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コロナ禍が始まって働き始めた社会人1、2年生のモヤモヤは?新人記者が聞きました。

 コロナ禍が始まってから働き始めた社会人1、2年生は、これまでとは違う悩みがありそうです。入社した時からマスクが必要で、テレワークもあってコミュニケーションが何かと取りにくい。何だかもやっとする気持ちは、新人記者の私にもあります。広島で働く同世代の1、2年生に思いを聞いてみました。(江頭香暖)

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7カ月もテレワーク「モチベーション保てん」

広島の大手企業 入社1年目22歳男性
 「モチベーションを保てん」とため息をつくのは、広島の大手企業に今春入社した22歳の男性。入ったときからもう7カ月もテレワークが続いている。1人暮らしの部屋での作業はやる気が出ないこともあるという。本を読んだり、同期同士でチャットをしたり…。「仕事してないな。こんなんでいいんかな」と、焦りや不安を覚えるという。
 仕事は雑用ばかり。テレワークなので先輩たちと一緒に仕事をすることも少なく、新たな仕事を教わりにくい。「1、2年後の自分がイメージできないのがきつい」と打ち明ける。
 顔も声も知らない上司も少なくない。「分からんとこも先輩のスケジュールを見てチャットで『お時間いいですか?』っていちいち聞かなあかんくて」。やたらと気を使って疲れてしまうし、質問のタイミングが見つからないまま、定時を過ぎることもある。息抜きは散歩。バドミントンで体を動かすのも好きだが、コロナでできなかった時期は鬱々とした。「損してる世代だな」と時々思うそうだ。

22歳会社員

              (22歳男性が散歩のときに撮影した風景)      そうでなくても「働くこと自体」に慣れていない時期に、コミュニケーションが取りにくいのはつらい。寂しく思っている1、2年生は、やっぱり多いようだ。広島県内で働く1年目の公務員女性(24)も「研修がオンライン続きで、同期とも会えてない」と残念そうに話す。「仕事に行って帰るの繰り返し。つまらない」と漏らす。

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歓送迎会なし。先輩と親しくなれない

広島市の2年目看護師女性(24)
 広島市内で働く2年目の看護師女性(24)は「歓送迎会もなくって、オフの先輩を知らないし、『自分がこういう人だよ』っていうのを知ってもらえる機会がないなって」。定期的な飲み会があれば、「この人ってこういう人なんだって分かるのに」。中途半端な飲み会はめんどくさいって思う一方で「せっかく社会人になったのに」っていう悲しさもある。「お酒の場のマナーとかも学ぶ機会がなくて」と嘆いていた。

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 休憩時間も孤独だ。「お昼休みも少人数で分散して食べとった。テレビのない部屋で先輩と2人のときはしーんとして、休憩なのになんか疲れる」。親しくなりにくい環境の中、仕事で信用を失わないよう、小さなことでも聞くようにしているそうだ。

分散休憩で黙食。打ち解けにくかった

広島市の1年目看護師男性(22)

新谷さん

 広島大病院(広島市南区)の1年目の看護師新谷嘉大さん(22)も、いつも分散休憩し、黙食しているという。「休み時間も最初は緊張していました。先輩たちの輪にも入って行きづらくて…」。2011年の東日本大震災をきっかけに看護の道を目指し、ICU(集中治療室)で働き始めて1年目。「打ち解けられないうちは、物品の場所とか小さなことでも聞きにくかった」と話す。
 ただ、徐々に仕事に慣れてきて気持ちにゆとりも生まれるようになった。教育担当や面倒見の先輩、師長さんなどあらゆる先輩が「最近どう?」と気にかけてくれ、コミュニケーションも取れるようになった。

励まされた先輩からの手紙。うれしかった

広島市の2年目看護師女性(24)

山磨さん

 同じく2年目の看護師山磨(やまとぎ)花菜さん(24)は、1年目の頃、「先輩から手紙をもらったのがうれしかった!」と教えてくれた。
 当時は無力感でいっぱいだった。急性期の患者が多く、処置のスピードについていけない。家に帰ってベッドに入っても次の日のことが心配で、もう一度、自分の部屋の机で勉強することもあった。
 その頃、ベテランの看護師の先輩から手紙をもらった。「だんだんできるようになっている。一緒にがんばろうね!」。自分ではできている実感はなかったが、小さな進歩を肯定されたようでうれしかった。手紙は今でも家に飾っているそうだ。
 「考えてみれば、患者さんも面会制限でストレスがたまっている。みんなコロナで思うところはあるかもしれないけど、不利益を少しでも小さくできたらと思えるようになりました」と明るい笑顔だった。

高校時代と比べたらへっちゃら

広島海上保安部2年目男性(24)

原田さん2

 コロナ禍を苦にせず、ずっと前向きに進んでいる人もいた。昨年から広島海上保安部で働き始めた原田和宏さん(24)=広島市南区。巡視艇しまぎりの乗組員だ。10月のある日の昼過ぎに訪ねると、海に浮かぶしまぎりへと案内してくれた。
 青い海に照りつけるまぶしい光を浴びながら、原田さんは「コロナだから大変というのはないですね」とさらっと言う。
 船内には「宅飲み禁止」の文字。乗組員同士でのプライベートの交流はない。「感染者を出したらいけないから」。それに「休みを取って」と言われても、どこにも行けず「家でゴロゴロすることもありましたね」と打ち明ける。
 それでも前向きなのはどうしてなんだろう。「高校のときと比べたら、今はへっちゃらですよ」。甲子園に出場した高校時代の経験が糧になっているそうだ。2015年夏、広島新庄高の背番号7。外野手として活躍し、1勝した。

原田さん


 「あの頃のレギュラー争いに必死だったつらさを、今は感じることがないですね」と原田さん。年代の近い上司ばかりだから、仕事やプライベートの相談もしやすいという。「家族のように何でも気兼ねなく話せる」とも。乗組員は8人。海上の警備や救助が任務で、東京五輪では1カ月、外洋警備に当たったという。今は潜水士を目指し、仕事の後は水泳やランニングで汗を流す。

記者から

 同世代の社会人1、2年生と話すと、みんなが、コロナ禍の中の日常に少しずつ慣れてきているんだなと感じた。今の生活に少なからずもどかしさを抱えながらも、「これが普通」と思うようになってきているんだな、と。

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 私自身、先輩からコロナ前の会社の様子を聞き、コロナだから仕方ないと思いつつも、「コミュニケーションを取る機会をつくりにくい」「仕事のときの先輩しか知らないから、どういう人かイマイチつかめず、何となく気を遣う」と勝手にモヤモヤしていた。でも、今回の取材で、ある言葉に納得した。「自分たちが先輩を知らないのなら、先輩の方も自分たちを知らない」。みんながコロナ禍に戸惑っている。自分たちだけが損をしているわけではないのだ
 新社会人としてコロナ禍で働くことに向き合うために、今の日常を「当たり前」にして割り切っていくことも大切なのかもしれない。たまった愚痴もどこかに吐き出しながら、歩いていけばいい。そう思うと、モヤモヤした気持ちが少し晴れた気がした。

中国新聞社Voicy公式チャンネル「聞いてみんさい!広島」で、筆者の江頭香暖記者と同じ新人記者の小林旦地記者がコロナ禍が始まって働き始めた社会人1、2年生のモヤモヤについて対談しています。ぜひ聞いてみてください。⇩⇩⇩