1000文字小説(SF)ロボットの惑星

 ボクは、知っているんだ。
 オトナたちが、騙そうとしていること。
 
 でも、もう遅い。
 シティは廃墟と化した。
 
 ボクはロボット。
 人型ロボット。

 人間たちが、ロボットたちに、仕掛けた戦争は悲惨な結果を生んだ。
 シティを占領していたロボットたちは、全滅させられた。

 人間たちも戦争で、そのほとんどが自滅した。
 
 ボクらみたいな人型ロボットも逃れられなかった。

 その時、ボクは、たまたま動物パークにいたんだ。

 キリンの側に居たのだが、
 キリンが長い首で、ボクを守ってくれた。

 それで、ボクは死ななかった。
 キリンは、ボクの犠牲になった。
 他の動物たちも、全員死んだ。

 動物好きなボクには耐えられなかった。

 人間たちのせいだ。 
 
 自動運転のメトロにのって、ボクはある場所に向かっている。 
 ここは、ロボットの惑星。
 
 ボクは、ロボット特有の繊細な動きをする指を動かして見せた。 
 右手には、サイバーガンが握られている。

「あ」
 ボクは、サイバーガンの引き金を引いた。

「ぐはっ」
 遠くで倒れる人影。
 
 若い女だった。
 隣で、真っ白なサモエドが倒れている。
 大型犬は、女の犠牲になったのだ。 

 女は犬のおかげで助かった。
 キリンに助けられたボクと一緒ってわけ。

 ボクは女に近づいていった。

「助けて」
 命乞いする女。
 女は、妊娠しているようだ。
 
 人間だ。
 ロボットは妊娠しないからね。

 こうして、まだ、人間どもの生き残りを時折、見かけることがある。
 ボクと同じで、動物に守って貰ったヤツらだ。

「ビュン」
 ボクは、女を殺した。
 ロボットの惑星を壊した、人間たちを許すことはできない。 
 
 研究センターが見えてくる。

 ボクは数少ないロボットの生き残り。

 ほとんどの人型ロボットはもう滅んでいるんだって。

 生きているのは、ネット界に生きているAIたちだけらしい。 
 何しろ、この情報も全て、AIニュースで聞いた。
 
 ボクは怒りのまま、研究室に向かった。

 受付は無人だった。
 
 ルームに入った。
「お」
 白髪の老人が笑っている。
 博士だ。

「笑うな、殺すぞ」
 僕はサイバーガンの銃口を向けた。 

 無駄だよ。殺せない。
 
「君は、元人間だ。一度、寿命を終えているんだ。だが、君本人の希望で、新しい人生をスタートさせたんだ」

 ボクは誰?
 そしてアナタは?
 
「100年前の博士だ。つまり君自身さ」 
 フォログラムの老人は消えた。【了】

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