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【実践】「意味がある」ブランドストーリーの作り方

どうも、こんにちは。広告屋のエルモ(@elmo_marketing)です。

ここ最近、山口周さんをはじめとする著名評論家やマーケターが、「役に立つ」から「意味がある」へのシフトを謳っています。

タイムリーなニュースで行くと、今年はレコード売上がCDのそれを上回ったそう。これはまさに、便利なCDより不便だが趣のあるレコードが選ばれていて、「意味がある」商品が顧客に選ばれているという一例です。

顧客にとって「意味がある」商品は、機能的に他社製品に劣っていても選ばれる理由があり続けるので、それだけマーケティングが有利になります。

しかしながら、どうやってプロダクトに意味を吹き込むのか?、意味の作り方のHOW TOはあまり言語化されていません

今日は、「意味がある」商品・サービスの作り方を、限りなくハウツーに落とし込んでみたいと思います。

「役に立つ」と「意味がある」の違いをおさらい

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ここで改めて、「意味がある」「役に立つ」の違いをおさらいしておきます。

■役に立つ
・機能面でベネフィットを提供する
・消費者に選ばれる理由は「機能」や「数値」

■意味がある
・情緒面でベネフィットを提供する
・消費者に選ばれる理由は「直感」や「好意」
 (よく分からんけど、なんか好き)

たとえば、燃費の良い30km/L走るトヨタのクルマは「役に立つ」から選ばれています。なので、競合他社が40km/Lの車を販売すれば、顧客はそちらにスイッチしてしまう、これが機能の戦いです。


一方、フェラーリやポルシェは、日常使いとしては決して快適ではありません。しかし、消費者にとって「このクルマの存在は俺には意味がある」と選ばれているプロダクトです。このような自動車は、トヨタ車の数倍、数十倍の値段がしますが、それでも売れます。マジ凄い。

役に立たなが「意味がある」プロダクトは、いくらでもご指名で買われますし、仮に競合が差別化要素を打ち出してきても、顧客の離反が置きにくい、そんな構造にあります。

このような背景があるので、「いまは“意味がある”こそ重要だ!」とよく言われています。

ただですね、、、

ここで、多くのマーケターや商売人が感じていることがあろうかと思います。

数値化、言語化できる「役に立つ」プロダクトはともかく、どうやって「意味がある」商品を作るの.....?!。


本当に、あなたのおっしゃる通りでございます。

僕もここ1、2年、山口周さんには、「じゃあ、あなたはどうやって「意味がある」を作り出すんですか?」と何度も言いたくなりました。

「意味がある」って、結果論で語られがちなんですよね。(笑)


ただよーく考えてみると、意図的に「意味がある」を作り出せます。

ということで、本日はハウツーに落とし込んだ形で、「意味がある」の作り方を解説します。

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結論からいうと、「意味がある」の作り方は、

① 時間を味方につける
② (不快感を与えずに)単純接触回数を増やす

この2つを突き詰めるだけで、「意味がある」を帯びたプロダクトに近づくことができると考えています。

「意味がある」とは、どのような状態か?

そもそも「意味がある」って言葉の解像度が荒いですよね.......

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マーケティング視点で「意味がある」を定義すると、「希少性があって(手に入りにくく)、愛着が湧くモノ・コト・場所」だと思います。

 マーケティングは「消費者に選ばれるための活動」です。ぼくら消費者は、モノを選ぶときに無意識ベースで「希少なものは価値あるモノ」と錯覚しいます。実際、今「意味がある」で売れている人気プロダクトというのは、何かしらのカテゴリーで希少性が高いケースがほとんと。

つまり、「こんな商品みたことない!オリジナリティにあふれる商品だ!」という言葉の裏には、「他のどこにもない、多くのモノとは違った商品だ。」といった潜在意識が働いているはず。

たとえば、意味がある商品の代表格iPhoneは、アンドロイド製品と違った希少性が担保されているからこそ、「意味がある」プロダクトとしてあり続けているわけです。


なので、「意味がある」=「愛着がある」と思われがちですが、実際には意味を生み出すには、プラスαで「希少性」という概念が必要になります。

雑談:
「役に立つ」「意味がある」どちらのマーケットにおいても、「希少性」こそが価値の源泉であることに変わりはありません。むしろ、「意味がある」市場で戦うからこそ、「希少性」を意識する必要があります。

なぜ、「意味がある」を作るには、時間を味方につけるといいのか?

