【医療コラム】医療も政治も上に立つ者が大事
■ポジティブからネガティブに移行する会話
私の大好きなTV番組「ザワつく金曜日」で、東大生が選ぶ総理大臣になってほしい人ランキングをやっていました。
ブレない。周りに気配りがきく。
といった視点から、様々な人が挙げられていました。たまたま当直で医局で見ていたので、⚫️⚫️はまだ若いだろうとか、◯◯なんていいねーなんて、医局でも盛り上がっていました。ただ、そのときは楽しかったんですが、段々と話は盛り下がることに……。
「さっきもさあ、救急車で来たの発熱だけだって。昼間からダルくて寝ていて、さっき体温計で計ったら38℃だったから救急車呼んでしまいました。すみません。だってさ。胸が痛くて苦しいとか、頭がかつてないほど痛いとかなら救急車呼ぶのわかるけど」
「そういや三重県で、入院にならないような不要不急の救急車は自費で1万円ぐらい聴取するとかしないとか。そういう風な工夫も必要だよね」
会話に熱が込められていますが、ネガティブな話題ばかりが出てくるようになっていきます。
「今日さ、薬局から解熱剤ありません。錠剤も散剤もシロップも坐薬もありませんだってさ。あれってジェネリック医薬品メーカーが、製造過程に問題があったのに端を発しているんだよね。⚪︎⚪︎がありませんとか問い合わせあるたびに仕事が止まるんだよね」
「そうそう。誰も責任とらないんだよね。現場の医師が疲弊するのと何より患者さんが困っているのに」
「本当にジェネリック医薬品は安かろう悪かろうだな。あんなメーカー、なんで国は認可したんだろうな」
こうなるともう愚痴に近い状態です。
「2024年度診療報酬上がったとか言うけど、上げたらその分、いろいろ条件つけられたり締め付けられたりするんだよね」
「医療従事者が日本は8人のうち1人だから、医療従事者の給料上がらないなら景気なんてよくならないよねー」
結局のところ閉塞感のある会話で、会話も続かずにみんなバラバラに仕事に戻っていくのでした。
■教授との会話の思い出
医局で多様性のある医師が集まると政治の話なんかは共通の話題として盛り上がり、ときに盛り下がります。私が大学医局にいたときには、教授はこんな会話を下っ端医師と酒の席ではよく話していました。
みんな医局長に待遇よくしてもらっているか?
バイトが月曜日の人はハッピーマンデーで少なくなるから、代わりにそんなときはバイトに出させてあげたいと医局長も言っていたけど、そうなのか?
と言った会話から、下っ端医師がどういう医師なのか、医局長はどうなのかを教授は探っているのでしょう。表情は笑っているけど目は笑っていません。とにかく私たちに思っていることを話させたいのです。
そして我々の話を聞いた後は、金言があります。
「うちの医局長は品があるよね。外来や病棟、大学、関連病院や他科とも交渉したりマネジメントしないといけないんだよ。それにしっかり勉強している。君たちが仕事しやすいようにしてくれているんだよ。まず見習うべき先輩だよ」
そう言われると医局長が、とんでもなく凄い先生に思えるのです。ついさっきまで私なんて、医局長に「お前なんかやめちまえ」なんて私が犯したミスに対して、理不尽すぎるほど怒られていたのですが。
■医療はきっと変わっていく
飲み会の後、医局長に「教授が医局長な医師を目指しなさいって褒めていましたよ」と報告すれば医局長はすっかり機嫌よくなります。そんな医局長が「一番凄いのは教授なんだよ」と言うので、やはり教授の素晴らしさを再認識するのです。
話しは冒頭に戻りますが、私は池上彰さんに総理大臣になってほしいです。品があり、勉強され、周りに気配りできる。そして何より言葉に力があります。言葉が意識を生み出し、意識が行動を生み出す。思いをどれだけ言葉に落とし込めるかだと思います。
日本はこれから、どの国も経験したことのない少子高齢化社会になります。医療はきっと理不尽なこと、厳しく辛いことだらけになると思います。そんなとき池上彰さんなら、医療従事者の方を向いてしっかりと現状を説明したり、どうすべきかを導いてくれると思うからです。
「大胆予想! 池上彰さんが総理大臣になれば日本の医療はこう変わる」
私の大胆予想は期待しすぎでしょうか?
これぐらいいいですよね。