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ディスレクシアだけじゃない、字を書くのが苦手な理由

かばんの中の鍵、あなたは見ずに手探りだけで探せますか?

探せた人はきっと、鍵を触った感触でそれが「鍵だ」とわかるから見つけられるんですよね。

この、物を見ないで手のひらの感覚だけで物の感覚を得られるという認知能力のことを「立体認知(実体感覚)」(Stereognosis/Haptic)と言います。

発達障害の子の中には、これがとっても難しい子がいます。

そしてその子達の多くは、「字を書く」のがとても苦手だったり、極端に指先・手を使う作業が苦手で不器用だったりするケースが多いんですよね。

今日は、「字を書く状況」になるとフリーズ(固まって動けなくなる)してしまった自閉症の男の子ニックのお話し。

ニックは、算数ギフテッドかも?というくらい聡明でビヘイビア(行動・ふるまい)にはびっくりするくらい全く問題のない5歳の自閉症の男の子。

でも、字が全く書けない、絵が全く描けないのが悩みだった。

まず、鉛筆やクレヨンを持つ時に、三本の指で鉛筆をホールドするまでにすごく時間がかかったんだよね。で、いざ書き始めると、ミミズが這ったような弱々しい線しか書けなかった…。

5歳くらいの子なら、自分の字がきれいかそうでないかなんてあんまり気にしないと思うんだけど、けれどニックはすごく頭のいい子だったから、「これではだめだ」ということがわかってて、それがさらにニックを苦しめていってたんだよね…。だから自己肯定感を得られない事からの二次障害が心配だった…。

ニックの行動を観察したり、ご両親からの聞き取りから考えて、立体認知不能(astereognosis)を疑ったから、SIPTという感覚のアセスメントをとってみたらやはりニックは手のひらと指から感覚情報をほとんどとれていなかったのがわかったんだよね。

それからは、色々な感覚刺激の方法を使って、手のひらと指の感覚を目覚めさせて行って、だんだん鉛筆やクレヨンからのフィードバックを手のひらで感じられるようになったニック。その成長を本人もご両親もすごく喜んでて、心配してた自己肯定感への影響も改善されたんだよね。


字を書くのが難しかったり、極端に不器用だったりすると、漢字の書き取りのように何度も繰り返すことを強いて克服させようとしがちですよね。でもニックの様に、立体認知につまずきがあったり、目と手の協調運動に問題があったり、学習障害があったりすると、「何度も繰り返す」といった本人の努力型の取り組みでは改善されず、かえって自信喪失につながり自己肯定感の低下を招きかねないんです。

また、できないことを「やる気がない」と判断したり、叱責したりすると、悪化する一方です。やる気の問題ではありません。

字を書くのが難しかったり不器用だったりする問題の根っこは色々で、なかなかすんなり解決する問題ではないんですよね。だからまずは、「難しいんだね」「大変だね」と、本人が「困ってる」ことに寄り添うようにしてあげてほしいです。そうすることで初めて原因や解決策が見えてくると思うんです。ぜひそこを出発点にしてくださいね。

立体認知や感覚改善のアクティビティについってもっと詳しく知りたい方は、ぜひブログ↓↓↓ものぞいてみてください。


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