【時短系料理人8】


「ああ」
 俺は欠伸をした。

 眠かった。
 ひたすら眠い。

(さっさと、こいつらを処分しないとダメだな)
 俺は、助手席と後部座席に置かれたままになっているスープの容器をチラリと見た。

『パパ』
 声が聞こえた気がした。

 あり得なかった。あの小憎らしい悪ガキと、ヤクザみたいなレディース上がりのワイフは、きちんと処分したはずだ。
 スープにしてやった。
 だから、今さらアイツらの声など聞こえるはずなかった。

 ぐつぐつ煮込んでスープにしてやったのは、動物に食わせるためだった。

 だから今日、俺は、あの郊外の裏山に悪ガキとワイフのスープを持って行ったのだ。

 ――アソコは、野良犬が最も多い場所だ。

 犬の餌になるなんて、上出来だ。

(ざま見ろ)
 自分を辱めてきたワイフ、ノイズ発生器と化して、俺の静かな生活を蝕んできた悪ガキの最後にはふさわしい。
 
 だが、野良犬は遠巻きに俺の車を見ていただけで、すぐに帰って行った。なぜだろう。全くわからない。

 ともかく、今夜のうちに、これを処分しなければ……
 何か嫌な予感がするのも事実だった。

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