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感謝とリスペクト。人を繋ぐ農業を。(糸島のフィールドマスター:古川拓実さん)

※この記事は雑誌「1番近いイタリア2022秋号」からの抜粋です。

感謝とリスペクト。人を繋ぐ農業を。

今回生産者インタビューでお話をお聞きしたのは、福岡県糸島市で「糸島のフィールドマスター」として多彩な活動を行っている古川拓実さん。人懐っこい笑顔にみんなが安心感を覚える、若き農家の古川さんの想いに迫ります。

なぜ農業の道へ

自分は、元々実家が農業をやっていたので、畑での農作業が身近にありました。幼い時は農業の手伝いをしなくてはいけない状況に嫌気がさす時もありましたね。土日が種まきになったり、放課後は他の友達が遊んでいるのに家に帰って手伝いをしたり、なんで自分はみんなと同じように遊べないのかと思ったりしていました。

でも、中学生になった頃から、友達に「遊びに行こうよ」と言うような感覚で、「うちの畑おいでよ」と誘うようになったりして、友達が農業を手伝いに家に来てくれることが多くなったことで、家業の農業の見方が変わりました。自分は貴重な経験をできる家庭に生まれたのだな、と思うようになったのです。やっぱり農作業の後ってご飯が美味しいですし、ご飯を美味しく食べられたり、残さずに食べるという当たり前のことが特別な事なのかもしれないと気付いたのです。そして農業をもっと深く勉強したいなと思い、ゆくゆくは家業を継ぐつもりで大学では農学部で学ぶことにしました。

大学に入り、勉強の意味も含めて色んな農家さんのところに行きました。そのコネクションを生かして農業の経験をしたい人と農家さんを繋ぐような活動もしたりしました。その中で気付いたのは、「農業が楽しい」と思う理由が一人一人違うことです。それぞれ農業の色んな要素に学びを得て楽しさを感じていました。こうした経験の中で、農業はやはり価値のある仕事だと思うようになりましたし、また、そんな高い価値をしっかりと捉えられる場にしていきたいと思いました。

このように農家さんと農業を志す人に囲まれた中で考えていたのは、農家として自分はどんなことにチャレンジしたら良いかということでした。農家としてのプロは沢山いて、自分もゆくゆくはプロになりたいと思っているけれど、ただの準備期間にしたら勿体無いと思いました。そこで、大学卒業後は糸島の実家に戻って、まずは実家の農業を手伝うことにしました。

糸島のフィールドマスターへ

1年目は糸島の実家の農業を手伝いながら、農業ベンチャーを手伝ったり、自分なりに色んな道を模索しました。しかし、実家にいると、大学時代と比べて世界が狭くなった気がしていました。親の繋がりや元々の農家さん以外に新しい人の繋がりが見えなくなってしまったのです。

新たなチャレンジがしたいなと思っているところで、佐賀で仕事の話を頂き、卒業して2年目のタイミングで、独立して農業関係の仕事を始めようと決意しました。佐賀では、農家さんの元で住み込みのバイトをしたり、農業関係のベンチャーでインターンしたり、同級生が始めた新規就農のお手伝いをしたり、常に農業は軸にあるけれど、なんでも屋さんのような形で色んな仕事を経験しました。面白い農家さんの方々と繋がったり、農業の外の世界をみたりする中で、農業が好きで、チャレンジをしている人と仕事をするのはとても楽しい日々でした。だけど、何故かもやもやする自分がいて。この状況で満たされないはずがないのに。悩んだ結果、佐賀ではないのでは、と思ったのです。

そして、ちょうど今から2年前、再び糸島に帰ってきました。帰ってきて、フリーランサーや起業を目指す人、九州大学の学生さんたちとシェアハウスをして、新しいコミュニティの中で自分にできることを探しました。時にはビーチ清掃をしたり、農作業のお手伝いをしたり、学生とイベントしたり、海鮮のお店でバイトしたり、農業にこだわらず糸島のためになることを探して行っていきました。こうした中で、色んな縁が繋がり、「畑を使って良いよ」という話を頂いたのです。そうして自分の畑で農業を始めたのが1年前のことです。

新しい自分の畑では自然農業を行うことに決めました。現段階で専業農家になりたいわけではなく、農業を通して人との繋がりが好きで、そうした自分の特性を生かしたいなと思っていました。自分は農業以外にも色んなやりたいことがあったので、自然農業はある程度ほったらかしに出来るという点でも自分に合っていました。

自然農業を勉強しつつ、試行錯誤を繰り返す中で、他の農業ではみられない価値が見えてきました。自然農業は、農薬などを使わないのはもちろん、水やりもせず、全て自然に任せるのですね。自然との対話や実験は楽しいですし、偶然も含めて沢山のバリエーションがあって、色んな比較実験が出来て、自然をより体現できます。この価値を伝えようと、自分の畑で農業体験を提供し始めました。

すると、さらに面白いことが起こります。というのも、自分一人で工夫しても限界があって、人を受け入れることで、偶然も含めてさらに色んなバリエーションが生まれるのです。例えば、子供が種まきをすると、うまく地面に均一に埋められなかったりしますが、地表近くに落ちただけでも芽が出てきたり、その理由を掘っていくと新しい発見に繋がったり。こうして色んなお客様から学びを得ながら、自然農業というフィールドを使って、学びを提供する場を作っているところです。

これからの挑戦

自分の中でのキーワードとして「感謝とリスペクト」という言葉があります。これが全ての人にあれば世界は平和になりますよね。自分は農業という切り口で感謝とリスペクトを増やすことに貢献したいと思っています。

そのために手段は色々とあると思うので、食べることに対して感謝とリスペクトに気付ける場を糸島で作っていくために、幅広く色んなことをやりたいと思っています。まずは、農業を起点に糸島で成功事例を作り、ゆくゆくは日本全体の地方創生に貢献することが目標です。

有難うございました!

エネルギッシュな古川さんからお話をお聞きしていると、自分で可能性を切り拓いていく新たな農業の形が見える気がします。何よりも古川さん自身がとてもキラキラとしていて、人が好きで人を繋いでいく彼の今後の活躍がとても楽しみです。また日本に帰国時には糸島に遊びに行けるのを楽しみにしています。それまでお互い頑張りましょう!

フルタク畑

代表:古川拓実
住所:福岡県糸島市前原西4丁目1-11
電話:080-1537-8725
Instagram:

https://www.instagram.com/furutakubatake/

※この記事は雑誌「1番近いイタリア2022秋号」からの抜粋です。

1番近いイタリアについて

日本の食材でイタリア家庭料理を楽しむ通信。

遠い地の高級食材を使うのではない。
地元の恵みをたっぷりと頂く。

美味しい部分だけ食べるのではない。
皮も茎も全部美味しく食べる知恵がある。

お金をかけるのではない。
手間をかけ、愛情を込める。

そんな自然体なマンマの料理の美味しいこと、美味しいこと。

何を食べてもしっかりとした味があって、温かくて、これを’豊かさ’というのだと、ハッとしました。

そんな愛するイタリアの、各地のマンマに教わった知恵と文化を、日本の皆様に日本の食材でお送りします。

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