精神科病院の医事課員のオススメ

コロナ感染の第2波の影響と、変化しながらも徐々に戻りつつある日常生活のせめぎ合いが激しく、なかなか落ち着かない毎日が続いています。「これまで通り」という訳にはいかないので、自身でも気付かない内にストレスを抱えていることもあります。難しいかもしれませんが、無理はせず、マイペースを心がけた方が良いように思います。

とは言え、毎日見聞きするものの多くがコロナ関連で、不可避な状態なのは仕方ないのかもしれません。書き出しにコロナの事ばかりなのは、さすがに辟易しています。「noteに書くものくらいは楽しいものを」と思い、今回は私の好きな物を紹介する事にしました。

とは言え、何でもかんでも良いとしてしまうと、本来の趣旨からズレ過ぎてしまうので、タイトルの通り精神科病院の医事課員らしく、それなりに関わりのあるものを紹介します。

amazarashi

日本だけでなく海外でも活躍されているアーティストです。なので、「知る人ぞ知る」と言うと少し違うのですが、メディアに出る事は本当に少なく、地上波に出演したのは1度しか私は知りません。

バンド名の由来は「日常に降りかかる悲しみや苦しみを雨に例え、僕らは雨曝しだが“それでも”というところを歌いたい」からだそうです。歌詞の中に、精神疾患やその症状のような描写が随所に現れます。でもそれは単なる羅列や無理矢理入れているのではなく、歌詞と映像が織り成す圧倒的な世界観と、どこか懐かしさを感じる曲調が、私には心揺さぶる程に堪らず、なかなか行けませんがライブにも2度行きました。

ボーカル・ギターの秋田ひろむ氏は、歌詞に使われる言葉を非常に大切にしていて、よく「聴くと感動する」という曲がありますが、amazarashiの曲は「自身で声にすると感動する」曲だと個人的に思っていますし、実際に感動しています。

好きな曲はたくさんあり過ぎて、1曲に絞るのは悩ましいのですが、新しめの曲で好きなものを紹介します。YouTubeなどにたくさんアップされているので、ぜひ1度お聴きください。

amazarashi 「たられば」

森博嗣「四季シリーズ」

ドラマにもなった「すべてがFになる」をはじめとする、「理系ミステリ」小説家の第一人者と言っても過言ではないと思います。どのシリーズも大好きで、全て購入して読んだのですが、その中でもこの四季シリーズが異彩を放っててお気に入りです。

このシリーズは、前述の「すべてがFになる」から始まるS&Mシリーズの登場人物「真賀田四季」のスピンオフ作品です。ネタバレは好ましくないのでストーリィ(森博嗣風)は書きませんが、元々緻密な描写が特徴的な作風なのですが、今シリーズはその緻密さに加えて、緻密なのに不明瞭、または緻密ゆえに不明瞭という不思議な感覚に誘われます。しかしながら、真賀田四季という人物の思考や信念(という言葉が適しているかは分かりませんが)は明瞭に示されていて、読み進めるうちに様々な感情が入り乱れます。

このシリーズはS&MやVシリーズを読んでからの方が入りやすいとは思いますが、単独でも読めると思います。でも多分、他のシリーズを読みたくなると思います。ぜひ1度触れてみてください。

古谷実「ヒミズ」

こちらも「行け!稲中卓球部」でご存知の方が多いと思います。そのせいか、ギャグ漫画家というイメージが強く、現に「ヒミズ」までの3作品は、コンセプトは違えどガッツリギャグ漫画でした。

ところがこの作品は全くその要素は含まれず、ずっと心の闇と向かい合い、対話し、争い、先へ進む、という非常に暗い内容です。正直な話、初めて読んだ後は後味悪く、しばらくの間凹んでしまいました。

それでもこの作品が好きなのは、そのストーリーが底無しに暗く、でも誰の日常にもすぐ隣に潜んでいる心の闇を描写していて、「人間らしく生きる」ことの難しさが描かれているからです。なので、映画化されて評判も良かったみたいですが、世界観を壊したくないので観ていません(でもちょっとは観たい)。

多分、主人公が精神科を受診したら、まず間違いなく医療保護入院になるレベルです。状況によっては措置入院です。そうならなかったのは、主人公の思考に加えて、生きていた時代と生活環境の歯車が上手く噛み合ってしまったからではないかと、勝手ながら推測しています。

もう一度言いますが、読んだ後は凹みます。でもオススメできる作品です。心のゆとりがある時にぜひ。

いかがだったでしょうか。今回は「たまには良いかな」くらいの軽いノリだったので、精神科にあまり関わりが無く、本当に個人的な嗜好を全面に押し出したので、期待外れだったらごめんなさい。

これが精神科や精神疾患へのとっかかりになれば、少しは役に立つかな…いや、それは無いかな…なんて葛藤も持ちつつ、皆さんが気軽に音楽や文芸作品に接する日常が少しでも早く訪れるよう、コロナの終息を願いながら、今回はこの辺りで失礼します。

ありがとうございますm(_ _)m精神科の風評向上のために使わせていただきます。