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実のところ、テレビCMはネット広告に食われるのか?その真実を話します。

どうも、広告マーケターのえるも(@elmo_marketing)です。

先日、NewsPicksの企画で「テレビCMはネット広告に食われるのか?」が広告業界の大御所4人と編集長の佐々木さんを交えて、議論されていました。

広告業界に身をおく者として、とても興味深い内容でした。

とはいえ、もともとCMクリエイター出身者が多いこともあり、大方の予想が「CMにしかない役割があるのだから、CMはネット広告に食われない」という結論に落ち着いていました。

これは、ぶっちゃけポジショントークだと思います。CMが今後も今のように、生き残り続けるなんて、そんな甘いことは起きないだろうと。

■今なぜ「テレビCMvsネット広告」の議論が起きるのか

そもそも、「テレビCMがネット広告に食われるか?」という議論が起きている理由は、2019年、史上はじめてテレビ地上波広告予算がネット広告に追い抜かれる歴史的な転換点を迎えたからです。

記事「テレビ広告費を抜いたかもしれないインターネット広告費」より転載

このまま、ネット広告が飛ぶ鳥を落とす勢いで成長し、広告のトップに立つのか、それともテレビCMも意地を見せてくれるのか?

そんな疑問にお答えするのが、このNewsPicksの企画でした。

5年後の広告業界の予想

僕はせこい人間なので、確率別で複数の方向を考えました。この3つの方向性のどれかに着地するんじゃないかなぁと考えています。。

方向性1(確率20%) テレビCMはネットに食われず生き残る

方向性2(確率50%) テレビCMはネット広告に食われる

方向性3(確率30%) 広告そのものが、オウンドメディアとUGCに食われる

 

 僕が思うに、「ネット広告がテレビCMを食う確率が高い」と見ています。でもまだまだ可能性としては、テレビCMが生き残るチャンスも残っているし、他の動きも同時に起こっている。

 今日は一切のポジショントーク抜きに、CMとネット広告、SNSについて、魅力とデメリットを含めて改めて解説します。

【確率20%】テレビCMがネットに食われず生き残る

TVCMが、なんだかんだ生き残る可能性がある理由がこちら。

 ①スキップされないTVCMの仕組みは強い
 ②CMは潜在的な欲望を喚起できる
 ③マスリーチ力が、プロダクト普及の導火線になる

 ネット広告の構造的な問題点に「スキップできる(またはスクロールで無視できる)」点があります。これはあくまで、広告を出す人にとって問題であって、広告に触れる生活者にとっては、むしろ便利でしかありません(笑)

テレビCMはスキップできないから全部見られることが大前提、ネット広告は0.1~3秒見て面白くなければ飛ばす。

 

この違いがあるので、じっくり時間をかけて何かを伝えたいコミュニケーションには、テレビCMに軍配が上がるかなと思っています。

 さらにさらに、インターネットは「自分が好きな情報を自分から取りに行く環境」が整っています。その最中に広告が挟まると、不快感はTVCMの比ではありません。

 「こっちは早くヒカキンの動画が見たいのに、ビールのCMなんか出しやがって!」とイライラしやすいので、その点もネット広告がTVCMに劣る欠点だと思います。

あとは純粋に、Youtubeで見たい動画が決まっている人から、広告で人の関心を奪い取るのは難しいですね。ハイ。

 スマホ全盛期になり、むしろテレビCMに生まれた強みがあります。それが「テレビとスマホのデュアルディスプレイ」が実現された点です。

 CMをみて興味を持ったプロダクトや商品は、テレビを見ながらスマホで検索することができるんです。

 

 これがスマホ単体の視聴環境だと、そうはいきません。ヒカキンのYoutubeを見ながら、ビールの新商品を同時に調べることは、たぶんないでしょう。

 テレビとスマホ、2つのディスプレイを同時進行で扱えるからこそ、テレビCMが人の検索を喚起させるフックになる。そんな時代がやってきました。

 これは、出演者のGO三浦さんの意見丸パクリで、「潜在的な欲望を生み出すにはテレビCMが最適だ」と思います。

スキップできるネット環境は、自分が欲しいモノしか見ない世界です。そのネットワールドでは、基本的に顕在化されたニーズしか、反応されません。

 逆に動画を15秒、30秒強制的に見せられるテレビCMでは、まだ人の欲望を喚起する余白があります。これが、テレビCMとネット広告の最大の違いであり、かつテレビCMに分があるポイントではないでしょうか。

