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原発を最強アイテムにする方法?読了メモ『13歳からの地政学』

本の紹介


高1の兄と中1の妹がたまたま訪れたアンティークショップの古い地球儀に魅力を感じた。その二人を見た「カイゾク」と呼ばれる店主は「7回、自分の話を聞き、その後に出題する問いに答えられたら、この地球儀をあげよう」と提案をする。そこで、地球儀を手にいれるため、カイゾクの話を聞くことになる。

小説形式の平易な文章で、地政学について触れられている。その一方で、かなり国際的に名言しずらいことを小説のキャラクターに載せて断言しており、ストロングスタイルな内容。

例えば、中国は核ミサイルを海中に隠すために南シナ海を必要としているから、侵攻を繰り返し、沖縄も狙っているということをはっきり言い切る。13歳に伝えるには大分ハードコアな物言いで好感が持てる。

後々便利メモ(からのアイディア)

海水の体積ランキング日本は世界4位


排他的経済水域の2次元の資料はよく見るが、海水は3次元であり、日本近海は海溝もあり、体積が大きい。日本は面積は6位だが、体積は4位である。体積があるとそれだけ水産資源や鉱産資源の獲得につながる。アメリカは世界有数の海溝マリアナ海溝を有する。日本は深さ7000m級の日本海溝。
→日本の海水の体積は世界の中でも多いか、少ないか、世界地図で予想。(つまらんか。)

海洋政策研究所HPより

世界の貿易は9割が海

コストの面と陸地だと、税関や国境などロスが多い。飛行機より遥かに、多くのものを運べる。
→問いとして、貿易の際、使われる輸送手段の割合を考えさせても面白いかもしれない。多分情報なければ、ここまで極端にはならない気がする。単元、もしくは授業前に予想させて、学習後再予想して結果発表とかいいかも。

日本海事広報協会より

核兵器が最強のアイテムになる方法


これもかなり過激な物言いだが、説得力がある。

前提として、海に隠せることが必要。
①原子力潜水艦
 (場所が特定できるとそこに核兵器をぶつけられる)
②海中からミサイルを発射できる
③深くて安全な海
→中国はこの条件を満たした海を持っていないため南シナ海を狙っている。

遠くの国と仲良くして、近くの国の脅威に対抗する「遠交近攻」は地政学の王道。日本がアメリカと仲良くするのもそういうこと。

長い陸続きの国境は管理が難しく、領土を守るにも困難が伴う。

→授業で触れても良いものか?核反対!とか思想強い家があると扱うの難しそう。

大国の侵略的防衛心理

・中国、ロシアなどの大国の侵略的行動には自国を守ろうとする心理が強く働く。作中の例えが良かった。白い紙に、小さい赤丸を書き、その赤丸の外側が他国。自国を守るために周囲を侵略し、もう少し大きい赤丸にすれば、◎になり、内側の丸の安全が保証されやすい。だから侵略をするんだ。という理論。
→この作業がもう面白そう。各班に紙1枚配って、この赤丸のエリアは絶対に侵略させてはならない。どうする?という条件で、自由にやらせたら、壁作るやつ、近くの国と同盟を組む奴。侵略してエリア増やすやつ。色々なアイディアが出そう。

アフリカが貧しい理由

アフリカのリーダーが、欧米に金を流すから
 リーダーが何故自国に不利な形で、欧米に金を流すのか。→国内の民族対立が強く、自民族さえ良ければいいから。自民族に都合の良い支援を欧米にしてもらうため?タックスヘイブンを利用。欧米に分割された国境においての民族的対立が続き、貧しい。貧しい国に原材料を作らせ続け、付加価値の低い労働をさせることで、欧米が儲かる。
→これは問いを限定しないと、出てこないな。民族対立をする中で、Aという民族のリーダーになったらどんな政治にする?と聞けば後述のシンガポールの例も出るか。地理でできそうだな。

他民族を乗り越えたシンガポール


建国の父リークアンユーは民族の対立をしないよう政府主導で、マンションには必ず複数の民族が生活するようにし、民族ではなく、シンガポールの国民として優遇する政策などをうち、民族対立による紛争は厳しく取り締まった。その結果、民族間を越えて協力するようになり、シンガポールは豊かな国になった。一人当たりGDPは世界6位。

globalnoteHPより

希望ある実例。紹介だけでも良さそう。

大国に囲まれる朝鮮半島


中国、ロシア、日本に囲まれ、歴史的にもこれらの国の影響を受け続けた。支配されたり植民地になる歴史もある。日清戦争の風刺画は地理的な影響が大きい。


日清戦争風刺画

結果、韓国人として生まれたが、韓国併合で、「ヤマモト」という名前になり、日本敗戦後、南樺太がロシアになったことで、ロシア国籍になった人が実在した。韓国生まれのロシア国籍のやまもとさん。

自国が小国だからこそマーケットを世界に求める必要があった。JYパークは韓国だから生まれた説はある。

勝った国、負けた国


日本は植民地支配をした側の数少ない国。だから被害者の気持ちがわからないというロジックが本作で登場。現在の問題は被害者の国は蒸し返す。日本も被害者で敗者の歴史があるが、復興にネガティブな要素だとして、終戦記念日に。

その他


・少数民族を抱える大国は他国より内側の民族にコストをかけることがある。少数派を管理できないと独立運動などが起きるため。

・選挙を行う利点は、暴力や流血なしに政権をかえられることにある。
・戦争にかったカリスマでなければ選挙なしにリーダーであり続けるのは難しい。逆に言えば、戦争に勝ったことで信頼を得たリーダーは戦争がない状況での信頼獲得ができるとは必ずしも言えない。その点秦の始皇帝はすごい。

・伝統ある王家には、国民を1つにまとめて協力し合えるようにする力がある。

・多くの国では王様と政治家は多忙の国の代表としての仕事をワークシェアしている。日本の天皇、総理大臣、ドイツの首相、大統領も然り。

・安くていいものは人資源の犠牲が伴っているはず。

・情報過多は情報がないのと同じ
・中国の防犯カメラ

感想

知識を持って、思考を広げる、色々な見方を手にいれるというコンセプトがはっきりしていて良い。本の主張もちょいちょいはっきりいう割に、最後にカイゾクが「私の言っていることが正しいとも限らない」とちゃんと保険かけてるのも好き。

地政学をほぼ地政学という言葉、概念に触れることなくなんとなく理解できるという意味ではすごく良い本だと思う。地形、他国との位置関係。気候、あらゆる要因の中で、国として存続しなければならない。

以前、書いた「国は引っ越しができない」ということがより深まる一冊だった。自国内の国民管理をしたがる中国の話は中国っぽいし、中国だからこそなのかな。56民族いたらそら監視したくなるか。伊坂幸太郎のゴールデンスランバーの超強化verが中国という感じ。

その点日本は日本、アイヌ、沖縄くらいの差異しかない。島国なのも相まって民族的には安定した国だなー。

ただやはり中国、ロシア、北朝鮮、過去を引きずる韓国とやはり課題は多い。その見方をクリアにできるという意味で、おすすめの本でした。

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