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知りたい

今年初めて、休日外に出なかった。
振り返ると最近は少し意地になってカフェ巡りにこだわり過ぎていたかもしれない。休日には何があっても2〜3店は行った。スマホが自動的に記録する歩数計によると1万5千歩は休みの度に歩いていた。
カフェ「巡り」というように、駅そばにあるお店だけササッと入っておしまい、というわけではないのだ。カフェ自体が遠いこともあるし、行ったからにはその立地の「今」を知りたいから、見て歩く。

平日は、一応社会人なので8〜10時間くらいは会社にいる。朝からなんとなく緊張するから7時からオープンのカフェに行って、帰りは時にはカフェに寄ってくることもあるし、百貨店やスーパー、コンビニに寄って世の中の食の「今」を知ることも大切にしている。お惣菜を買って帰ることも多いが、食材を買って作って食べると、急いだって21時くらいからの夕食。職場と家の距離は他の誰よりも近い贅沢な身分なはずなのに、この体たらく…社会人はどうやって人間らしく生きてんの……。

こんなん、好きなことはかなり十分にできているとはいえ、疲れちゃうよ。羽を伸ばすとか、休むとか、どういうことなんだろう。


ここ数年、母が動悸に悩むようになった。
気持ちの弱い人だから心の問題だろうと思っていたが、心臓の手術までしたのだから実際に悪いのだろう。けれどやっぱり、「動悸になったから」がすべての免罪符とするような言動にモヤッとすることも多かった。

今日1日、確かに目が覚める瞬間は何度かあるのだが、意識が浮上するたびに異常なくらい心臓がバクバク高鳴っていた。なるほど…母の言う「動機になったらちゃんと分かる」ということが分かったよ。確かに分かる。

心臓はドクンドクンと音が聞こえるくらいに波打っていて、心臓以外の部分に変な汗が出ていて気持ち悪いし、呼吸をしようとすると荒くなる。どうにもいけない。やりたいこと、やらなきゃいけないことが脳裏をかすめつつ、身体が意識を飛ばして逃げることを優先した。

あぁ、一人だからこのまま死んでも一人だし、一方で一人だから、しんどい時にいつでも自由に寝られるんだなあ。なんて思うと、一人と誰かが傍にいること、どちらが幸せなんだろうなと考える。
同年代の友達はアプリなども活用しながらパートナー探しに必死だったりもするけれど…一人、めっちゃ楽なんだよなあ……。

何はともあれ、動悸が本当に動悸なのを身をもって知ったから…お母さんが次に「動悸」という言葉を振りかざした時に、もう少し優しくなれるかな。

自分で体験することは大事だ。


というわけで。
というのも少し強引な繋げ方だけれど…
私は色々な味わいを知ることが出来る食べ比べというものが、とても好きだ。
美味しいものを、飽きるほど食べる必要なんてない。確かに美味しいに溺れそうな感覚も時には気持ち良いけれど、やっぱり最初の一口の衝撃、それと二口目、三口目くらいに感覚をどんどん研ぎ澄ませていって、一口目には気がつけなかったあれこれを発見していく。そういうのが楽しいし、食べ比べることによってその発見は一層独自性を増し、輝く。

これは本当に人それぞれで、私の身近にいる人では結構「いつも同じ味じゃなきゃ嫌。それは食べたことの無い味だから食べられない」という人も多い。本当に、人それぞれ。

私は、ひとつでも大きな味わいと出会ってみたい。

だから、日本橋三越で時折開催されるイベントの、この食べ比べ趣向はとても良い。

全国銘菓店4種のあんこ食べ比べ

以前にも体験したことがあった。

最中の皮を器に、餡のプロフェッショナルな4店食べ比べ。これって凄く、面白い。

私が偏ってるだけかもしれないが、チョコなんかは比較的色々なお店のものを味わうもの。餡についてはどうだろう。いつもココのを買う、というのが結構決まっている人が多い気がする。

さて今年。
セットはA〜Dの4種から選べるのだが、王道…餡の帝王とらやの入るCは最初に完売していた。

私が選んだのはA。
こういうの、こだわりで選べるようになりたいなあ。分からないから、とりあえずのA。

今年は器となる最中の皮が少し違う。
ということは、後で触れるとして、それぞれの味について少しだけ。

<清月堂本店>
こしあん
フワッと軽く、滑らかな口どけ。それに優しい小豆の甘すぎない甘さは、こしあんに求める理想。
子供から大人まで広く愛されそうな安全安心を信頼できる味わい。

<なごみの米屋>
こしあん
こちらはインパクトあるズシッとした味わい。
解説に記載されていた鬼ザラ糖によるものかな、甘さが真っ直ぐに伝わってきて、でも全体的にどこか塩味もあって、重たくは感じない。
クセになる味なので、「この味を食べたい!」というファンも多そうだ。

<乃し梅本舗 佐藤屋>
つぶあん

小豆の味わいを、スッキリ爽やかにまとめた感じ。スッとスマートに入ってきて、とても心地良い。
柔らかくしっかりと感じられる小豆の粒には"ふくよか"という言葉が本当にピッタリ。

<わかさいも本舗>
つぶあん

粒も餡の部分も全体にズシリと力強く、とても風味豊か。表層から感じられる分かりやすい甘みの奥には深いコクも感じられて、ひと口ひと口が非常に印象的。余韻まで、じっくりと堪能できる。


言葉にすると難しいけれど、こうやって食べ比べると確かにお店によって餡の味わい、食感、風味の広がり方…その全てが全然違うことがよく分かる。

書いている立場としては本当に敗北宣言のようなもので恥ずかしい限りだが、こういうのは自分で食べてみて初めて分かるものだ。

だから私自身、食べ比べのように色々な味わいを自分で体感できる機会を凄く大事にしている。


ところで先に最中の皮について今年は違うと書いたが、なんと猫の日に合わせての猫!!

今年は2022年2月22日というとんでもない日があったからね。猫の日は例年にも増して盛り上がった。

可愛い。

裏もちゃんと。
可愛い。


餡だけだと味が分からなくなりそうだし喉が乾くので合わせて注文したのは、キーコーヒーの珈琲。

油断したね〜。
ついでのポジションで注文したわけだが、これがなんとも美味しい。果実のような甘みと酸味が、ちょっとユニークに出ていて、餡の甘さを引き立てるような不思議なコクがあって。ペアリングとして、美味しい。味の個性が、餡の個性に埋もれない。
さすがは、「キーコーヒー」と名前を出しての出店だけある。

ところでこのキャップ…。

キャップにもスプーンにもなっているという、とても優秀なデザインだ。
こういうよく考えられたようなものに出会うとドキリとする。ワクワクする。


無知であることは罪とされる。
それはその通りだと思う。

だから知りたいと思うのだけれど、腹落ちのしていない知識のみによる体裁合わせの嘘は、自分にも相手にも失礼だ。

体感して、心の底から生まれた共感。
それが多分本当に「知る」ということ…なんだろうな。
もっと色々なことを知っていきたい、
もどかしい、なあ…




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