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先ほどお伝えしたように、「意味がある」を作るには時間を味方につけるとよいです。これは、顧客と点で繋がるのか、線で繋がるのか?で考えると分かりやすいかと思います。

機能(役に立つ)で顧客に選ばれるというのは、今ココでの戦いです

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今この瞬間に、機能的な価値(燃費だったり、バッテリーの持ちだったり、軽さだったり)の1点で勝負する必要があります。

今ココの戦いでは、モノサシが単純化されているので、勝者は1人だけ。機能で選ばれる市場は、一番良いモノが顧客に貢献するので、勝者総取りの世界になります。(厳密には、機能8割、趣味嗜好2割くらいなので、いくつかのシェアにばらけることになりますが、まあだいたいそんな感じです)。


そこで、オススメの戦い方は、時間を味方につけ今ここと違った場所にプロットを打つこと。今ココの戦いから、過去(歴史や原体験)と未来(ビジョンや期待感)のどちらかに、競争の軸をずらしてみましょう。

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 点が2つプロットされると、線になります。

 線がもたらすコンテキスト(文脈)が意味の源泉になると考えています。というのも、いまここの点はただの情報ですが、線はストーリーになり、それだけ希少性が高まるからです

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 過去と今、今と未来を線でむすぶことで意味を生みだしている、一番わかりやすい事例は「観光」ではないでしょうか。

京都やローマは、1000年、2000年の歴史を売り物に、大量の観光客を世界中から呼び寄せています。これらの観光地の魅力は、今ココの価値というよりは、「昔、この場所で決闘が行われていた」であったり、「昔の日本の首都を感じたい」という過去への思いから生まれているわけです。冒頭で紹介したレコードも、過去コンテクストを使った「意味がある」商品です。


逆に、未来を使って意味を作るというのは、「いまはまだこんなもんだけど、これから俺たち凄くなるぜ」と宣言して、人の関心を集めるストーリーテリング手法です。テスラの電気自動車が売れたり、Apple Watchがシェア一位になっているのは、「今この瞬間に役に立つ」ではなくと、むしろ「これからこんな未来を実現しますよ」というビジョンに共感してモノが売れています。

「これからはビジョンが大事」と言われる背景には、顧客や社員と「意味がある」関係性を作り出して、長期間グリップし続けることにあると思います。

つまり、意味があるというのは、時間を味方につけて希少性を上げる戦略なんですね

というわけで、時間軸を今からズラすことによって、

・過去と現在を線で結んだ、ノスタルジックプロダクト
・現在と未来を線で結んだ、期待感溢れるプロダクト

で意味を作り出すことができるようになります。多くの「意味がある」と言われている商品は、基本はこのどちらか(または両方)を満たしています。

過去にフォーカスして物語を作るのがオススメ

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世の中は、つねに新しいビジョンや未来への期待を欲していますが、個人的には、過去に焦点をあてマーケティングを推進するのが良いかなと思っています。

なぜなら、未来は誰でも好き放題に宣言できますが、過去は変えられません。つまり、プロットの希少性は過去にあり、もし活かせる素材があるのなら、過去を使い倒したほうが良いという仮説です。


先ほど、ローマや京都の話をしましたよね。

これら観光地の価値は、100年後も1000年後も落ちることなく、むしろ価値は上がっていくと見られます。その理由は、ローマの歴史はローマにしかなく、京都の歴史もまた京都にしかありません。京都のニーズが10倍になろうと、別の土地に京都を作ることはできません。

