こんなことになった張本人に怒られるわけです。

■親というのはこうあるべき


「大人は約束を守らない。そんな経験するのも大事なのさ」
「ピュアなままじゃ社会じゃ、やってけないわよ」
同僚に言われたことがあります。

「母親が医師で仕事をしていたら、行事はおじいちゃんおばあちゃんに行ってもらわなきゃいけないこともあるのよ。「運動会で雨天順延になったときに続けて2日も休めないでしょ」
「いや、私が代わりに勤務しますから運動会に行ってください。子どもにとってお母さんは1人だけですよ。今年の運動会は今しかないんですよ!」
私のあまりの剣幕に、同僚は子どもの運動会に行きました。
「先生。ありがとう」

同僚の子どもにそう言われると、代わりに日直をしたストレスも吹き飛びます。
何で私の親はこうならなかったんだろう?
「苦労して医師になって、今を生きているんだから幸せだろう?」
そう親に言われて、子どもの気持ち何ひとつ分かっていないんだなと思います。

私の親は子育ての反面教師なのです。

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