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よく締め切り等々、なんらかの理由が絡まりながら世に製品は生産されていきます。そうした言ってみれば‘縛り’=制限について考えます。

制限を設ける、または設けられた方が作品クオリティの担保が計られやすいのは、至極真っ当である根拠として否応なしに世間の目に晒される強度に耐えられるモノを前提にするからだと推察します。
‘100パーセント好きなように作れた’
という作り手側のコメントを稀に見聞きしますが、その瞬間私はどちらかと言えば懐疑的になります。何故ならその作り手は自分がまず満たされたと宣言したことにより、他者との距離を無意識でも設けたのだと覚られてもおかしく無いからです。
ここでの他者とは主に購入する立場のユーザー側を意味します。

アメリカ映画、概ねハリウッドではファイナルカット(最終編集権)はプロデューサーが持っています。
そのため最初の関係者披露用の完成版0号からモニターによるサンプリング試写の頻度を重ねて改善を図り続けたものが、結果的に劇場公開される流れとなります。
監督的に仮に思い入れのあるカットやシーンも公開時にカットされている事は日常的なのです。これはヨーロッパでもファイナルカットをプロデューサーがもつケースは稀ではありません。
日本の場合、編集は監督に確認を取りながら、製作サイドは穏便に進めていきます。
監督委託の契約書を結ぶケースは莫大な制作費がある作品を除いては口頭のみが慣例です。完全ドライは成立しにくいのです。

映画を完全にビジネスと捉えるアメリカと捉えきれない日本の差が、そのまま映画振興の差になっています。
それが観客動員の数字に反映されます。
大手シネコンの基本当日鑑賞料金は1,900円です。日本の鑑賞料金は先進国の中でも高額です。
総じて映画は観るけど、映画館では観ない。
そのいつからか固定化した日本の映画鑑賞スタイルから料金設定はそれなりの価格とされ、例えば郵便料金の上昇理由は必ず利用者減少によりという理由が繰り出されるケースと似ている感があります。

確かに作品クオリティと社会インフラの変化は分けて考える必要があるにせよ、こと映画について世に出されていくフローが欧米との比較からも伺えるのは、制限を乗り越えていけるパワーをもった作品が生み出されるシステムが脆弱なために、どうしても無難な選択をせざるを得ないというのが様々な立場において共通認識になっています。
リスクをとらずに一定の成果を出す方法はないだろうかとする一種合理的なようにも思える考え方ですが、果たしてその方法論は人の心を打つ何かになるのか、これは正直疑問です。

クリエイティブと市場を繋げるものを制限と捉えてみる上で、私自身もこれまでのキャリアを活かしたアプローチに踏み出す時と考えております。
この制限と対峙することがリスクなのです。相撲で例えるならば四つに組む、レスリングならばグラップリングでしょうか。それはさて置き、間もなくそんなお話しをさせていただくタイミングを図っているところです。

【インフォメーション①】
晩夏から晩秋にかけて、上映が続きます。最寄りの映画館をぜひお訪ねください。

【インフォメーション②】
下関名画座 次回上映作品
■上映日程 
第16回 2023年9月17日(日) 
「第三の男」(1949/イギリス/105分) ※吹替版上映
原作:グレアム・グリーン   
監督:キャロル・リード
出演:ジョゼフ・コットン 
   オーソン・ウェルズ 
   アリダ・ヴァリ
音楽:アントン・カラス    
内容
第二次世界大戦直後、米英仏ソの四か国による分割統治下にあったウィーンに親友のハリー・ライムを訪ねてきたアメリカ人作家のホリー。だが、ハリーの家に着くと守衛からハリーが交通事故で死亡したと告げられる。腑に落ちないホリーはウィーン中の関係者にあたり、真相究明に奔走する・・・    
■タイムスケジュール
1日4回上映実施いたします。 
①10:30  ②13:30  ③16:30  ④19:30
それぞれ上映後は5分程度の作品解説あり。        
■チケット 
前売り1,100円 当日1,300円
※映画チケット購入者には当日有効の駐車場3時間無料
※シーモール1Fインフォメーションカウンターで販売中
■問合せ 山中プロダクション(09082474407)

光と影の構図、
鮮やかなロングショット
斬新なカメラポジション
キャストパワー
こんなにも堪能できる歴史的作品。

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