逆に、未来へのプロットはどうかというと、誰でも、いくらでも宣言できてしまうため、過当競争に陥ってしまうリスクを抱えています。

メチャ個人的な話になるんですが、僕は昨年末にシンガポールに行きました。

5年ぶりくらいの再訪でして、マジでビックリするほど進化していました。目を留めないわけにはいけない建築物がボコボコできていて、未来都市としてまたひとつアップグレードされた、そんな感動を覚えました。

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(マリーナベイの裏にある、ガーデンバイザベイ)

いま、シンガポールは近未来を感じさせる箱モノの建設ラッシュです。

これ裏を返すと、歴史の浅いシンガポールには、時間(過去)を味方につけたマーケティングができないため、この戦略を取らざるをえないとも言えます。あの国は歴史がないゆえに、ほかよりも目立つ建物を作りつづけ、世界中からお客さんを呼び寄せる必要があるんです、

雑談:
バズ合戦を永遠に続けるツイッタラーと、人が飽きる前に、また新しい目立つ箱モノを作り続けるシンガポールは、本質的に同じだと思います(笑)


 時代は常に新しいものを求めていますが、ビジョンで人を惹きつけられるのはほんの一握り。「海賊王に俺はなる」と宣言するのは誰にもできますが、そのコトバひとつで周囲を巻き込めるかどうかは、あなた次第です。

しかも、今ココの戦いが消耗戦であるのと同様に、未来の点で勝負する戦いも、次々に新しいコトをまわりが打ち出してくるので、消耗戦になりかねません。

何度も言ってきた通り、マーケティングにおける価値の源泉は「希少性」です。

売りモノの希少性を担保し続けるという意味で、変えられない古き過去に目をつけるのが良いのではないでしょうか?

ということで、「意味がある」を作り出すには、時間軸をずらして、過去・未来を活かして物語を作ったほうがよい、さらに可能ならば、「過去」にフォーカスしたほうがよいよという話でした。

愛着・好意を作り出すのは、結局は接触回数

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最後にもう一つ、別の切り口から「意味がある」の作り方をお伝えして、このnoteを終わりにしたいと思います。

それが、単純接触回数効果という強力なテクノロジーです。

簡単にいうと、「接する機会が多ければ多いほど、相手に好意を抱いてしまう」という心理学の法則です。

 好意や愛着は、コンテンツの良し悪しもさることながら、相手との接触回数に比例します。数年に1回しか会わない優秀なビジネスマンより、毎週オフィスに訪れる凡庸な営業マンに好意を抱いてしまうのが人間の性なんです。(笑)

これは広告の世界でも一緒でして、TVCMはある一定の段階までは、打てば打つだけプロダクトに対する好意度は上がり続けます。

つまり、「意味がある」=「①希少性があり、②愛着がわくもの」だとすると、後者②の部分に関しては、モノがある程度良いことを前提にすれば、とにかく顧客とのコミュニケーション頻度を上げたほうが良いわけです。

ソーシャルメディアの世界で、更新頻度が少ないまま有名なインフルエンサーになった人はまずいませんよね?

身も蓋もない結論ですが、「自分にとってこの人は価値がある!」と思われるには、接触頻度を上げたほうが良いぞということです。

ここまでの話を一枚の絵にまとめるとすると、こうなります。

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今ココの機能の戦いから抜け出すために、

① 時間軸をずらして、物語を作り出す
② さらに、接触回数を増やして、好意を得る

この2STEPこそが、「意味がある」を作り出すシンプルな方法論です。

ちなみに、今回は過去-現在-未来と“時間”が切り口になっていますが、土地であったり、プロダクトの原料なども、物語を生み出すプロットになります。

長期間希少性を担保するために、機能に加えて、ストーリーを生みだせというのが、「意味がある」の本質です。


ここまで長々と書かせていただきましたが、「意味がある」の生みだし方をハウツーに落としてみました。

「意味がある」マーケティングが面白いとは思っていたけど、どうやってそれを作り出すんだ?と思っていた方の参考になれば幸いです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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@elmo_marketing

「意味がある」「役に立つ」の議論は、僕が好きなネタでもありまして、以前も何度かnoteにまとめています。よかったらこちらもどうぞ。


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