松王マサト

熱きクリエイター。松王マサト。文学、イラスト、音楽のジャンルを縦横無尽に駆け巡る。

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最近の記事

1000文字小説(コメディ)/張り紙⇔誤解だらけのマンション

深夜のエレベーター。 俺の両手に、ゴミ袋。 中に、冷凍庫で凍らせた生ゴミが入っている。 大量の。 ここは関東某所。 近くに、ディズニーランドがあるあの街。 それなりに都会だ。それなりにね。 バイクが暴走する音が遠くで聞こえている。 バカども。 中途半端な、都会にはバカが多い。 マンションの住人にも、クソが多い。 エレベーターは、まもなく一階に到着する。 上下する度、きしむ。 秋は隙間風。 今時、建付けの悪いエレベータなんて。 苦笑いする。 「寒い」 体を震わ

    • 1000文字ショート/陰謀論ファミリーの憂鬱(オカルト)

      「ユリコ、電気つけっぱなしじゃないの。何をやっているの?」  ママが帰ってきた。  ママは、怖い顔をしている。  いつものこと。  般若のような顔で、部屋の中を覗き込む。    髪もボサボサで、両方の甲には星のマークと逆さ卍のタトゥが彫られている。  自分で彫ったので、甲はケロイドだらけ。  ママの機嫌は悪い。  極悪。  理由は明白。  家の明かりが外に漏れているから。 「何度言ったらわかるの」  ママが勢い良く開けたので、ドアが酷い音を立てた。 「ギッ」  弟の

      • 1000文字小説(SF)ロボットの惑星

         ボクは、知っているんだ。  オトナたちが、騙そうとしていること。    でも、もう遅い。  シティは廃墟と化した。    ボクはロボット。  人型ロボット。  人間たちが、ロボットたちに、仕掛けた戦争は悲惨な結果を生んだ。  シティを占領していたロボットたちは、全滅させられた。  人間たちも戦争で、そのほとんどが自滅した。    ボクらみたいな人型ロボットも逃れられなかった。  その時、ボクは、たまたま動物パークにいたんだ。  キリンの側に居たのだが、  キリンが長

        • 「1000文字小説(SF)ケンコウタイでございます」

           ミキオが、研究室に入っていく。    アイツが、出迎えてくれる。 「オハヨウゴザイマス」  挨拶してくる。  ロボットとは思えない、ほどに滑らかな声だった。    ミキオは、ほくそ笑んだ。  優秀だ。  俺と同じで優秀だ。  天才ロボット。  「おはよう」  ミキオは挨拶を返す。     ミキオ2号。  ミキオは、そのロボットをそう呼んでいる。    俺様――ミキオは有能なロボット研究者。  ロボット企業の「開発部」の責任者をしている。    毎朝、ルームに入っていくと

        1000文字小説(コメディ)/張り紙⇔誤解だらけのマンション

          1000文字ショート(シュール)/ピエロ

          「先生、恐怖ってさ……」  クニヲが話しかけてくる。  美術室。  棚の上に、マルクスやブルータスの石膏像が置かれているはず。      だが、美術室は真っ暗だ。  理由は後で述べる。   私は美術教師として、この男子高校に赴任してきた。  高校に2名しかいない女教師として、男の子たちの羨望の的となっている。   当然だ。  ぴちぴちの女子大生ではないが、匂い立つような美貌に惹かれぬ男子などいない。  クニヲは、受け持ちの生徒。  エキセントリックな天才肌。何を考え

          1000文字ショート(シュール)/ピエロ

          1000文字ショート(癒やし小説)/夕日のまち」

          「この電車って、どこに向かっているの?」  ルナは聞いた。  ルナは、小学生の女の子。  目の中に入れても痛くない孫だ。  北海道東部の町。  過疎地。  場所によっては牛や羊の方が多いとも聞く。  横浜中華街から、はるばるここまで来た。  ルナには時折、右足を引き摺るクセがある。  医師は“生活に支障は無い”と言ってくれているのだが。  足のことをクラスメートにからかわれて、泣いているルナ。  ルナを元気づける為に、あの町へ行きたい。  そうさ。  俺の命が続くう

          1000文字ショート(癒やし小説)/夕日のまち」

          1000文字ショート(ホラー)/闇バス

          「水奈ちゃん、どうしたの?」  声がした。  前の座席から、ミチコが覗き込んでいる。    いつものように、明るい表情が目を彩っている。  幼なじみの優しいミチコ。 「どうしたの? 水奈ちゃん、顔色悪いよ」 「うん、ちょっと吐き気がして、乗り物酔いかも。だから気にしないで。ありがとう」  水奈は礼を言った。    だが、気分の悪いのは本当だった。  全く解消されそうになかった。  今日は、待ちに待った遠足の日――  クラスメートたちと、担任と目的地に向かっている。

          1000文字ショート(ホラー)/闇バス

          1000文字ショート(ホラー)/いじめ怪談会

          「あんな怖い怪談会はなかった」  Kは、話し始めた。  Kのぬっぺりとした顔は、不気味だ。  存在そのものが、こっちを不安にさせる。   彼は今、怪談師をしている――その業界では、ちょっとは知られている。 「自分で言うのは、ちょっと恥ずかしいが、怪談に関しては誰にも負けない。譲れない」  話し続けるK。 「他の怪談師同様、怖さにも免疫がある。だから、ちょっとやそっとじゃ怖いなんて思わない」    巷に溢れる怪談が、作り物に見える。  怪談師の怪談で本当に怖いものなんて

