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004 ぴかぴかな女の子は菜箸を握る 『わたしを空腹にしないほうがいい』くどうれいん



今日は本のお話です。


薄い文庫本。

ザラッとした紙の手触りは文房具好きの心をくすぐる。


わたしを空腹にしないほうがいい

東北在住の若き歌人・くどうれいんさん。

れいんちゃん(ちゃん付けで呼ぶことをどうか許してほしい)は、かわいい。
どうして20代にもなってそんなにあどけない顔でいられるのか。
赤ちゃんみたいな、見る人を幸せにする笑顔で笑えるのか。

もし学生時代に同級生だったら、絶対仲良くなれなかったタイプ。
身を焼き尽くして灰になるほど、わたしは彼女の存在に嫉妬したと思う。
何なら今だって、ちょっと焦げ臭いくらいには妬いている。
キラキラ女子とは一線を画す、素材そのものの輝きが眩しくて。

そんなかわいい人の、大学時代に綴った食べ物日記。
ホームベーカリーでパンを焼き、圧力鍋で角煮を作る。
鯛を捌き、鶏胸肉を焼き、クリームコロッケまで揚げる。
生活に根差した料理。

SNSに流れてくる時短調理、レンジ調理とは似て異なる感触がする。
あれはあれでとても便利でありがたく、わたしも多分にあやかっている。
だけど、調理と料理の間にはとても大きな隔たりを感じている。
日常のひとコマとして空腹を満たすために作るものと、美味しいものを食べるために手間をかけることを惜しまないの差。

れいんちゃんの作る料理には、どれも食材に対しての敬意と「美味しく食べよう」という静かだけど確かな意思を感じる。
本に出てくるれいんちゃんの作るものが食べたくなるというよりは、唾液線を刺激されて「わたしも何か美味しいものを作ろう」と料理欲が沸き上がる。

菜箸を握るのが楽しいと思えることは、きっとすこやかに生きていくうえで武器になると信じている。
指を動かすごとに、菜箸を動かすごとに、自分自身が救われていく。


社会人になってからの日記は少し驚いてしまったけれど、たくさんの大人のひとにかわいがられて、美味しいごはんとお酒がきっと彼女をこれからも無敵にしていく。


*****


わたしは今日、コンビーフをマヨネーズと黒胡椒で和えたものを白米にちょこんと乗せ、醤油を付けた焼き海苔でくるりと巻いて食べました。
まだリニューアル前の、キリキリと缶を巻き切るタイプのコンビーフ。
こんな危ないものどうやって洗えばいいのよ!ってなるアレ。
ちょっと非日常で、たまに無性に食べたくなるコンビーフ海苔巻きは、簡単だけど料理の方にくくりたい一品。





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