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感情コントロール

『出動だ!出動だ!ぶーんぶーん』

まだらなオレンジ色に染まったウロコ雲の下で、2才と4才の姉弟が駆け回る。

なんでも最近「真似」にはまっている彼ら。

つい先日までのお気に入りは「車掌さん」で、
「次は~〇〇~お降りの方は足元にご注意ください~」と
鼻にかかったような声のアナウンスが家中流れていた。

子どものブーム交代のきっかけとは単純だ。
数日前に2才弟がサンタさんから消防車のおもちゃをもらったことで
姉弟は毎日消火活動に勤しむようになる。
数日前まで自分たちが車掌であったことなど
全く覚えていないであろう
気合いの入った小さな消防士たち。

昨日は久しぶりに日が落ちる少し前に家を出た。

公園に着くと全力で走り出す子どもたち。
遊具を使って家ではできない遊び方を次々に生み出し、
その発想の柔軟さには感心する。

しばらくすると、おなじみの声が聞こえてきた。

『出動だ!出動だ!ぶーんぶーん』

お、始まったようだ。住民を守る憧れスーパースターの登場だ。

先頭は2才弟、その後ろに4才姉が続く。
ある程度走っては止まり、放水ポーズ。
それを何度も繰り返している。

彼らの仕事ぶりは熱心でいつも全力だ。
そんな彼らを微笑ましく見つめながらも、
親としては心配なこともある。

「そんなに全速力で走って・・・・」

あ、ほらやっぱり。

4才が思いっきり転んでしまった。

「うわぁぁぁぁん、うわぁぁぁぁぁん、あああーーーーママぁぁぁーーーーー」

大粒の涙を流し、その場から動けなくなってしまった。

よしよし。

痛かったのね。
急に転んでびっくりしたのね。
怖かったね。

どこか痛いところはある?
見せて?大丈夫。血は出ていないよ。
すぐ痛みもなくなるから。

よし。ぎゅーってしよっか。

「うん」

そして娘は自ら私の腕を抜け
相方の消防士のもとへ全速力で走っていった。

『出動だ!出動だ!』

2人の小さな声が公園内に響き渡る。


親の役割というものは場面に応じて様々だが、
子どもが感情をコントロールできるように
手助けすることも大事だろう。

今回私は、転んで泣いた娘の感情を一旦受け止めた。
娘が抱く気持ちを言語化した。
娘の心の中をさらけ出せる環境を作った。

そうしたら、自分で「楽しい」感情に戻ることができた。

人間というのはマイナス感情を処理するのが難しい生き物で、
その対処次第で人生の豊かさも変わってくる。

私は将来子どもに困難があったとき、
自分で対処できるようになってほしいと思う。
私ができなかった、他人を頼るという方法も含めて。

そのためには幼少期の今から
自分にマイナス感情があると知った方が良い。

そう、その環境づくりが親である私の役目だ。

子どもが自分の感情を表出できる相手でありたい。

ひやりと汗ばむ2つの手と共に帰路につきながら
私はそう心に決めた。










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