(読書)盲目的な恋と友情
辻村深月
(内容紹介)
タカラジェンヌの母をもつ
一瀬蘭花(いちのせらんか)は
自身の美貌に無自覚で、恋もまだ知らなかった。
だが、大学のオーケストラに
指揮者として迎えられた
茂実星近(しげみほしちか)が、
彼女の人生を一変させる。
茂実との恋愛に溺れる蘭花だったが、
やがて彼の裏切りを知る。
五年間の激しい恋の衝撃的な終焉。
蘭花の友人・留利絵(るりえ)の目から
その歳月を見つめたとき、また別の真実が――。
男女の、そして女友達の妄執を描き切る長編。
ネタバレ
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恋に盲目的な彼女と
友情に盲目的な彼女。
どちらも自分優先で、読んでいて
あまりいい気持ちがしなかった。
でもそれは同族嫌悪のようなもので、
共感しすぎるが故の気持ち悪さだった。
盲目的な恋
茂美の前に少しつきあった男性が
外見的にも性的にもあまりよくなくて。
誰でもいいからとりあえずつきあって
ひと通り体験しておこうと
選んだせいなのかもしれないけれど。
だからこそ茂美の存在が蘭花の中では
華々しく衝撃的だったのだろう。
優越感と快楽と嫉妬と
茂美の存在に振り回される蘭花が
読んでいて痛ましかった。
彼が師事する指揮者の妻と
関係していると知った後も、
知ったからこそ、意地になって離れない。
どんどん茂美に支配されていくのに
友達から別れたほうがいいと言われるのに
別れない蘭花。
これ以上愛せる人はいない、
彼には私しかいない、
誰も私達の事は理解できない、
でもそれでもいい、等々
色々な想いが執着となって
彼女の身動きを止めてしまう。
自分がさんざんコケ?にされていると
知った時、ようやく蘭花は正気に戻る。
けれど。。。
盲目的な友情
留利絵はとても自己肯定感が低い。
スタイルもいいし、音楽の才能もあるのに
とことん卑屈に生きている。
彼女の姉が綺麗で父親に愛されていたから、
父親の姉に対する愛情は異常なものだったけれど
それでも留利絵は自分が愛されなかった、と
愛されたかった、と
心の中で叫んでいて。
だから彼女は表面では冷静な振りをして
傷つくことがあっても、別に平気だし、
と防衛反応を働かせて避けている。
よくない言い方だけれど
読みながら痛いなあ、と思っていた。
蘭花に思う痛ましさとはまた違う、
哀れという印象。
自分もそういう部分があるから余計に。
そんな彼女にとって蘭花の存在は
一体何なの、と思う。
留利絵の心の中は防衛反応でささくれて
傲慢にさえなっている。
蘭花は自分が守らなければ、
自分以上に彼女の事を考えられる友達はいない、
自分が彼女にとっての一番の親友だ、
と執着する。
蘭花と自分の人生を壊しても、
一緒にいられればいい、と。
それが留利絵の望む、選ばれる人生なのかな。。
虚しい読後感だった。
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