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忘れていいUX

突然だが、「Evernote」の価値とは何だろう。
こう聞くと「何もかも記憶すること」と答えが返ってきたりする。

いいえ。Evernoteの最大の価値とは
「そこに書けば何もかも忘れていい」ということだ。

Elephants never forget - 象は忘れない

人間の脳はそこまで多くのことをずっと覚えておけない。Evernoteを生活のデータベースとして使うことで、人間は「覚えておく」というプレッシャーから解放され、いま目の前にある生活にさらに集中することができる。

あの緑の象のアイコンは、「象は全て覚えておける(Elephants never forget)だからあなたは忘れていいよ」というメッセージかもしれない。

 「忘却」をデザインする

サービスデザイナーはついつい、ユーザーに「覚えてもらおう」「思い出してもらおう」と努力しがちだ。
「どの入力をすればどの出力がされるか」「押せるボタンの色」「サービスでの禁止事項」「このサイトの通知を受け取りますか?」...etc。

しかし、人間はそんなに多くのことを覚えておけない。思い出したくもない。
おもむろに開いたこのサービスでの挙動など覚えておく脳の容量があったら、もっと有意義で楽しいことを覚えておくべきだ。

何かユーザーにしてほしいことがあるなら、適切なタイミングで一瞬だけ思い出してもらうUIを実装しなければいけない。

そのタイミングを測るために、システムはユーザーの動きを知り、予測し、補完する努力をしていきたい。

身体、脳、アプリケーションとDB全体で

この記事の趣旨は、ユーザーに何もかも忘れさせろ、ということではない。ただ、ユーザーの問題に対するひとつのソリューションとして、「忘却させる」という可能性があることを提案したい。

MVCモデルという言葉があるが、私はそこに「H(Human)」を加え、MVCHモデルという言葉を作りたい。つまり、MVCで切り離して構成することができるシステムに、人間の特性を組み込みたい。

身体、脳、アプリケーションとDB全体で、ひとつの良い仕組みを作り、人間がそれぞれの生活をより充実させうる手段を模索していければと思っている。

どうかすべての人が、愛しい思い出だけを持ち歩き、過去の瑣末な記憶から自由になり、人生の最後には本当に大事なものだけに囲まれて終わりますように。

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