          1000文字ショート(ホラー)/いじめ怪談会

          1000文字 ( ギャグ)/変態課長を懲らしめろ

          「ぺっぺっぺっ」  未奈子は、唾を吐いた。  テーブルには、茶碗が円形に並ぶ。    唾を入れた茶碗。  これは、課長Mのもの。  コイツは、セクハラ&変体&露出狂だった。  全ての女性社員に嫌われていて、未奈子が最大の標的。 (狂人M)  ケダモノと言ったら、本物のケダモノに申し訳ないほどの男だ。  チビデブ。  ハゲチャビン。  この会社では、未だに女子職員にお茶くみをさせている。  男尊女卑。  ブラック企業。  クソ会社。    (バカめ)  未奈子はニヤニ

          1000文字 ( ギャグ)/変態課長を懲らしめろ

          1000文字(恐怖コメディ)/恐怖症に取り憑かれた男

          「アイツは、恐怖症に取り憑かれているからな」  俺は呟いた。  親友の武藤は、以前から様々なものに取り憑かれていた。  俺は、武藤のアパートに向かっている。   アレルギー体質。  バービー人形の収集。  ファミコンのソフト(使用不可)。  呪物など、よくわからないもののコレクション。  そして、もっとも顕著なのは 『恐怖症』である。  武藤は元々、優秀な学生だったのだが、突如、現れた『恐怖症』のせいで、エリートコースから陥落した。  何が切っ掛けだったのだろう。  

          1000文字(恐怖コメディ)/恐怖症に取り憑かれた男

          1000文字(癒し小説)/ADHD・雨の後楽園ホール

          「信じられるか?」  書き込みだらけの手帳を見せる。 『漢方』と記されている。  今日は、通院日だった。  漢方医院。  重度のADHD。 「何があったの?」  美彩が微笑む。  水道橋駅から、後楽園ホールに向っている。  美彩が首からかけているタオルには、応援しているボクサーの名前が入っている。    この手帳は、今年に入って5冊目。  汚い手帳は、俺そのもののよう。   再生紙のロゴマークが入っているが、年に5冊も手帳を使ったら全て台無し。  世界中の絶滅危惧種の動物

          1000文字(癒し小説)/ADHD・雨の後楽園ホール

          1000文字(癒し小説)/やすらぎの香り・思い出のお茶

          「この香りだ」  芳香。   舌が喜んでいる。  唾が溢れてくる。  目を瞑ると、新緑の匂いがイメージを駆り立てる。    白い茶碗。お猪口のようで洒落ている。  茶の滴を再び口に含む。  東京。  真っ白なシャツの日本茶ソムリエ。  洒落た店内。  こんな都会で、あの新茶の味に出会えるとは思わなかった。  偶然、降りた地下鉄の駅。  知らない駅。  出張の途中。交渉はいつも通り。  おべっかばかり。  重役に頭を下げて、ようやく取り付けたビジネス。  顔色を窺うのは疲れ

          1000文字(癒し小説)/やすらぎの香り・思い出のお茶

          1000文字(パロディ小説)/猿の手(あの話だよ)

          「なまら“呪われてる”らしいべさ」  漁師は、言った。     机の上には、猿の手。  北海道の漁村。釧路。この何もない町は、廃村同然。  デパートも潰れ、観光客もいない。  ヒゲだらけの漁師はいいヤツだが、酒を飲むと幾ばくかセコくなる。  漁師は、この“猿の手”を売りつけるつもりだった。    「これ、300円で買わないか」 「300円?」 「缶チューハイを買うんだ」 「そうか。缶チューハイならあるよ」  主人は、冷蔵庫の缶チューハイを注いでやった。   「猿の手という

          1000文字(パロディ小説)/猿の手(あの話だよ)

          1000文字(ホラー)/殺すプレ2(こすぷれ2)

          「また、念入りにペニスを洗っているのかしら」   私は耳を澄ませた。  ノブヤのペニスは大きい。それだけが取り柄だ。  シャワーの流れる音。  脱衣所にドルガバのバスタオルがかかっている。    私の両手は血塗れだった。    ロッジの壁。  多種多様のコスプレをした美しい少年少女たちの写真が大量に貼られている。  ゴスロリ。  エ●ンゲリオン。  アキバ系のディープなオタク風。 「本当に好きなのはこっち」  反対側の壁に、同じアングルの写真。  コスプレした少年少女たち

          1000文字(ホラー)/殺すプレ2(こすぷれ2)

          超こわくない話(ギャグ劇団笑)/宇宙一怖い怪談師

           今日は怪談会に来ている。  怪談会は初。  そんなもの時間と金の無駄。  幽霊は信じない、幽霊で金儲けする怪談会など嫌い。  うさんくさい。  そもそも全く怖くない。    場所は、某処刑場跡。  今は公園だが、昔はお侍が「バタバタ首を斬られて、生首がゾロゾロ」並んでいたという。  これを目を輝かせながら教えてくれたのはミポリン。    ミポリンは恋人。  かわいいが、目つきが異常。  ホラーマニア。  鼻ピアス、人体改造マニア。大人のオモチャマニア。   見世物小屋

          超こわくない話(ギャグ劇団笑)/宇宙一怖い怪談師

          超こわくない話(ギャグ劇団笑)/恐怖が足りない

           深夜。 「恐怖が足りない」  ヒカルは、自宅を抜け出すと公園に向かった。  ヒカルは怪談師。  明日は怪談最恐トーナメント決勝戦。  去年は、敗退。 「ヒカル。私には勝てないわよ」  優勝したキョウ子のバカにしたような笑みが、浮かんでくる。 「キョウ子め」  今年こそは、ライバルのキョウ子に勝ちたかった。 『赤ん坊の首』  これが明日披露する怪談の名前だった。   今の今まで、リハーサルをしていたのだが、著しく完成度が低かった。  ヒカルは、怪談で使う"キューピ

          超こわくない話(ギャグ劇団笑)/恐怖が足りない