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読んだ本についてあれこれ語るマガジン

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2022年10月の記事一覧

ルシア・ベルリン「掃除婦のための手引書」

ルシア・ベルリン「掃除婦のための手引書」

なかなかよかった。

自分の人生をもとにしたフィクション、という位置づけなのだと思う。謝辞のページにブコウスキーの著書を出版していた「ブラックスパロウ」や、作家のバリー・ギフォードの名前が載っていた。ブコウスキーやギフォードの名前を聞いてわかる人は、本作の位置づけもざっくりとつかめると思う。

日本の作家だと、中島らもあたりが意外と近いのかなとも思う。あそこまでめちゃくちゃではないんだけど。

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ニーチェ「善悪の彼岸」

ニーチェ「善悪の彼岸」

読んでいると、それぞれの文章は理解できるのだが、全体をまとめようとするとなかなか難しい。

おそらく根底にあるものはあるのだが、小生には読み取れなかった。ではつまらないかというと、逆におもしろかった。結局なんだったのか、ということではなくて、この本を読みながらあれこれ考えるのがよいのだと思う。

最初のほうは、人間の意志についての本なのかと思って読んでいた。人間は自分で意志を決定していると思いたい

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ヴァリス

ヴァリス

膨大な情報が人を狂わせる、という小説。

フィリップ・K・ディックは高校くらいのころから個人的なアイドルだ。全部は読んでいないが、いろいろと読んではいる。そういう自分から見て、本作はディックの円熟というか、今までにない壊れっぷりがとてもよかった。ただ、ディックの小説をいくつか読んでいる人でないと、本作は楽しめないのではないかという気はする。

主人公はホースラヴァー・ファットというヒッピーくずれの

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