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広告代理店はイヌと同じだ

これは、
まだ新入社員時代に、
某メーカーの宣伝部長から、面と向かって言われた言葉。
場所は、CM撮影立ち会い後の居酒屋。


そのメーカーは年間でかなりの出稿をしてくれていた重要クライアント。
宣伝部長はその扱いを一手に握る上、少しクセがあるんで、
私の会社では役員以下、腫れものに触れるように接していた相手だった。

CM撮影終了後、
クライアントの担当者と
私の会社の営業担当、営業部長はスタジオに残って処理する案件があり、
見習い社員だった私だけ
宣伝部長と一足先にお疲れ様会場の居酒屋に行くということになった。

そこで生まれたのが、
クライアントの偉い方と、
2人きりで向かい合う
という初めてのシチュエーション。

私はドキドキだった。

彼としてはCMがイメージ通りに上がり、機嫌がよく、
自社担当の広告会社の新人を
指導してあげようというおつもりだったのだろう。

みんなを待ちつつ、ビールを飲みながら
ペイペイの私に、
宣伝の重要性や仕事への向き合い方などを、熱く語ってくれていた。

その流れで、タイトルの一言が出た。


「!」
まだ学生気分の抜けてなかった私は、
それまでの彼のご好意や話の文脈を一切忘れて、
一瞬でカッとした。

それがモロに顔に出たのだと思う。


部長は慌てたように、もう一言補足した。

「代理店の営業マンは人に付くんだよ。会社に付くんじゃない」



今も、
広告会社の仕事を考え直すことがある度に、
部長から言われたこの一言を思い出す。

前にも書いたが、この仕事は結局は人と人。
クライアントのキーマンの懐に入り、
そのエージェントとして動くこと。
最終的にはキーマンの評価を上げること。

これを目指すのが
広告会社の営業という仕事のコツであり、
面白さであると思う。

こうした仕事ができると、
その会社は、自分の「客」になり、
担当者との付き合いは一生モノになる。
部長はまさにそのことが言いたかったのだと思う。



当時の私は、赤面対人恐怖症の真っ盛りで、営業としては全く役に立たないにも関わらず、プライドだけは人並みにあるバカで最低の社員だった。
今思えば、本当に酷い態度を取ってしまったと思う。
自分が宣伝部長の立場だったら、私の上司に「あいつを二度と来させるな」と言っただろう。


ところが、そうはならなかった。

それ以来、なぜか・・・

部長は、
まともに喋れず俯いているだけの
最低の新人営業マンの私に
目をかけてくださるようになった。

彼の部下も
何かと私の面倒を見てくれるようになった(汗)

そしてその会社が、
私にとって営業として初めての
担当クライアントになったのである。
(以来、10年近く担当させて頂いた)


今思えば、
部長のあの一言が
私を「営業の仕事」を好きにさせてくれた
最初のきっかけだったのかもしれない。


部長には、今も、深く感謝している。


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