 最後に、事業者目線からした、TVCM最大の魅力は、「大きなリーチがあり、バブルを引き起こす導火線になりえること」です。

たとえば、ビットコインバブル。このバブルの導火線に、最後火をつけたのがコインチェックのCMです。このCMがきっかけで仮想通貨投資を始めた人は「出川組」と言われてましたね。あぁ、懐かしい。

 CMはマスに広告をぶつけられるので、それだけ多くの人が反応するポテンシャルを秘めています。最近の事例だと、PayPayのCMもそうです。

 プロダクトが大きくスケールするタイミングには、これからもテレビCMが選ばれていんだと思います。

ここまで書いていると、案外「テレビCMっていいじゃん」と感じてきました。とはいえ、物事にはすべて良い面・悪い面があり、トータルで勘定しなければなりません。

次は、テレビCMよりネット広告が勝っているポイントを書いていきます。

【確率50%】CMがネットに食われる理由

僕は断然、テレビCMはネット広告に食われる派の人間です。大きくこちらも理由は3つあります。

①顕在層向けの広告のほうが売上に直結する
②CMはコストが高い割にPDCAが回らない
③そもそもTVを見る人が減っている

ネット広告は、「顕在化されたニーズとの相性が良い」と何度もお話してきました。で、顕在ニーズって売上に直結しやすいんです

たとえば、あなたが白髪染めの営業なら、どの選択肢を選びますか?

①「白髪  黒染め」と検索する人に白髪染めをオススメする
②街中で白髪の人に声をかけてみる
③相手が白髪かも分からないのに「白髪染めを買いませんか?」とコミュニケーションを取る。

①と②がネット広告で、③がテレビCMです。

マーケティングは、顕在化されたニーズや属性の分かる人に商品を手渡しした方がモノが売れる確率は高まります。このように、売上に直結しやすい、費用対効果が見える点で、ネット広告はTVCMに勝るわけです。

これが、TVCMにはないネット広告の強みその1でした。

 ネット広告と比べたときに、テレビCMってお金がメッチャかかるんです。

バナー広告でも1億円を使うことはできるので、単純に「ネット広告は安い、CMは高い」とは言い切れませんが、ミニマムでも必要な予算は圧倒的にCMが高い(東京でCMを流すなら1億はザラにかかりますが、リスティング広告なら数千円から始められます。)

 

 そのくせ、テレビCMは誰が見たかも分からなければ、バナーと違って遷移先のLPがあるわけでもないので、PDCAを回せない環境です

 

 ネット広告屋の人間からすると、数億円をかけてCMを流したのに、CVもCVRもImpも何も検証できないの?という状態。

運用型広告を扱う人からすると、試行錯誤の質・量が圧倒的に足りていないと思われるわけです。

 

 その結果PDCAが回らないので、TVCMは改善されるスピードも遅く、ゴールに辿り着きづらい、構造的な問題を抱えています。これがネットがテレビに勝るポイントその2です。

 単刀直入に言うと、テレビCMがネット広告に負けない云々の話をする以前に、そもそもテレビを見る人って減ってるよねって話。とくに若者は顕著だと思います。

 

 以前、若者の手取りは月14万円とニュースで話題になっていました。それでも今の若者は、iPhoneに10万円を平気で出します。でも、1人暮らしの子がわざわざ身銭を切って32型のテレビを買うことはないと思います。

 つまり、お金を使う優先順位で「テレビ<<<<スマホ」となっている時点で、テレビは見られないのだから、必然的にTVCMも見られない。

そういう環境に今のTV業界はあると思います。※余談ですが、僕もテレビはほとんど見ませんw

 ここまでをまとめると、広告投資の効率も良いし、販促のPDCAも回りやすいし、テレビ離れも進んでいるので、テレビCMがWEB広告に食われる可能性を50%としました。

まあ、絶対ネットがテレビに勝つよねw

【確率30%】広告自体がUGCと自社発信に食われる理由

 WEB広告がTVCMを侵食している潮流と同時に、一方ではSNSの普及で、広告そのものの効果が薄れてきている流れもあります。つまり、WEB広告もTVCMもどっちも食われるんじゃないか説ですね。(笑)

