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181107 ラーメン二郎に関する覚え書。 そして、二郎に魅せられたジロリアンによる宗教的とも言えるラーメンに関する一考察。

さて、二郎系と言われるそのインスパイアについては色々と述べてきた「ラーメン二郎」だが、しばらく本家本丸のラーメン二郎を訪れていなかったので、その核心にはいまいち触れてこなかった。

しかし、今回とうとう本家ラーメン二郎、その一部についてレポートしようと思う。かく言う僕は、ラーメン二郎に出会って、はや10年弱。
宗教的魔力で多くの人を虜にするラーメン二郎とはいかなるものなのか、とくとご覧頂きたい。

ラーメン二郎は、東京・三田の慶應義塾大学横の本店を筆頭に都内を中心に39店舗ある全国きってのラーメングループ。ラーメングループであって、ラーメンチェーンではないというのが実はポイント。各店舗、本店の「型」は継承しながらも、独自の進化を遂げており、店舗ごとに圧倒的な個性を持つ まさに「ラーメングループ」なのだ。

この「型」の核と言える要素が、麺・豚骨スープ・醤油・提供スタイルである。麺は各店舗がオリジナルで自家製したものが使用されるが、共通してフワッと香る小麦の豊かな香りを楽しめるのが特徴。豚骨スープについても店舗ごとに乳化の度合いが異なったりするが、臭みのないまろやかな味わいが特徴である。

そして醤油。豚骨スープで割り、味の肝となる存在だ。こちらは全店共通の醤油を使っていることがよく知られている。

二郎好きなら一度は見たことがあるであろう「二郎専用しょうゆ」。この醤油が、いわゆる「二郎の味」を支える屋台骨なのである。

最後の提供スタイルについては後述するとして、実際の店舗でその様子を確認しよう。

今回訪れたのは、「ラーメン二郎 中山駅前店」。横浜の中山駅近くにある、本店で修行した店主が営む本店直系店。

ちなみに入り口の自販機は、

このように怒涛の黒烏龍茶の品揃えである。
これも二郎の特徴で、どの店でも必ず店前には大量に黒烏龍茶が並んだ自販機が設置されているのだ。まあそのワケはお分かりの通りである。

さて、いざ店内に入ろう。

と言っても、残念ながら店内の写真はない。
別に写真禁止ということでもないのだが、ラーメン二郎の店内には独特の緊張感が張り詰めているのである。何に由来するのかは定かではないが、写真をバシャバシャ撮れるような雰囲気ではない。とにかく写真はラーメンのものに限らせて欲しい。これが二郎を愛する「ジロリアン」の間での暗黙の了解な気がする。

さて、メニューはさほど多くない。
基本的には「小ラーメン」「小ラーメン豚入り」「大ラーメン」「大ラーメン豚入り」。この4つが二郎スタンダードのメニュー体系である。

「小」というが、通常のラーメン店の特盛くらいは麺の量がある。すなわち、大ラーメンなんて、もう大変だ。初心者は小ラーメンでも食べきれるか、かなり怪しいところ。

「豚入り」というのは、平たく言えばチャーシューが追加されるという意味である。ただ、「豚」と表現されることからも分かる通り、ただのチャーシューではない。ここも初心者は豚入りにしない方が無難である。

さて、プラスチックの食券を購入し、席が空いてなければ列に並ぶわけだが、ここで注意して欲しいのは、時折この並んでいるタイミングで食券を見せなければならないことだ。

ラーメン二郎はどの店舗でも一度に大鍋で茹でる麺の量が決まっている。一度に6人前しか茹でないのだ。これは今まで20店舗ほど行ったけど、どこの店舗もそうだったから恐らく全店共通なのだろう。逆に言えば、6人前は茹でるため、仮に席について待っているのが2人だとすると、残りの4人分は立って並んでいる人の分を茹でることになる。だから、並んでいるときに食券を見せて、小なのか大なのかを伝えるのだ。

