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温かなパフェは人生観を変える、かもしれない〜ロビーラウンジ〜

スイーツが好きだ。
カフェ巡りが好きだ。

その中でもパフェは特に特に、大好きだ。
だって、スイーツの色々が詰まっているから。

単に種類というだけでなくて、一緒に口に入れた時の爆発的な美味しさの広がり、1つであれば決して生み出すことのできない食感や舌触りの複雑さ、そして作り手の意図やら想いやら情熱やら…色々が詰まっている。
食べ手としても、他のどんなスイーツよりも自由が高い場合が多く、楽しい。
スプーンを進める順番や量、何をどう組み合わせて、そこから何を読み取るのか。パフェは様々な可能性を秘めている。

お店の人もそういうことに気付いてなのか、流行っている空気を感じてなのか、パフェに力を入れるお店は確実に増えてきた。
それに伴って「別に特別な日でなくとも、子供じゃなくても、女性じゃなくてもパフェって食べていいのかな」という風潮は広がっている。

私も、この数年ですっかりパフェに魅了されてしまった1人で。
パフェは「時々の贅沢」よりも「カフェ巡りの中で優先すべき選択肢のひとつ」という存在となった。

だから今まで、結構色々なパフェを食べてきたと思うんだ。
ちょっと偉そうに「パフェっていうものはね~~~」と何時間でも話したくなっちゃうくらいに、パフェを理解していると思っていたんだ。


世界がひっくり返った。
そんなパフェに、私は出会ったことが無かった。

私の常識で、パフェは冷たいデザートだった。
まさか、温かなグラスで提供される、温かさを楽しめるスイーツがあるなんて、想像もしなかったんだ。

東京ステーションホテル
ロビーラウンジ

温度差を味わう 「アン・パフェ・ショウ」

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「栗を楽しむ」「秋を楽しむ」とかでなく、「温度差を楽しむ」という掲げられたコンセプトが異常だ。
確かに、パフェは温度差を楽しめるスイーツではある。
冷たいアイスやソルベはパフェの中でも重要なパーツだ。

温かさを楽しむスイーツもある。
アフォガートなんていうアイスに熱々のエスプレッソをかけるスイーツもあるし。
温めたアップルパイや焼きたてホヤホヤのクレープ、パンケーキにひんやりアイスなんかは王道中の王道だ。

しかしそれをパフェに活かそうなんて発想を抱いたことは無かった。

これこそがブレイクスルー。
既存と既存の掛け合わせによる新しさの構築というものだ。

あ...ああ、グラスに手を添えると、本当にじんわりと温かだ。

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グラスの口よりも大きく広がる大胆なチュイルが良い。
私の大好きなカカオニブも沢山見える。
その上に、ヒンヤリ部分であるアイスが温かさから逃げている。

「冷×温」なスイーツは提供時に既にアイス溶けてるじゃん~ということもあるので、これは賢い。

スプーンでつついて割り沈めていく。
なんとも言葉にし難い快感に心が跳ねる。

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チュイルにもカカオニブが焼き込まれているのに、下にも散りばめられているから、こうして割るといつの間にか想像よりも多いニブに攻め込まれる。
嬉しい誤算だ。

「チュイルを割ったら、後は混ぜながらお召し上がり下さい」というような説明。そうか、これは上から丁寧に層構成を尊重して食べるパフェではなく、もっと全体を1つとして捉える自由度の高いパフェなのか。

どうしよう...迷いながら、割るのに使ったフォークを少し下の方まで突き刺して引き上げる。

ふおぉぉ…温かで柔らかく煮詰められたバナナが、そして洋梨が甘く芳ばしいキャラメルの香りに包まれて。口の中に幸せを運んでくる。

フルーツのキャラメリゼって美味しい。
洋梨は珍しいなと思うけれど、特にバナナの熱々キャラメリゼが美味しいのは私の記憶が知っていた。家庭で気軽に作れる定番簡単スイーツだからね。

それをまさか、大好きなパフェの中で食べられるなんて。

推しの地下アイドルが突然武道館ライブに登場したとか、こんな気持ちなの?

温かさの中に、上に避難していたバニラアイスが溶け始める。
アイスは元々固めに作られている、というあたりもまた優秀でドキドキしてしまう。程よいスピードで絡み合っていく。

おや、そういえばそのままフォークを使っていたけれど。
ちょっと面白い感じのスプーンも付いている。
いかにも「これで食べろ」と言わんばかり。

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スプーンを変えてみると…おおぉ。
フォークよりもこの、すくいとる部分の小さなパフェスプーンの方が、温度差がより際立って分かる。温かな部分は温かく、ひんやりだった部分はひんやりと。その境界が、フォークよりも鮮明に感じられる。カトラリーによってこんなにも違うものなのか。

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そして、こんなにも「温度差」を強調しているからこそ寧ろ印象強い。食感の差。

パリパリのチュイル、カリカリのカカオニブ、フンワリ柔らかなエスプーマやボロリさくさくのクランブル、しっとりズッシリふわりなスポンジ、グニッと柔らかなバナナや洋梨。大小も様々、舌触りも奏でる音も各々が個性的で、オーケストラの大合奏だ。1つでなら決して実現し得ない、ハーモニーの素晴らしさ。

「温かい」ということは確かに革命的だけれど、このパフェの魅力はそれだけに留まらない。

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単なる目新しさだけで人はこんなに泣きたくなる程には感動しない。圧倒的な美味しさと工夫となんか色々があって、その上で更に、人生観を変えるような感動がある。

宇宙で発見された食材を使用した宇宙パフェ、とかは理解に及ばないかもしれない。
「ありゃ!そういえば、なんでその発想に至らなかったんだろ〜!!」という程度の感動が良いのだ。
「程度」なんて言うと偉そうだけれど、それはコロンブスの卵で。その発想には至りそうで、決して何も考えずにボヘラ〜と生きていたら至ることは無いアイディアだ。
だから、凄い。
だから感動するのだ。

凄い、とんでもなく物凄いパフェに出会ってしまった。

私はパフェが好きだ。
私の知らない、気がつけない、発想することのできない、そんな未知の可能性に溢れているから。

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