そもそも広告の時代が終わろうとしている理由はこの3つ。詳しく説明していきます

 ①情報接触量は、すでに広告<<SNS(UGC)
 ②情報への信頼度も、広告<<SNS(UGC)
 ③機能ではなく世界観が売れる時代は、
  本人(企業)自ら商品を語るが吉。 

  SNSが普及する前って、口コミの量はせいぜいブログとリアルコミュニケーションくらいでした。だから、生活者の情報接触は、あくまで広告経由が多かったわけです。

 

 それがAfter SNSになると、広告の比ではない量の情報と口コミがネット上に現れます。広告もSNS情報の発信にまぎれてしまうと、生活者にとってone of themに過ぎません。

生活者が受け取るボールの量で例えると、Before SNSの時代は受け取るボールのうち2個中1個は広告だった。それがAfter SNSでは、10個中1個が広告になってしまった。 

かくして、Before SNS時代に比べて、広告の影響力は圧倒的に低下してしまったわけです。量的な意味で、です。

 さらに、情報の質の観点でも、最近は広告よりSNS発信が勝る時代です。

そりゃぁ、自分が売りたいモノを押し付けている広告よりも、第三者視点で本当に良かった商品をオススメしてくれるSNS上の口コミの方が信頼に足ります。

 

  自分の妻を見ていると、インスタで子育てグッズ・おもちゃを発見し、そのままAmazon・楽天に向かいます。残念ながら、彼女の行動導線に広告は介在していません。これが、最近の生活者のリアルです。

 最近よく言われていることですが、機能で差別化が難しくなってくると、消費者はブランドの世界観と繋がるようになります。自分にとって「意味のある」モノを選んでいくわけです。

 

 そして、プロダクトに世界観を纏わせるには、ストーリーテリングが必要になります。そのストーリーに温度感を宿らせるには、「なぜこのブランドが生まれ、何を成し遂げたいのか」をブランド自らが語らなければなりません。noteやオウンドメディアで情報発信をされている人たちはその一例です。

 ストーリーテリングと広告の相性は、あまり良くありません。

 あくまで広告は、消費者と繋がる1つの点でしかありません。生活者と多くの接点を作り、それを線(ストーリー)に昇華するには、たくさんのプロットがいります。

このたくさんの点を打つ作業は、圧倒的に広告より自社発信の情報が有利かなと思います。

 ここまでの話をまとめると、生活者が受け取る情報の量・質ともに、広告の影響力が落ちてきていて、さらにD2C的にプロダクトを売っていくなら、広告に頼らない情報コミュニケーションが必須だよねってことです。

この流れが強まると、広告へのニーズは一気に落ちると思われます。

 正直なところをいうと、これからはブランド自らがメディアになり、広告を介さずに商売をやっていく、そういう時代になるんじゃないかなと。 D2Cに関しては、この本が非常におすすめなので、ぜひどうぞ。

【最後に】CMも広告も無くなりはしない

 最後に、僕の結論を書いて終わります。黒船的存在といえるSNSとD2Cが商売の主流になっても、CMとWEB広告は無くならないと考えています。

 とはいえ、これからマーケティング予算に分配されるポートフォリオは大きくかわっていくでしょう。

 1億円の販促予算があるなら、「CM20%、WEB50%、自社メディア30%」のような配分になっていくのではないでしょうか。(※参考までに、今の日本の広告予算はざっと「TVCM4割、WEB3割、他3割」で分配されています。)

 ということで、「TVCMはネット広告に食われるのか?」をポジショントークなしに、フラットで語らせてもらいました。(そもそも僕のポジションはどこなんや、というのは置いておいてくださいw

 

マーケティングから広告が無くなることは、まだまだないと思われるので、これからも未来を予測しながら日々勉強とアウトプットを重ねていきたいですね。

 この記事が、みなさまにとって何かしらの参考になれば幸いです。最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。 

 これからはテレビCMか、ネット広告かの前に、SNSマーケティングという黒船が訪れていることについては、こちらの記事でもまとめています。よかったら、こちらもあわせてお読みください。

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