ちなみにこの6人前の周期を二郎用語では「ロット」と呼ぶ。で、並んでいる人の麺を茹でたとしても、提供前に麺が伸びることは絶対にない。なぜなら、茹でてる間に1つ前のロットのお客が席を立つように絶妙な時間配分でオペレーションがなされているからだ。
なので、多くの店舗では座席数は6の倍数になっている。6席、12席、18席といった具合。たいてい12席なのだが、12席の場合はテンポよくロットが回されることで、効率よくお客を捌いている。なんたる神業といつも思う。

あと、ちなみに麺を半分や少なめにしたい場合は、この麺の量を店員が確認するタイミングで自己申告しないといけない。これ以後に申告してもキッパリ断られるので要注意。

さて、いよいよ席についたら、水をセルフでとってきて、あとは主役の到着を待つのみなのだが、ここであの有名な儀式がある。いわゆる「コール」というやつだ。

二郎に行くと、店員とお客の間でこんなやりとりが行われる。
店員「ニンニクいれますか?」
お客「野菜ニンニクあぶら辛めで」とか、
お客「ニンニク野菜増し増しで」とか。

要はトッピングを店員が聞いているのだが、「トッピングは何にされますか?」と「ニンニクいれますか?」が同義の言葉として二郎の世界では扱われる。不思議でしょ。で、このルールは店内のどこにも書いてない。

ちなみに無料のトッピングは「野菜」「ニンニク」「あぶら」「辛め」の4種類が基本である。店舗によってはオリジナルのものがあったりするが、基本はこの4つだ。野菜は、もやしとキャベツがてんこ盛りになってやってくる。ニンニクは、すりおろしたニンニクがこれでもかとドンと追加。あぶらは、スープの煮込みの際に発生した豚肉の背脂をトッピング。辛めは、醤油ダレを上からかけてくれる。

で、さらに注意なのが、「増し増し」というトッピングの特盛は受け付けてる店と受けつていない店がある。受け付けてない店で増し増しというと、少々ややこしいやり取りが店員側と発生する可能性もあるので気をつけよう。
あと、何もトッピングが要らない場合は「そのままで」と言えば、そのまま出てくる。「ニンニクいれますか?」と聞かれたからと言って、素直に「いりません」と言うと、他のトッピングは?となるのでご注意を。まあ日本語的には何も間違ってはいませんが、二郎の世界ではその受け答えはややこしいので控えるのが得策。

ついでに言えば、このコールを待っている際にスマホをいじるのは控えて頂きたい。「ニンニクいれますか?」は店員がこちらを手で指しながら問われることが多い。すなわち、よく前方に注意してないとコールに気づかないのだ。そうなると、せっかくの絶妙なタイミングでのオペレーションが台無しだ。カウンターでスマホは個人的にはご法度である。

さて、こうして数々の二郎カルチャーを乗り越えて、ようやく麺をすすれる。いやはや、ここまでややこしいとラーメンを食べることに有り難みを感じてしまう。

さて、これは「小ラーメン豚入り」に「野菜あぶら」である。
中山駅前店の場合、豚入りにすると、

こういう豚肉の塊が5つほど乗っかってくる。

ちなみに、見てお分かりの通り、中山駅前店は比較的醤油強めのスープに典型的なチャーシュー的な豚だが、

例えば、これは「千住大橋駅前店」のもの。全然違うでしょ。

そしてこれは僕が一番愛している「ひばりヶ丘駅前店」のもの。
どの店も前述の通り、スープや豚にオリジナリティがあるが、ちゃんと二郎の「型」にはハマっているのだ。

そして、味はもう、食べて頂くほかお伝えのしようがない。
ただ、1つ言えるのは、適度に「暴力的」であるということ。悪いが、無化調とか天然由来とかそういう大人の世界とは無関係のところにある。人間の脳みそと直感を直接揺さぶる強引さこそが「二郎」というジャンルであり、そういうのが嫌いな人は行かない方がいい。それが両者にとって最も建設的である。

さて、書こうと思えば、各店舗の店主の出身店から分析される、流派や体系図についても書けるのだが、さすがに書きすぎたようである。

さらなる奥深い二郎の世界はまたの機会にとっておくことにしましょう。

あ、そうだ。食べ終わった器はカウンターの上に置き、自分の前の卓を備え付けのタオルで拭く。これが二郎を後にする際のマナーでございます。お忘れなきよう。


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