イロトリドリ。虹色。~サザコーヒー~
雨は嫌い?
シトシトと続く単調な音が好きだ。
寂しげに光りながら窓を流れ落ちる水滴が好きだ。
どこか心を不安にかき乱す暗雲も、たまになら嫌いじゃない。
でもやっぱり、雨の日に外に出るのは億劫だ。
そして。
雨上がり。
空にはとても美しい橋がかかる。
どうして、あんなにも心惹かれるのか。
それは単純に、ただひたすらに美しい。
誰かの気持ちを繋いでいるのだろうか、なんて想いを馳せるうちに、あっという間に消えてしまう。
決して手の届かない儚さが、また美しさを誇張する。
虹が、好きだ。
虹は多くの人から愛されている。
愛されているものには、価値がある。
価値あるものは、商品化するのが世の常である。
インスタ映えが叫ばれる昨今、美しいレインボースイーツは当然のように愛された。
しかし、実は私はレインボースイーツにそれほど魅力を感じていなかった。
所詮は、「見た目>>>>>味」ではないか、と疑ってしまう。
大切なのは、味だ。
茶色。最高だ。
茶色いものは美味しい。
見た目だって、沼にハマると「茶色!可愛い~!!」なんて言い出す様になるからノープロブレム。
実際、こうなると全部茶色でも芸術的。
先日、丸の内KITTEのサザコーヒーに伺った。
サザコーヒーは品川駅とかで以前飲んでいて、とても美味しい記憶があった。
とりあえず「本日のコーヒー」だけ注文したのだが、控えめに言って最高だった。
カップは可愛いし、珈琲はやっぱり美味しい。
接客は丁寧。
心地の良い静かな音楽。
カウンター席でありながら、手を伸ばしても壁に届かないほどの広々とした机。
読書など、おひとり様の時間を過ごすのに極上の空間だった。
ファンになった。
ここのスイーツは美味しいだろう、という確信がもてた。
そんな矢先...
出してしまったよ、レインボーミルクレープ。
え?
こんなに拘りの強いお店が?
でも「天然色素」とか書いてあるし…きっと、これもこだわっているんだろうな。
......めっちゃ食べてみたいな。
はい、行きました。
******
サザコーヒー
「天然色素 レインボーミルクレープ」
は?最高である。
ギンギンに濃い虹ではなく、淡い色合い。
でもだからこそ安心感があるし、お店の雰囲気にも合っている。
そして淡いとはいっても、確実に紛れもないレインボー。
頑張ったのだけれど、お店の少し薄暗い雰囲気だと、これくらいが精一杯。
実物を見るともう少し、しっかりと虹虹している。
ミルクレープ。
少し、食べ方を迷うスイーツだ。
1枚ずつ剥がして食べたい...そんな欲求は無いだろうか。
ただ、ふと上を見上げると、
見張られている...!
お、お上品に食べよう。
1枚1枚薄いのに、でも意外と厚くてモッチリとしている。
クリームは甘さ控えめでバランスの良い量。
ほんのりな甘さのクリームと芳ばしい生地...珈琲との相性が最高過ぎて戸惑う。最高だ、多幸感がもの凄い。
ところで、コーヒーは「徳川将軍珈琲」を選んだ。
店頭に看板があり、ずっと気になっていたのだ。
徳川将軍って…
飲みながら、その所以を調べてみる。
徳川幕府最後の将軍・徳川慶喜の曾孫さんが作ったコーヒー・・・
あ、これマジなやつだ。
徳川将軍に献上したことのある、とかじゃなくて、世が世なら将軍様、というお方が作ったコーヒーだ。
”フランス風深煎り珈琲”という説明にも惹かれる。
わりと苦め、しかし苦くない。
とても不思議だ。
どこかワインのような甘みすら感じる、綺麗な味わいだ。
サザコーヒーは何故今、レインボーのミルクレープを出したのだろうか。
今の時期なら、チョコレートか、あるいは春を感じさせるようなスイーツを出すお店が多い。
商品企画の人が、偶然虹を見て思い付いたのかもしれないし。
たまたま良さげな原材料が手に入ったからかもしれない。
真実は分からないけれど。
鬱々としたニュースの続く今、きっとこの虹スイーツを見て、食べて、心にほんのりと鮮やかな色を描ける人が沢山いるのだろう。
世界は、灰色じゃないよ。
美しいものが沢山ある。
美味しいものが沢山ある。
世界は色とりどりで、とっても綺麗だなあ
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?