京増修史さんの演奏会を拝聴 part.1
6月5日(日)、福島県郡山市のYAMAHAにて開催された京増修史さんのピアノ演奏会を拝聴に行ってきました。
明るく開放的でキレイなYAMAHA郡山店の1階に、コンサートサロンがあります。
キャパシティは、ソーシャルディスタンスで20人ほどだったでしょうか。
ソーシャルディスタンスをとらなくても、キャパは50人未満と思われる小さなサロンで、まさにショパンが好みそうな規模でした。
自由席でしたので、京増さんの手元とペダリングがよく見える最前列、京増さんの目の前のお席へ。
ピアノから2mほどでしょうか。運指までもチェックしつつ拝聴できました。
記事が長くなりそうなので、いくつかにパートを分けながら執筆したいと思います。
とはいえ、感動ポイントが多く、感動の上に感動がどんどん上書きされていくので
ここをこう弾くんだ、とか、ここが素晴らしかった!と思ったことがたくさんあるのに、その全てを記憶し切れていません…^^;
執筆しながら、記憶を引き出したいと思います。
京増さんの今回のプログラム
ベートーヴェン
ロンド・ア・カプリッチョ「なくした小銭への怒り」Op.129 ト短調
ピアノソナタ第28番 Op.101 イ長調
ショパン
ピアノソナタ第2番 Op.35 変ロ短調
舟歌 Op.60 嬰ヘ長調
アンコール
ショパン エチュード Op.10-1
(こちらの1曲のみです)
前半はベートーヴェン2曲:なくした小銭への怒り
京増さんがステージに登場し、ご挨拶。
1曲目「なくした小銭への怒り」は、次々と転調を繰り返しながら展開していく軽快な曲ですが、
小さなサロンでの演奏会のオープニングに相応しい選曲ですね^^
この副題について、京増さんから
「ベートーヴェンがつけたものではなく、第三者がベートーヴェンの自筆譜にあとから書き込んだもの」
とクラシックファンにはお馴染みのエピソードの解説があり、演奏に入られました。
左手の和音の上に右手の演奏が軽やかに乗っていて、イン・テンポでのペーシングや主題の際立たせ方は、さすがです。
また、古典派ならではのトリルも、みずみずしさがあり輪郭を持って浮き立っていました。
YAMAHAらしいブライトな音色を、京増さんの卓越したテクニックにより一層引き出されたと感じます。
この曲は、私も練習したことがありますが、楽譜の見た目よりも実際の難易度は高い印象です。
私自身、古典派よりもロマン派が演奏しやすいので、より一層難しく感じているという理由もありますが^^;
左手の和音が軽やかに進行し右手のメロディーとのバランスがよくとれていて
まるで小銭が転がっていくような、その愉快な副題を彷彿とさせる楽しげな風景が浮かんできました。
京増さんの演奏に関して、Chopin Institudeでアーカイブされているショパンしか聴いたことがなかったのですが、
今回、京増さんのベートーヴェンを初めて拝聴し、ベートーヴェンとも大変相性の良いピアニストであると分かりました。
それは、2曲目に演奏したピアノソナダ第28番で確信へと変わります。
ベートーヴェン2曲目:ピアノソナタ第28番
ここでも、京増先生(もう先生とお呼びしたい)からの解説。
愛情深い和音から始まるソナタ形式の第1楽章
行進曲風の第2楽章
フーガを用いた第3楽章
と、それぞれの楽章の特徴を簡単に紹介なさっていました。
このピアノソナタ第28番、とても大好きな曲の一つで、演奏会前日にはホロヴィッツや石井琢磨さんなどの演奏を聴き比べ、
京増さんはどのような演奏されるのだろう、と想像しながらワクワクしていたんです。
そうして、第1楽章の冒頭から、想像以上に心を持っていかれることに…
ふんわりと空気のように軽くありながらも、やわらかく慈悲深い音色。
軽やかなのに暖かく深い愛情を感じるような、そんな音色は非常に京増さんらしい始まり。
この最初のタッチでハッとさせられて、惹き付けられ、
「この音色が聴きたかった」という感動が瞬時に襲います🥺
特に、この第1楽章においては、第2主題に入ったあとは、深い呼吸を交えながら演奏されていました。
このあたりも、呼吸とともに音楽を奏で、息を吐くときにバスを響かせクレッシェンドからフォルテに向かっていました。
その後、ふわっと第1主題が復帰するのですが、凄く好きな流れです。
「なくした小銭への怒り」のときとは打って変わって、崇高で幻想的な空気をこの第1楽章で見事に作り上げていました。
(第1楽章の演奏で、完全に心奪われました🥺)
続く第2楽章では、行進曲のような軽快で力強いリズムが特徴的ですが
水を得た魚のように生き生きとしていて、躍動感がある響き。
そして、第3楽章。
寂寥感のある旋律を、優しさや愛情深さ伴った音色で奏でていきます。
次々と自由気ままに展開しながら進んでいく中、ポリフォニーへの意識、
崇高な和音、煌びやかなアルペジオなど、最後まで聴衆の高揚感を失わせないものがありました。
少なくとも、私は、第1楽章から第3楽章まで、様々な感情を自分の中に展開し、その感情により次の展開への高揚感を持ったまま、20分間聴くことができました。
ホロヴィッツにも引けをとらない繊細さや美しさ、幻想的な空気感は、京増さんの魅力です。
ベートーヴェン弾きとしての京増修史さんに期待
ショパンだけではなく、京増さんはベートーヴェンも大変魅力的です。
ショパン弾きならぬ、ベートーヴェン弾きとしての側面は新しい発見でした。
ショパコンでの27-2があまりにも素晴らしくて、京増さんはロマン派のピアニストというイメージを持っていたのですが、
京増さんの演奏によってベートーヴェンが好きになるほど、素敵な演奏でした。
以前、藤田真央くんが「古典派はピアノの基本なので、モーツァルトができてショパンができる」
というような趣旨のことを話していて、
根本的にテクニック面で卓越していらっしゃる京増さんだからこそ、
ベートーヴェンもこうして心奪われる演奏を聴衆に届けることができるのでしょう。
これからは、ショパン以外にも色々挑戦していきたいとインタビューでお話なさっていましたから、
古典派はもちろん、ラヴェルやプーランクもぜひぜひ聴いてみたいものです。
モーツァルトも聴きたいです🥺
後半のショパンについては、part.2に執筆いたします。
※京増さんの演奏が好きという方、クラシックの魅力を広めたいという方など、記事のシェアはご自由に行っていただいてかまいません。