【時短系料理人19】

『雪女みたいに、息をかけるまでもないわ』
 ママが言った。
 ママは、パパに僕と一緒に殺されて、スープにされて容器に入れられたまま車で運ばれているんだ。

『なぜ』
 僕が聞いた。
 僕は、パパが唇を青くしながら、震える手でハンドルを握っているのを眺めている。

『なぜって。ここ首都高なのよ。あんなに震えていたんじゃ、そのうち、ハンドルを切り損ねるに決まってるじゃないの』
 ママは、冷たく笑った。

『そうだね。ママ』
『ふふふ。ざま見ろって感じね』
『ここで、ハンドルを切り損ねたら、多重衝突事故を起こしかねないし。そうなったらパパの死体はトマトジュースみたいになるよね。僕たちをスープにしたのだから、天罰だ』
 僕は、言った。

 本当に、僕らはパパに悲惨な結末が訪れればいいと願っていたんだ。


 




 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?