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誰も気づかなかった 長田弘

告白をいたします。
先に、もう一つ同じタイトルで記事を書いていたのですが、あまりに長田弘さん(の作品)への想いが溢れすぎて表題作品の感想文ではなくなったため、、その記事についてはいずれまた、別記事として公開をしようと思います。

今は、そのくらい長田弘さんが好きだ、ということだけ、言っておきたい。
そして、没後5年にして新刊を届けてくれたみすず書房の皆様に心から感謝を申し上げたい。美しい本を、本当にありがとうございます。

告白をいたします。
この新刊『誰も気づかなかった』は5月1日発行になっている。私は、これほどに長田弘さん(の作品)への愛を語っているくせに、昨日本屋へ行くまで、新刊が出たことを知らなかった。馬鹿野郎、と自分を責めながら買って、ゆっくり時間をかけて読んだ。

一度読み終わったところで、本を閉じて表紙を眺める。
昨日買ったという事実に反して、ずっと、私の手元にあったもののように思えた。

長田弘さんの詩は、いつもそうなのだ。
初めて読むはずなのに、ずっと昔から、繰り返し繰り返し読んできた親しい一編のように思える。

一方で、目が覚めるような発見もある。

単純な言葉。
一切の難しさが無い、言い回し。
短い一文。
なのに、たったこれだけのこと、どうして言われるまで気が付かなかったんだろうと、心から驚く。
これは長田弘さんの詩の、恐ろしさだとも言える。「完成」がそこにあるようにも思えるから。

『誰も気づかなかった』には表題の一編の詩の他に、『夜の散文詩』という題でまとめられた5編の散文詩が収録されている。(それぞれ、異なるところで連載されていたとのことだ)

詩を通して旅をうたうのは長田弘さんの詩の特徴の一つだ。それが、実在する場所か、そうでないかはあまり問題ではない。でも、読んでいるうちに、そこへ行きたくなる。行って、自分の目でそこを見てみたいと思う。

新しい発見がそこにあるような気がするのではなく、私はその場所を知っているような気がするのだ。行ったことが無い場所なのに、知っている気がする気持ちの落ち着かなさは、その場所に行くことはないだろうと予知するさみしさなのかもしれない。

奇しくも、『夜の散文詩』のうちの一編である『静かな闇の向こう』という詩が、本の中での出会いについての詩であった。

詩の引用はしない。
ぜひ本を、確かめてほしい。


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