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嘘に救われて生きてきた私は悪ですか?

自分でも思いもよらぬ一言で、意外なほどに傷ついたりするものだ。
分かっていたつもりだったのに、今更になって実感して驚いた。


数日前に親を怒らせてしまって、時々嫌味なメールが送られてくる以外、こちらからの連絡は無視され続けている。電源オフにするのはやめて欲しい。
要因は私の嘘がばれてしまったことにある。

3月中に一緒に行くアフタヌーンティーを予約した。
予約の仕方によって同じプランでも値段が何パターンかあって、確認が遅くなってしまったこともあって一番高いパターンでしか予約できなかった。
そのことに、彼女は気付いていない。
いつもより2人で数千円高くなることを知れば、やめると言い出すだろうか。それならば、事前に私が支払っておいて「安い方の値段だったよ」と言えば済むのでは…。

それが、ばれた。
いや……くだらな……

私が嘘や隠し事をする人間だとは思わなかった。
そんなあなたは嫌いだ、二度と嘘はつかないで。

そう言って滅茶苦茶おこられた。

私の行動や発言も確かに彼女を傷つけてしまったのだろう、それは反省している。
ただね、私もその言葉に傷ついたんだよ。


嘘って、そんなに悪いものだろうか。

私は世の中の9割が嘘で成り立っていると思っている。だからこそ1割の本当が凄く尊い。それに嘘だって3割くらいは綺麗な嘘や必要な嘘じゃないか。


(私なんかが声をかけたら変に思われるかな…)
そんなことないよ、コミュニケ大事!
(どうせできないよ)
やってみないと分からんじゃん、きっとできるって!
(いっそ死んでしまいたい…)
え、人生楽しいでしょ!これからも楽しいこと沢山あるよ!!超生きる価値あるじゃん~~♪

嘘に救われてきた。
沢山の嘘を身にまとって自分のものにして、ようやく今の自分がある。

嘘を否定されて、私という人間全てを否定された気がした。
嘘で塗り固められた自分が、酷く汚い気がして立ちすくんでしまった。

親には、「もう嘘はつかないよ」とメッセージを送った。
嘘だ。
嘘の無い生き方を私は知らない。というかそんな生き方をできる人間が存在するのか。



凄く、真摯なチョコレートを食べた。

ル フルーヴ

箱からシンプル。
チョコレートの食べ方についての解説書に物凄い愛を感じる。
こういうの、超好きだ。

チョコレートも相当シンプル。
可愛いスイーツが多い中で、こういうのを買う人はわりとチョコのガチ勢だと思う。だからこそ、こんなに素晴らしいチョコレートに出会えてしまう。


シークワーサー

こんなにも果汁に満ち溢れたチョコは、なかなか食べられないだろう。
すっごい。語彙力を失う、食べている間中、「酸味」というワードと「凄い」という賞賛しか頭に無かった。

苦味が流れて。甘さがギューっと凝縮されていて。瑞々しさと濃さとが尋常じゃない。ダークで凛々しい、洗練されている。

口の中での印象が、凄く強い。
苦みと酸味と、そのバランスから生み出される深いコク。凝縮された瑞々しさ。

きっといつか、またこの味を思い出す。


シトロンベルガモット

突き刺さる酸味よ…これも凄い。
ガナッシュの滑らか過ぎるとろけは、サラりと軽やかで。
同時にゆったりの時間軸もあって不思議だ。

その揺らめく時間は一層、味わいのズバッとくる刺激を強めてくれる。
爽やか、フレッシュ。前向きなイメージ。
浮ついた陽キャ感を見せつつも真剣に恋をするような、うっとりする感覚に溺れそうになる。


日本茶のプラリネ

"ICA2022アジアパフィックエリアで最高金賞"という記載…いや、これは獲るよなあという、素晴らしいチョコ。凄いしか語彙が出ない。

薄さからは想像できないようなトロットロのガナッシュにはプラリネのシャクシャク感もあって。あまりの柔らかとろけ具合に、ゆったりの味わいを慌てて食べなければならないのは、少し寂しいような、それがまた良いような。

自然に傍に寄り添うようなお茶の香りが甘くフワリと凪ぐ。


抹茶ガナッシュ

順番通りに食べるのなら、日本茶に抹茶が続く。
不思議だ。

そして味わいも少し大分かなり不思議。
抹茶…?
最近の抹茶味は、味わいとして分かりやすく在るものが多いけれど、それとは違う。食べた瞬間の、「抹茶じゃん(笑)」って感じが無い。

…ただ抹茶独特の甘くて深い苦味の余韻がカカオに溶け込んでいて……それは静かに、語りかけてくるようなくすぐったさが残る。

はあぁ…余韻が余韻の前に楽しめるなんて、なんだか不思議としか言いようがない。


プラリネココソイ

ふわふわシャクシャク…ココナッツの雪景色を踏みしめているみたい。
綺麗で楽しくて夢心地。
ミスドのココナッツが思い出される、大好きな味わいだ。

ココナッツにあるのは懐かしさ。
そしてミルクは、少し不思議な感じ。ソイだからかな。
凄く柔らかでまろやかな味わいは、ひとつ優しくなれる気がする。


ナチュールプラント

ミルクが不思議!!
ヤバいな、この6粒に対して、「凄い」と「不思議」しか言えてないぞ。

きっと食べた人の大半が似たようなものだと思う。でもきっと千差万別の「凄い」と「不思議」があって。少しずつでもその解像度を上げていけたらいいねという話。

で。
華やかなドレスのイメージ。けれど過剰な豪奢さはない。元々あったのを省いて、装飾の花の種類を小さなものに変えて、シンプルだけど可憐な装いに仕立て上げているようだ。

知っている美味しさが、ちゃんとある。けれど同じじゃない。
それぞれのパーツで少しずつズラして、全体観は凄くユニークに。
目指すコンセプト、世界観がじわり…伝わってくる気がする。


何が嘘かなんて、分からないよ。
この素晴らしいチョコに関わるどこかに嘘があるかなんて、私には分からない。

でも少なくとも込められた作り手の真摯な想いは伝わるし、そう伝わったし美味しかったという私の感情は確かに在る正しさだ。

それでいいじゃないかと思う。
嘘で怒らせてしまった彼女に言うことはできないけれど、私は嘘が嫌いじゃないんだ。それに救われて、今自分の感情と向き合えるようになったんだから。

だから、ね、
あなたの嘘が嫌いだから二度とアフタヌーンティーは行けなくなったとか、そんな大袈裟なことは言わないで欲しい。


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