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KPOPアイドルにとって成功とは何か?オタクの視点から韓国の音楽産業を捉える。#韓ドルオタクとボカロP

アジア発の音楽でありながら、日本や中国といった周辺国にとどまらず欧米にも多くのファンを獲得しているKPOP。不安定な文化産業において、コンスタントに起こっているようにみえるアイドルの商業的成功はどのような仕組みに支えられているのでしょうか。今回は、、オタク目線からKPOPアイドルの戦略や韓国の音楽産業をみていきます。

対談参加者

片瀬:文化社会学を勉強中のボカロP。音楽は好きだが、アイドルとは無縁の生活を送ってきた。

夕:片瀬がKPOPについてわからないことがある度に質問攻めにされているオタク。最愛のグループはDKB。

チャート上位を取ることが多くのメリットをもたらす構造

片瀬「日本ではDL配信やサブスクの普及でCDが売れなくなった一方、「モノ消費からコト消費へ」の流れでフェスなんかに重きを置くようになっていったから、音楽自体を売るということは未だに難しさがあるよね。韓国でもこういうデジタル化に伴う構造転換ってあったの?」

夕「韓国は2003年にデジタル市場がCD売上を上回ってて、今は完全にサブスク大国って感じだね。2000年代前半から既にサブスクリプション型の音楽配信サービスがあったっていうのもすごいんだけど、国産のプラットフォームがたくさんあるのは特徴的なところかな」

片瀬「SpotifyとかApple Musicみたいな世界的なプラットフォームのシェアは低いってこと?」

夕「そうだね。ごく近年はYouTube Musicがシェアを急拡大していて、2022年10月時点では1番になってるんだけど、2位以降をみると「Melon」「genie music」「FLO」「NEVER VIBE」と国産プラットフォームが続いてる。(*1)」

片瀬「なるほど。例えばSpotifyだと公式プレイリストが豊富みたいなプラットフォームごとの特徴があったりするじゃない。KPOPでもそういうストリーミング中心ならではの聴き方ってあるの?」

夕「韓国国内の一般についてはよくわからないけど、KPOPのオタクはチャートをすごく意識するね。」

片瀬「そうなんだ。日本だと一時期握手券を封入したアイドルが上位を独占してたからチャートを見る習慣がなくなってしまったんだけど、韓国ではみられてるのかな?」

夕「多分ね。例えばMelonのアプリは開くとまず出てくるのがチャートらしくて……韓国の電話番号がないと登録できないから自分で見たことはないんだけども」

片瀬「それはなかなかローカルだね。そのおかげで純粋な国内のデータだけがとれるんだ」

夕「みんながチャートを見ているのもそうなんだけど、大事なのはチャートの順位が音楽番組の出演に関わってるところなんだよね」

片瀬「そうなんだ」

夕「音源チャートっていわれるのがストリーミングの再生やDL数を反映してて、音盤チャートがCDとかフィジカルの出荷数や販売数、特に初動売上っていって発売1週間後の売上なんかを反映するんだけど、そういいうのを見てテレビ局がオファーかけていくらしいのよ。昔の「ザ・ベストテン」に近い感じで、順位が低い人たちから歌っていって最後の方に1位が出てきて表彰もあってっていう」

片瀬「なるほど。思えば日本だと「ミュージックステーション」が中心になってからチャート基準の音楽番組って主流じゃないね」

夕「確かに」

片瀬「推しのアーティストをチャートに入れれば音楽番組っていうメディア露出が生まれるし番組のトリになれたらステータスにもなるわけだ」

夕「そうだね。もちろん順位だけを反映してオファーかけてるわけじゃないと思うんだけど、音楽番組の放送画面を見てるとその週のチャートとかMV再生回数ランキングを流してるから、人気を可視化する仕組みがたくさんあるのは間違いなくいえるかな」

