Nipponの温泉文化、再考サイコー (その1:渋温泉)
年始、かつてから行ってみたかった渋温泉・地獄谷温泉をついに訪問、ついでに野沢温泉まで足を運び、久しぶりの二泊のひたすら温泉という旅の中で、思いもかけず、日本の温泉文化を再考する機会となり、3回シリーズで収まるか、noteに残しておくことにします。まずは、渋温泉から。
北陸新幹線→長野電鉄で湯田中へ
あっという間の長野駅
東京から乗車したのは、北陸新幹線かがやき525号金沢行き。かがやきは全席指定席なので、要注意。かがやきには初乗車、長野まで1時間26分、速い!停車駅は上野-大宮-長野ですから、東海道新幹線ならのぞみという位置づけです。
本庄早稲田を過ぎて、鏑(かぶら)川を渡り、高崎が近づいてくると、右側から、上信電鉄が見えてきます。ちょうど「佐野の渡し」のあたりから、はるか遠方には雪をかぶった浅間山が早くも見え始めます。
あっという間に高崎通過。左に大きくカーブする前に、左前方には一瞬、妙義山と浅間山が同時に眺められます。上越新幹線と別れ、こちらはあっという間に碓氷峠の山の中。碓氷峠トンネルは6km強の長さ、すごく減速した感じではなかったでが、後で調べたら、30‰(1000m進んだら30m登る)もありました。
このトンネルを抜ければ、軽井沢。右手には、浅間山が間近に見えます。
新幹線は小諸を北に見て、佐久平、千曲川に沿って、上田と進みます。上田のあたりからは、だんだんと、どんよりとした雲が増えてきました。
川中島付近、犀川の鉄橋を見て、長野駅に到着。昔は、信越本線、碓氷峠越えの特急「あさま」は上野から3時間はかかりました。かつての半分以下で、長野まで来ることができます。ありがたいことです。
長野駅→湯田中へ
明るく広々としたコンコースに、善光寺を意識した寺院風の玄関口。巨大な京都駅を明るくコンパクトにしたイメージです。北陸新幹線の開通に合わせて、完全リニューアルしたとのこと。
かつて私が見た長野駅は、こちら↓ この駅舎も有名でした。
ここからは、地下のホームが始発となる長野電鉄長野線に乗ります。こちらは初乗車。ながでん長野駅は、地方都市の地下鉄のような雰囲気。しかし、よく見てみると、改札前には地元の名産品がずらっと並び、無人販売してます。業務用冷蔵庫も置かれ、生そば、リンゴに野菜まで!これは都心ではお目にかかれない光景です。
長野電鉄は、昔から、都心の車両を譲り受けて走らせており、普通列車は東急の車両を多く走らせていました。また、地方私鉄には珍しく、こちらも古くから特急も走らせています。今はご覧の通り、かつての成田エクスプレスと小田急ロマンスカー。ロマンスカーが第二の鉄生!?があるのは嬉しい、展望席も取りやすいのではないかと思います。
ロマンスカーの先頭車両は指定席ですが、普通車はほとんど自由席。特急乗車券を買って乗り込みます。
善光寺下まで地下を走り、そのあと地上に出ます。長野市郊外の新しめの住宅街を通り、新幹線をくぐると、しばらくして千曲川のトラスを渡ります。
水量もあり、悠々と流れる千曲川。河道も、川幅も驚くほど大きい。
須坂のあたりに来ると、だんだんと畑が広がっていきます。ぶどう畑に、リンゴ畑、季節の時にはたわわに実り、景色もさらに良さそう。
小布施に到着。今は全線、長野線と呼んでいるが、昔は、長野線(長野-須坂)、河東線(屋代-木島)、山ノ内線(信州中野-湯田中)という時期もあり、建設の経緯と廃線から、今に至るようです。
信州中野からは勾配もカーブもきつくなり、やや山岳鉄道の様相を呈し、まさに小田急ロマンスカーなら小田原-箱根湯本間。任せておけぃ、という区間です。
青空は見えていますが、どこからか小雪が舞って来ます。湯田中駅到着。いかにも終着駅という香りのする湯田中駅。長野電鉄のバスターミナルも兼ねており、お土産物屋はないですが、賑やかです。
徒歩で渋温泉まで
昼は過ぎていますが、どこかで食べられると目論見、渋温泉まで徒歩。
湯田中の温泉街で、メイン通り沿いには外湯がいくつもありますが、食べるところが開いていない…。ひと気もなく、足取りも重い…。
緩やかな坂に沿って湯田中温泉街を過ぎ、ようやく登り切ったあたりで、視界が開け、あれが渋温泉か! 遠くには志賀高原の雪山が見えます。
