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我が家の庭には山椒が植えられています。この地に越してきて7年。私の趣味でアゲハ蝶の幼虫を育てたいからと庭には蜜柑と山椒が植えられました。庭の手入れも私がしています。幸い春から秋にかけて毎年、アゲハ蝶は私の庭を飛び交い、蜜柑は実をつけ…そんな情景が私の心を癒してくれるのでした。

2020年。年が明けてコロナ禍の影響と人間関係に疲弊し、4月に仕事を辞めました。自宅にいることが多くなり、庭に時間をかけることが多くなりました。そんな5月の初夏。通り雨の中に、私は山椒が実をつけていることにふと気づきました。雄の木がなければ実がならない山椒。たった1本の山椒の木に実がなったのでした。

庭の手入れや観察に没頭しました。そうしている間は、辛いことを忘れられるからです。庭に生きるバッタ、カマキリや蟻を眺めるとみんな頑張って生きている。その一生懸命さがいいのです。私は没頭しました。いえ、没頭しなくては、自分の心が壊れてしまうことに気づいていたから、より一層庭に夢中になっていたのでしょう。

収穫を喜び、筍とわかめとともに味わいました。
こんな辛い山椒の実の葉をアゲハ蝶が食べるのか?
疲れ切った私への贈り物なのか?
2021年も小まめに庭を手入れし観察し、短く咲く花を愛でることができました。雄の木の謎は未だに解けませんが、初夏の通り雨と山椒の実が、あの頃の忘れられないつらい遠い面影をそっと連れてくるのです。

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