例えるなら紅白が3回あるような感じ。音楽祭・音楽賞の影響力

片瀬「他には何か音楽番組みたいに音楽シーンを代表するというか、重要な役割を持っているイベントとかメディアはあるの?」

夕「年末の音楽祭とか音楽賞の授賞式がそれにあたるかな」

片瀬「確かに賞は大事そうだね」

夕「例えるなら紅白歌合戦が3回あるような感じで、韓国の地上波放送3社がそれぞれ年末になると音楽祭を開催するんだけど、そこに出演できるかは各放送局の音楽番組でどのくらい1位を取れたとか放送点数が関わってくるのよ。もちろん事務所の力もあるんだけど」

片瀬「普段からチャート上位をとって音楽番組に出るのがここまで関わってくるんだ」

夕「そう。基本的には音源とか音盤のチャートを基準にしてるから、普段から人気なグループとして評価される」

夕「あと音楽賞の授賞式も大きいね。一番大きいのは「MAMA」っていうんだけど、巨大企業のCJグループが持ってるエンターテイメント企業のCJ ENMが主催しててMnetで放送される」

片瀬「KPOP関連の放送はかなりMnetでやってるよね。Produce101みたいなオーディション番組も」

夕「韓国アイドルがデビューして「目標は何ですか?」とか聞かれたときにMAMAの大賞とか授賞式に出ることをあげたりする」

片瀬「なるほど」

夕「で、Mnetはいろんな国のケーブルテレビで観れるようになってるからその様子も世界中で観れる」

片瀬「グローバルなファンにもアピールできる場だね」

夕「まあステージ映像の多くはどのみち公式からYouTubeに上がるんだけどね」

片瀬「そうなんだ。こういう音楽賞みたいなものは他にも?」

夕「たくさんあるよ。「MMA(Melon Music Awards、音楽配信のMelon主催)」とか「AAA(Asia Artist Awards、アジアと韓国でヒットした歌手と俳優に贈られる)」とか「SMA(ソウル歌謡大賞)」、あとは「GDA(Golden Disc Award)」あたりかな」

片瀬「なるほど。日本にもゴールデンディスク大賞とかはあるけどどちらかというと「武道館に立つ」ほうが強い気がするな。アイドルでもベイビーレイズJAPANはいつまでに武道館公演ができなければ解散みたいな公約掲げてたし」

夕「もちろんKPOPにもそういうのはあって、東京ドームなんかは大きな目標になってるよ」

まとめ

片瀬「今回の話をまとめていこう。まずKPOPアイドルにとってはチャートが大事で、それはチャート自体が目に触れるってことだけじゃなく音楽番組の出演、さらには音楽賞や音楽祭のステージに立つことに影響してくると」

片瀬「ということは、KPOPアイドルの中でも売れてるなっていうグループは音楽番組や音楽祭に出演してるのが一個の目安になってくるのかな」

夕「音楽番組に出ることはKPOPにとっても決して簡単ではなくて、そもそも出られないグループがたくさんいるからね。地上波3局でやってる音楽番組に出るっていうのはステータスになってると思う」

片瀬「あとはチャートが色々あってそれぞれ集計方法が違うよね。AKBの握手券商法みたいに日本ではチャートをファンの積み行為でジャックしてしまうこともあったけど、そういうことはできないような対策もされていてアイドルのためのものになりきっていない」

夕「それで国内外の人気の差とか、プラットフォームとフィジカルの差とかもわかりやすくなってると思う」

片瀬「その中でファンはやっぱり推しのグループを上位に入れようと思って意識しながら再生したりCDを買ったりしていると」

夕「そうだね」


今回の対談はここで終了です。「#韓ドルオタクとボカロP」というシリーズで、KPOPの産業構造やファン文化に着目した全5回の対談を掲載していきますので、興味を持った方はぜひマガジンをチェックしてみてください。

*1)KORIT,2022,「韓国人が最もよく使う音楽ストリーミングアプリは「YouTube Music」」より



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