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スイーツと芸術と〜カフェマメヒコ〜

久しぶりに美術館に行った。

私が好きなもの。
それは狭義に言えばアニメとスイーツだろう。
享受している数が莫大で明確で分かりやすい。
けれど、そういう言い方は少し、自分の中では納得いかない部分もある。
本当はもっと色々な好きなことを持っているから。
そしてそれらは、根底の部分で繋がっている。

私が好きなものは、広義に言って「誰かの紡ぎ出した物語」。
どうしても手軽にいつでも見ることができるアニメが多くなるけれど、実写映画だって好きだし、その人にしか紡げない言葉で編み込まれた小説が何よりも好きだ。
詳しくはないけれど、絵が好きだ。音楽や骨董品や、芸術のアレコレも。
大学生の頃には西洋美術のゼミに入っていて、休日には美術館や博物館を巡ったりもした。そこには誰かの人生が、物語が詰まっていた。

そういうことから、歴史も好きだったなあ。
高校受験も大学のセンター試験も、自慢だけど日本史世界史ともにほぼ満点だ。一問くらい間違っていた気もするから「満点」と断言できないところが惜しい。

ファッションも建築もスポーツも旅行も政治も、ある意味では物語なのだろう。けれど、全部全部に好奇心を、情熱を注ぎ込むことは到底できないからね。私を特に惹きつけた物語が、スイーツでありカフェ巡りだった。
それは、絵画を鑑賞することに一番近いのかもしれない。
作り手の意図と受け手の感じ方の相互により完成する物語だ。

久しぶりに、美術館に行った。

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鑑賞中にお腹が空いて集中できなくなると悲しいので、入る前にひとつ、カフェに入っておこうと決めていた。

さて、早めの時間から空いているお店、どこに行こうかな。

カフェ マメヒコ
マメヒコは、三軒茶屋では何度か訪れたことがあり、味や雰囲気の良さには確信があったお店。

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振り返ってみると、初めて行った時には読書を楽しんでいたことがよく分かる。最近はスイーツを中心に撮ることが増えて、こういう写真は無くなってしまった。けれどその時に何を読んでいたのかを一緒にしておく方が、記憶がより強固になるかもね。

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大粒過ぎる黒豆の美味しさに感動して、翌日にも頭から離れなかった。
あの感動は今でも思い出せる。

とはいえ渋谷店は初めて。
ドキドキしながら、ビルの2Fへ足を進める。

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ふんだんに飾り付けられたツリーが可愛らしい。
長テーブルの中で自由に席を選べたのだけれど、思わずツリーの側にして。過ごしている間中、楽しい気分を味わえた。

ドリンクには、スパイスミルクチャイ。
何度か注文したことのあるメニューではあるのだけれど、他の味も知りたいという欲求を払いのけてしまう程、好きなのだ。

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う〜ん、砂糖の傍にいるピエロ君…かな?
ちょっと気になる。
とても良い一枚が撮れた。

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クリスマスツリーが近くにあるところもまた良き。

身体がポッと、そしてジンワリと温かくなる感じのスパイスがたっぷりに感じつつ。しかしそれは、グワッと強すぎる刺激じゃない。たっぷりのミルクがスパイスの飛び出したところを柔らかく覆い包み込む感じ。そうして、スパイスの良い部分ばかりが、チャイミルクの海から透けて見える。

ボウルを両手で持って丁寧に。
手からも喉からも、全身に熱が伝導する。
冷え性の私には、この凍りついた身体が溶けていく感覚が心地良さを超えて救いにすら感じられる。


甘く煮詰めた豆は基本的に全員に配っているそうで、注文時に「付けても良いですか?」と聞かれる。是非に是非に!!。

最初、チャイに加えるスパイスシロップか何かだと思ったのだけど、そうかコレが店員さんの言ってたやつか。まずはスプーンですくってみて良かった。小豆が出てきた。
甘く煮詰めた、って砂糖でってこと?
それが本来の甘みであるかのように自然と、噛み締めると豆から染み出す甘さだ。
柔らかく、しっかりと粒感もある。
おしるこに使われていて欲しいくらい程よい。
嬉しすぎるサービスだ。

林檎のカラメルソテー

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クレープとか、他のスイーツ類よりもシンプルかなと思って選んだ。
シンプルだけど手が込んでいて、シンプルだけどとんでもなく深みのある美味しさだ。

注文した後に作り始めるそうで、提供には少し時間がかかる。注文したドリンクは、先にある程度飲んでしまった方が良さそうだ。

しかし時間がかかっても、このクオリティーのものが出てくるというのならば、ぜひとも時間をかけてくれ。

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非常に熱々状態での提供。
たっぷりのカラメルの水溜まりにすっかり味の滲んだ色をしている林檎が浸っている。

これは…甘すぎなのでは?
林檎、ベチャベチャなのでは???

そんな心配は全くもって無用の不要。

カラメルは、確かに甘い。めっちゃ甘い。
けれどコクの深さの方が格段に際立って、全然重たくないのだ。積極的にたっぷり絡めたい。
サラリとしているのにトロリとしていて、非常によく絡んでくれる。

最終的に、全部の林檎に惜しみなく絡めて、多くもなく少なくもなく、ピッタリちょうど良い量。

この量に決めるのに、どれだけ軽量を重ねたんだ。一発で直感で決めたのだとしたら、天才過ぎる。

苦い…というわけではない。
いや、このビターな深みは一種の苦味でもあるのか。いや、でも分類するならば、やはり「甘さ」かな。それでも、「甘すぎてもう十分…いっぱいいっぱい」とはならないのが、凄い。

どこまでも美味しく、どこまでだってたっぷり積極的に浸しながら食べたい。

林檎の食感もまた、とんでもない。
シャキシャキ感を残しつつも、その極限まで柔らかい。キュ…プシュ…ジュワッじゅわわわぁぁ!!!と音が聞こえてきそうな程にキレのあるハッキリとした食感と味わいの広がりと。

もう、もう非常に最高にとんでもなく美味し過ぎる。

なんてこったい、スパイスミルクチャイは1,300円とまあまあお高いのだけれど、この林檎600円は逆に破格過ぎやしないだろうか。

そして。

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み、見られている・・・。


その後の美術鑑賞も存分に楽しんだ。
美術的な技法やら良し悪し、あれこれは全く微塵も詳しくはないけれど、それは楽しい。

これは大学のゼミで学んだことなのだが、「その絵にはどんなものが描かれている?」「その人達はどんなことを話している?」「どんな香りがする?」「どんな音がする?」そんな問いかけを、自分に対して永遠と繰り返していく。

正解でなくていい。
というか正解なんて無い。
妄想でいいんだ。自分だけの答えを持っていればいい。

そうして少し、自分が豊かになる。
その豊かさが、いつか素敵なスイーツに出会った時の自分だけの読解力に繋がっていくんじゃないかなあと思っている。

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