大きな案内板があり、温泉街の始まりのあたりからで風情があります。
途中、鄙びた中華料理屋にて、遅い昼食を食べましたが、おばあちゃんの味でラーメンも餃子も美味しく頂きました。「お猿さん、観に行きたいんですけど…」と聞いたら、あまり遅いと、山に帰っちゃうから、餌付けしている昼間のが良いよ、と教えてもらい、予定通り地獄谷方面は明日にします。こんなに雪の少ない正月は久しぶりとのこと。
さて、渋温泉着きましたが、止まる旅館の位置が分からない…。メインストリートと路地をウロウロ。
外湯のメインの「大湯」。数名の外国人観光客に日本の若いガイドさんが、英語で、歩きながら、解説しています。よくよく見てみたら、どうも外国人のお客様が多い。
渋温泉のタカラ その1「外湯」
渋温泉の良さは風情ある温泉街と外湯。この外湯、全部で、9か所あります。九つの湯を巡ることで、九(苦)労を流し、病魔退散、安産、育児健康、不老長寿と願いを込めて、健康と幸せをおつかみくださいとのこと。
今や湯治目的で来られる方は少ないと思いますが、古来、病気から来る苦痛は耐えがたく、避けられるなら避けたい、病の苦痛から解放されたいとの願いの成就のため、この渋温泉にも、多くの人が訪れたことでしょう。
そんな願いが込められており、相当昔からこのような言い伝えと風習があったと察します。
しかも、これら外湯は、かなり密接した地域に存在しており、おそらく東日本ではTop3に入るくらいの密度。1日かけて1泊2日でも、そこまで歩くことなく回れてしまいます。お土産物屋などで、外湯巡りの手ぬぐいが売られており、スタンプラリーのように押して巡ります。手ぬぐいは、買わなくても回れますが、外湯は、宿で鍵をもらわないと入れません。
小雪の舞う中、最初に入ったのは、笹の湯。渋温泉の洗礼を受けるがごとく、熱くて入れない…。一緒に入った県内のお客さんも「ここと野沢温泉は薄めないと入れないよ」と言いながら、水を足して浸からせてもらいました。
次は、笹の湯近くにある渋大湯。こちら9番目のお湯で、行基が開湯。日帰り温泉の方も、有料で入れます。こちらのお湯は、かなり鉄の香りが入っています。9つのうち、唯一ここだけのようです。
外湯では、外国の方はあまり見かけませんでしたが、この大湯だけは、結構いらっしゃいました。
神明滝の湯は、こじんまり、家族風呂のような雰囲気です。湯の花が浮いています。渋温泉の泉質は、基本、「ナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物泉」なのですが、外湯ごとに微妙に泉質が違います。同時に掲げている効能もそれぞれ違うということになります。
こんなに源泉が密集しているのに、微妙な源泉の差を楽しめるのも、渋温泉ならでは。この狭いエリアでここまで泉質が違うのは奇跡的でしょう。9か所のうち、熱い源泉ばかりではなく、目洗いの湯、七繰の湯は、源泉の温度が低いので、そのまま浸かれました。
翌日までに9つ全ては回れませんでしたが、もう3,4日ここに滞在したいくらい嬉しい外湯。どの外湯にも、開湯からの「いわれ」があり、これを調べながら、ゆっくり浸かりたいところです。
渋温泉は、この外湯によって、温泉街の賑わいは確実に上がっています。管理する地元の方々は維持が大変でしょうけれども、渋温泉の宝ですね。
渋温泉のタカラ その2「風情ある温泉街」
外国人の方にも、温泉旅情を好む日本人にも、この風情ある温泉街はやはり魅力です。しばし、この温泉街をそぞろ歩きしましょう。
日が暮れてからは…。
原風景を残す渋温泉
到着して、半日も経たずして、渋温泉の良さ堪能し、感慨ひとしお。源泉の異なる古くからの9つの外湯のは奇跡的ですが、これを維持する渋温泉の人たちの努力の融合なくしては成り立ちません。石畳にしたのは30年前とのこと。温泉文化の維持のために並々なら思い抱いている人たちがいるはずです。もちろん、空き家、もう店じまいしているであろう旅館もありますが、この渋温泉を何とかしたいという熱量なるものをを感じることが出来ました。そんなことを考えながら、一人、家族風呂に浸かり、気持ちよく就寝。