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伝統と新しさのモンブラン〜帝国ホテル〜

何度も気になって、何度も食べなかったスイーツがある。

SNSで見つけて「おっ」と思い、スクロールの手を止める。
そして「後で確認しとこ」と少しだけ意識して、結局食べないスイーツなら数えきれない程ある。

その中で実際に行こうかなと思って、いつ行くかを具体的に決めたり、お店に向かってみたり、そういう行動を起こすものとなるとかなり限られる。

それでも、食べるうちの全てではない。
そのお店がある駅にまでは行ったものの、急にその気分ではなくなってしまったり。途中で心が突き動かされる看板を見つけてしまったり。お店の前の長蛇の列に臆したり。

そして一度頓挫してしまったスイーツは、その後も何度か頭をちらついたりするものの、やっぱり行かない結末になることが往々にしてある。

きっと縁の無い「気になる」には必然的な妨害が入るのだ。

しかし中には、「行かなくていいかな」と自分を納得させたのに縁が繋がるものもある。


帝国ホテルのモンブランが、それだ。
モンブラン2種の食べ比べプレート「モンブラン ネオ・クラシック」。
最初に見たのはネットのニュース記事だったか公式サイトか、あるいは店頭の看板だったかもしれない。
その全てで、見た。
行きたいなと思った。
しかし、行かない。

行かなくてもいい、今回は我慢しよう。
そう決めたのは、次の帝国ホテル限定スイーツの情報が解禁されたから。
ベルギーフェア。
大好きな大好きな、チョコに溢れたケーキたち。
どちらかと問われたら、次の方が食べたい。

どの限定も逃さず食べたいお店がある。
しかしそれができるお店は限られているし。なにより帝国ホテルみたいなザ・高級!なホテル様ばかりをそんなお店に認定していたら、お財布的によろしくない。

だから、今回のモンブランは、見送ろうと。
そう決めた。


そして楽しみにしていたベルギーフェアが始まった。
はずだった。

わざわざ半休を取得した日に行ったのに。
な...無い!!!

う...うん???
アフタヌーンティーとのセット、限定???
でも単品価格も書いてあるんだよね。
予約のみ、とか?
14時から限定?
…過ぎてる。
いや、もしかしたら12月からなのかな。
私の見ていたサイトが間違っていたのか、あるいは私の認識が、目がおかしいのかもしれない。

店員さんに聞こうかなと思ったものの、ちょっとシャイなもんで…えへえへ。それにしても例のモンブラン…終わったものだと思っていたら、まだあるんだよなあ。

他のお店に行く?
もう結構な時間だし。これはもう、折角だし、この気になっていたモンブランを食べろということでは?そうだよね、気まぐれなスイーツの神様。仰せのままに。

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見た目から全然違う。
しかし紛れもなくモンブラン。

この食べ比べは、単なる2種のモンブラン比較という意味に留まらない。
伝統と新しさの対比。

左側が、帝国ホテルの絶対的定番で王道で伝統的なもの、多分。そもそもこちらも食べたことがなかったので、レシピが変わっていないかどころか季節限定なのか年中ある商品なのかすら分からない。伝統も私にとっては新しい。右側が今回新たに、この一皿の為に作ったものだ。

伝統の和栗モンブラン

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ぎっちりみっちり、どこまでも栗、栗、栗。
中に詰まった栗のペーストは、本当にもう、栗きんとん。芋のようにギュッと固く詰まっている。
クリームはもう少し柔らかく、しかしビシッと栗で。太めの紐な絞りの形がよく分かる。

最近は、ほっっっそい糸を目の前で絞って賞味期限は30秒、フワッと消えるくちどけ!みたいなのが流行りなのだろうけれど。
昔から愛されてきた、今でも変わらずに愛され続けているモンブランといえばこういうものだ。

フワフワのスポンジや王道な白いクリームのシンプルな甘さが混ざり合い、だからこそ、栗の味はココにあり!!がしっかりと感じられる。

周りを囲むナッツたちの塩気がまた、良い。
香ばしく、甘く、ちょっとしょっぱい。
ああ、なんだっけコレ。おばあちゃんの家で食べたピーナッツを含んだ揚げ菓子とか、こんな感じ。モンブランに使われるにはなんだか珍しい気もするけれど、たまらなく懐かしく、シンプルに美味しい。

トップの大きな栗は、右側には無い伝統の大きな特徴。
嬉しい。贅沢に頬張る。
栗、超栗だ…。

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新作モンブラン

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トップの栗?と思ったものは花びらのような薄皮。
じゃあ実物の栗は?至る所に潜む。小さく砕かれて。あるいは違う形で。

ほら。周りを囲むのは、ナッツと白いメレンゲと半月のような薄いチョコレートと、それから栗だ。

頭と体に分かれたような2パーツ構造。
上はなんだかシュークリームみたいだけれど、実はこれもサラサラホロっとした栗パウダーを纏う栗クリーム。
その中には、カシスムースを潜ませる。
カシスの甘酸っぱさが強く、主役ほどの勢いで、目立つ。
栗は、まるでカシスという宝石を入れた器、宝箱のようなポジション。それがあるからこそ、宝石はいっそう美しく輝く。

下は、なんだろ。なんだか栗のロールケーキみたいだ。
グルっと囲むのは、スポンジ系の生地では無いのだけれど、クリーム、とも違うような。そのどちらをも合わせたような。少し固めの不思議な食感。
生クリームがたっぷり詰まり、栗ペーストとゆったり溶け合っていく。
あれ、中央から何か...トロリと。栗のソースが流れてきた!!!

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伝統は、「栗は美味しい!モンブランは美味しいぞ!!」を純粋に訴えてくる。
一方で新作は、「創意工夫でスイーツはこんなにワクワクするものなんだ」という意図を感じた。

決してどちらが優れている、という比較はできない。
全然違って、どちらも良い。

それってきっと、スイーツに限ったことじゃない。
違って良い。違うから、良い。
それらが貶め合うような対比ではなく、尊重して高め合うような関係であれと、そう願う。






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